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自営業の育休手当はどうなった?2026年開始の国民年金免除を解説

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「自営業やフリーランスには育休手当がもらえない」――その現実は今も変わっていません。しかし、政府の少子化対策として検討されていた新たな給付制度は、実際にはどうなったのでしょうか。

本記事では、2023年に話題となった自営業・非正規労働者向けの育児支援制度のその後と、2026年10月から実際に始まる国民年金保険料の免除制度について、最新情報を整理してお伝えします。自営業やフリーランスが実際に使える支援策を正しく理解することで、出産・育児の計画を立てやすくなります。

■目次

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政府が検討していた「育児給付金」は実現したのか

2023年頃、政府は自営業者や非正規労働者に対する新たな育児給付制度の創設を検討していました。当時の報道では「年間数千億から1兆円規模の予算」「育休を受け取れない非正規労働者や自営業者への給付金」といった内容が報じられていました。

しかし、この新たな育児給付金制度は実現しませんでした。制度設計の難しさ(自営業者の休業判定の困難さ、所得把握の複雑さなど)から、給付金ではなく「国民年金保険料の免除措置」という形で支援策が決定されました。

ここでいう「育休手当」とは、会社員など雇用保険の被保険者が受け取れる育児休業給付金を指すことが多いです。自営業者・フリーランスは原則として雇用保険の対象外のため、同じ仕組みの「給付金」は用意されず、代わりに保険料負担を軽くする制度が採用されました。

2026年10月開始:自営業者向け国民年金保険料の免除制度

実際に導入が決まったのは、国民年金保険料の免除措置です。これは「こども未来戦略」(2023年12月閣議決定)に基づき、2026年(令和8年)10月1日から施行される予定です。

制度の概要

国民年金第1号被保険者(自営業者・フリーランス・無業者など)を対象に、育児期間中の国民年金保険料が全額免除されます。

免除期間:子どもを養育することになった日から子どもが1歳になるまでの期間

  • 実母の場合:産前産後期間の免除(出産予定日前月から4ヶ月間)に続く期間(産後免除終了月の翌月から子が1歳になる月まで)
  • 父親・養父母の場合:子どもの出生月(または養育開始月)から子が1歳になる月まで

対象者:子どもを養育する国民年金第1号被保険者(父母ともに対象、養父母も含む)

※この新制度で免除(全額免除)になるのは国民年金保険料です。国民健康保険料(税)は別制度のため、「年金は免除でも国保は免除されない」ケースが基本になります。

この制度の重要なポイント

所得制限なし、休業要件なしで、実際に仕事を休んでいるかどうかは問われません。これは、自営業者やフリーランスの就業形態が多様であることを踏まえた措置です。

免除期間中も国民年金の加入期間として認められ、将来受け取る基礎年金は満額が保障されます。保険料を納めなくても、年金額が減ることはありません。

夫婦がともに国民年金第1号被保険者の場合、両親ともに保険料免除を受けられます。これは会社員の育児休業期間における社会保険料免除制度とバランスを取った形です。

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会社員向けの新制度(参考情報)

自営業者向けの制度とは別に、2025年4月から雇用保険の被保険者(会社員など)を対象とした新たな給付制度が始まっています。

出生後休業支援給付金(2025年4月開始)

育児休業給付金(67%)に加えて、子の出生直後に夫婦ともに育児休業を取得した場合などに、最大28日間、給付率が13%上乗せされ、合計で80%(手取りで10割相当)になる制度です。ただし、雇用保険の被保険者のみが対象で、自営業者・フリーランスは対象外です。

育児時短就業給付金(2025年4月開始)

2歳未満の子を育てるために時短勤務を選択した場合、賃金の10%が支給される制度です。こちらも雇用保険の被保険者のみが対象です。

※当初2025年10月開始予定でしたが、2025年4月開始に前倒しされました。

自営業者が実際に利用できる育児支援制度

自営業者・フリーランスが現在利用できる公的支援制度をまとめます。

出産育児一時金(50万円)

国民健康保険から支給される出産時の一時金です。2023年4月から42万円から50万円に増額されました。子ども1人につき50万円(産科医療補償制度対象外の場合は48.8万円)が支給されます。

児童手当

0歳から高校生年代まで支給される手当です。2024年10月から拡充され、所得制限が撤廃されました。第3子以降は月3万円に増額されています。

産前産後期間の国民年金保険料免除(現行制度)

出産予定日の前月から4ヶ月間の国民年金保険料が免除されます。現在は実母のみが対象ですが、2026年10月からは父親も含めた育児期間の免除制度に拡充されます。

妊婦のための支援給付(出産・子育て応援交付金)

妊娠届出時と出産後に、合計10万円相当の経済的支援が受けられます。2025年度から法制化され、伴走型相談支援とセットで実施されています。

各自治体の子育て支援策

子どもの医療費助成、保育料の軽減、一時保育サービスなど、自治体ごとにさまざまな支援策があります。お住まいの自治体の窓口で確認してください。

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会社員と自営業者の育児支援の違い

会社員と自営業者では、受けられる支援に大きな差があります。

項目 会社員(雇用保険被保険者) 自営業者・フリーランス
育児休業制度 あり(最長2歳まで) なし
育児休業給付金 休業前賃金の67%(最大80%) 対象外
社会保険料免除 産前産後・育児休業中は免除
(健康保険・厚生年金)
2026年10月から免除開始
(国民年金のみ、国保は対象外)
出産手当金 産前42日・産後56日の給与の2/3 対象外
出産育児一時金 50万円 50万円(同じ)
児童手当 支給あり 支給あり(同じ)

このように、自営業者は育児休業給付金や出産手当金といった所得保障がないため、経済的な負担は会社員に比べてかなり大きくなります。

2026年10月の新制度で何が変わるのか

国民年金保険料の免除制度が始まることで、自営業者の育児期間中の負担が軽減されます。

具体的な経済効果

国民年金保険料(2025年度は月額17,510円、2026年度は月額17,920円の見込み)が12ヶ月間免除されると、年間約21万円程度の負担軽減になります。夫婦ともに国民年金第1号被保険者の場合は、合わせて年間約42万円の軽減です。

会社員との格差は依然として大きい

しかし、会社員が育児休業給付金として受け取る金額(例:月給30万円の場合、月額約20万円×12ヶ月=240万円)と比べると、支援の規模は大きく異なります。

自営業者は「仕事を休む=収入ゼロ」になる可能性が高く、この免除措置だけでは育児期間中の生活を十分にカバーできません。

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自営業者が育児と仕事を両立するための準備

自営業者が安心して出産・育児に臨むためには、事前の準備が不可欠です。

経済的な準備

育児期間中の収入減を見越して、最低でも半年分の生活費を貯蓄しておくことが推奨されます。産後すぐに復帰できるとは限らないため、余裕を持った資金計画を立てましょう。

仕事の調整

出産予定日の数ヶ月前から、クライアントへの説明や業務の引き継ぎ、スケジュール調整を始めます。完全に休業するのか、最小限の業務を続けるのか、自分のペースを決めておくことが重要です。

保育園の申し込み準備

自営業者は会社員に比べて保育園入園の優先度が下がる地域もあります。開業届や確定申告書など、就労を証明する書類を早めに準備しましょう。

利用できる支援制度の確認

お住まいの自治体の子育て支援窓口で、利用できる制度を確認してください。申請のタイミングを逃すと受けられない支援もあるため、妊娠がわかった段階で情報収集を始めることをおすすめします。

今後の制度改正の可能性

政府の「こども未来戦略」では、引き続き自営業者への支援拡充が議論されています。将来的には、育児期間中の所得保障制度の創設なども検討課題とされていますが、具体的なスケジュールは未定です。

最新の制度情報は、厚生労働省やこども家庭庁の公式サイトで確認できます。

まとめ

2023年に報じられた「自営業者向けの新たな育児給付金」は実現しませんでしたが、代わりに2026年10月から国民年金保険料の免除制度が始まります。これは約21万円の負担軽減になる重要な支援策ですが、会社員が受け取る育児休業給付金(数百万円規模)と比べると、支援の規模には大きな差があります。

自営業者やフリーランスが安心して出産・育児に臨むためには、公的支援だけに頼らず、事前の貯蓄や仕事の調整など、自分自身での準備が不可欠です。利用できる制度を正しく理解し、計画的に備えることが大切です。

制度の詳細や最新情報は、お住まいの自治体窓口、厚生労働省、こども家庭庁の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q1. 国民年金保険料の免除を受けると、将来の年金額は減りますか?

A. 減りません。免除期間中も満額の基礎年金が保障されます。通常の免除制度とは異なり、育児期間の免除は将来の年金額に影響しない特別な措置です。

Q2. 2026年10月より前に出産した場合、免除は受けられませんか?

A. 2026年10月時点で子どもが1歳未満であれば、施行日以降の期間について、子どもが1歳になるまでの範囲で免除を受けられます。どの月から対象になるかはケースで変わるため、詳細はお住まいの市区町村の国民年金窓口にご確認ください。

Q3. 国民健康保険料も免除されますか?

A. 育児期間(1歳まで)の免除は、現在のところ予定されていません。国民健康保険料(税)については、産前産後期間相当分の軽減(減額)制度があり、育児期間の新制度として始まるのは国民年金保険料の免除のみです。

Q4. 自営業者が育児休業給付金を受け取る方法はありませんか?

A. 育児休業給付金は雇用保険の被保険者のみが対象のため、自営業者は受け取れません。ただし、法人化して自分自身を役員として雇用し、雇用保険に加入することで受給できる可能性がありますが、実務上のハードルは高く、一般的な選択肢ではありません。

Q5. 夫が会社員、妻が自営業の場合はどうなりますか?

A. 夫は育児休業給付金(雇用保険)、妻は国民年金保険料の免除と、それぞれ別の制度を利用できます。両方を併用することで、世帯全体の負担を軽減できます。

Q6. 免除を受けるための手続きはどうすればいいですか?

A. お住まいの市区町村の国民年金担当窓口に、必要書類を提出します。必要書類は、本人確認書類、妊娠・出産の事実や親子関係が確認できる書類(母子健康手帳、戸籍謄本など)です。詳細は自治体の窓口でご確認ください。

Q7. 実際には仕事を続けていても免除は受けられますか?

A. 受けられます。この制度では休業要件が設定されていないため、実際に仕事を続けていても免除の対象になります。自営業者の就業形態の多様性を踏まえた措置です。

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