うつ病や適応障害などのメンタル不調で退職する場合、本来なら自己都合扱いではなくて「特定理由離職者」として、1ヶ月の給付制限なしで受給できる可能性があります(※待期7日は全員共通)。
しかし、「病院に行った日(初診日)」が退職日より1日でも遅れると、原則としてこの優遇措置が受けられなくなります。
「退職してから病院に行った」「診断書の日付が退職日より後になっている」という理由だけで、本来早く受け取れるはずだった失業保険が1ヶ月以上も先送りになり、それまで収入が途絶えるというケースが後を絶ちません。
以前は給付制限期間が3ヶ月ありましたが、今は1ヶ月に短縮されています。それでも1ヶ月先延ばしにされたら苦しいでしょう。
この記事では、メンタル不調で退職する人が絶対に知っておくべき「診断書の日付ルール」と、万が一タイミングを逃してしまった場合の「遡及(そきゅう)=さかのぼって認めてもらうコツ」、そしてハローワークで受理されるための「医師への依頼の仕方」について、実務的な裏事情を含めて解説します。
■目次
スポンサーリンク
【鉄則】診断書の日付は「退職日より前」が絶対条件
🎧 長文を読むのが大変な方へ。「聴くだけで完結する」15分の解説ラジオ
※GoogleのAIが対話形式で記事を要約したものです。
結論から言うと、メンタル不調を理由に「特定理由離職者(給付制限なしで受給しやすい人)」として認められるためには、以下の鉄則を守る必要があります。
ハローワークは書類(証拠)でしか判断しません。
もし、あなたが3月31日に退職し、4月1日に初めて心療内科に行ったとします。すると、ハローワークはこう判断します。
- 3月31日(在職中):病院に行っていない=病気で辞めた証拠がない(自己都合扱いになりやすい)
- 4月1日(退職後):退職後に病気になった
つまり、「退職の原因は病気ではない(=ただの自己都合退職)」と判定されてしまい、給付制限がかかってしまうのです。
退職届を出す前、あるいは有給消化中でも構いません。必ず「在職期間中」に一度受診し、既成事実を作っておくことが、失業保険を最短で受け取るための生命線です。
なぜ「1日の差」がこれほど重要なのか
「たった1日の違いで、そこまで変わるの?」と思うかもしれません。しかし、ハローワークの判断基準は極めてシビアです。
特定理由離職者として認められる条件は、「病気が原因で、やむを得ず退職した」ことを証明できることです。そのためには、以下の2点が揃っている必要があります。
- 退職日時点で既に病気だった(在職中に受診している)
- その病気が原因で、仕事を続けることが困難だった
もし初診日が退職後であれば、「退職してから体調を崩した」と見なされやすく、「退職の原因は病気ではなかった」という扱いに寄ります。
この場合、2025年4月以降は自己都合退職でも給付制限が原則1ヶ月に短縮されましたが、それでも「給付制限がある人」は初回の認定では支給が出ず、給付制限が明けた後の認定日まで入金が来ないのが基本です。特定理由離職者なら給付制限がないため、初回の認定から支給対象になり、ここで1ヶ月以上の差が生まれます。
「特定理由離職者」になるための診断書の書き方(医師への伝え方)
無事に日付をクリアしても、次に立ちはだかるのが「就労可能の証明」という壁です。ここが最も複雑で、多くの人が混乱するポイントです。
「働けない」と書かれると失業保険自体がもらえなくなる
失業保険をもらうための大前提は「今、働ける状態であること」です。
失業保険は、あくまでも就職活動中の生活を支えるためのものです。そのため、「病気で療養が必要(=今は就職活動ができない)」という状態だと、そもそも制度の対象外となってしまうのです。
しかし、特定理由離職者になるには「病気で前の仕事は続けられなかった」という証明が必要です。
一見矛盾しているように見えますが、ハローワークに提出する診断書(または就労可否証明書)には、医師に以下のように書いてもらう必要があります。
- 前職の業務(職場環境)については、継続しての就労は困難であった。
- しかし、現在は(環境が変われば/軽作業であれば/短時間勤務であれば)就労可能である。
医師に診断書を依頼する際は、必ず「失業保険の手続きをして、次の仕事を探したいので『就労可能』と書いてください」と伝えてください。
ここでお医者さんが良かれと思って「しばらく自宅療養が必要(就労不可)」と書いてしまうと、失業保険自体がもらえなくなります(受給期間の延長扱いになります)。
医師への具体的な依頼例
実際に診察室で医師に何と言えばよいのか、具体例を挙げます。
もし医師が「まだ働けないのでは?」と心配してくれた場合は、以下のように伝えてください。
- 「今すぐフルタイムで働くつもりはありません。ただ、失業保険をもらって生活を安定させながら、自分に合った仕事を探したいんです」
- 「もし『就労不可』と書かれると、失業保険がもらえず、収入がなくなってしまうんです」
多くの医師は、患者の経済的な事情を理解してくれます。「働ける状態ではあるが、前の職場環境では無理だった」という表現なら、医学的にも矛盾しません。
スポンサーリンク
「じゃあ傷病手当金でよくない?」←退職後の受診だと1円ももらえません
ここまで読んで、「医者が『病気が原因』と認めてくれるなら、失業保険よりも『傷病手当金』をもらった方が得じゃない?」と思った方もいるでしょう。
確かに、傷病手当金なら「働けない状態」が受給要件なので、嘘をつく必要も求職活動をする必要もなく、給与の約3分の2がもらえます。
しかし、残念ながら退職後に初めて病院に行った人は、傷病手当金は100%もらえません。
なぜなら、会社を辞めた後に傷病手当金をもらい続けるには、以下の絶対条件があるからです。
「退職日の時点で、すでに受給要件を満たしている(=すでに休んでいて、働けない状態である)」こと
つまり、以下の実績が「在職中」にすべて揃っていないといけません。
- 在職中に病院に行き
- 医師から「休職が必要」と言われ
- 退職日(最後の日)を含めて実際に会社を休んでいた
この実績がないと、退職後の給付は1円ももらえません。
国民健康保険には傷病手当金という制度自体がないため、会社の健康保険が使えなくなった(退職した)時点で、傷病手当金をもらう道は完全に閉ざされてしまいます。
だからこそ、退職後に受診した人は、消去法的に「失業保険(特定理由離職者)」を目指すしか、生活費を確保する道が残されていないのです。
▼あわせて読みたい
【諦めるな】退職後に受診してしまった人が「特定理由離職者」を勝ち取る方法
「もう退職してしまった。在職中に病院には行っていない…」しかし、まだ諦めるのは早いです。
正直に言うと「特定理由離職者」として認められるハードルは非常に高くなりますが、完全に不可能というわけではありません。実際に、以下の方法で認められたケースも存在します。
方法①「症状は在職中からあった」旨を医師に相談する
初診日が退職後であっても、医師が問診に基づき「発症時期は在職中であったと推測される」といった内容を診断書に記載してくれれば、ハローワークによっては認められるケースがあります(確実ではありません)。
具体的には、診断書の備考欄や経過欄に、以下のような文言を入れてもらいます。
- 「初診は○月○日だが、問診により症状は在職中(退職前)から出現していたと認められる」
- 「本人の訴えから、△月頃(在職中)より抑うつ状態が続いていたと推測される」
これは医師の判断であり、嘘を書いてもらうわけではありません。実際に、在職中から眠れない、食欲がない、涙が出る、といった症状があったのであれば、それを正直に医師に伝えましょう。
医師が「この症状なら、確かに退職前から病気だったと言える」と判断すれば、診断書に記載してくれる可能性があります。
方法②ハローワークで「異議申し立て」を行う
会社から届いた離職票が「自己都合(離職区分4D)」になっていても、そのまま受け入れる必要はありません。
ハローワークの窓口で、以下のように伝えてください。
ハローワークは、会社の主張だけでなく、あなたが提出した診断書の内容も考慮して判断します。会社に書き直しを頼む必要はありません。ハローワークが職権で離職区分を変更できます。
方法③「特定理由離職者」ではなく「傷病手当金」を検討する
もし医師が「働くのは無理(就労不可)」と判断した場合は、失業保険ではなく、健康保険の「傷病手当金」(在職中から要件を満たしている場合)や、雇用保険の受給期間延長手続きを行うべきです。
無理をして失業保険をもらおうとせず、まずは治療に専念し、傷病手当金(給与の約2/3)をもらう方が、金額的にも有利な場合があります。
▼あわせて読みたい
【重要】遡及が認められなかった場合の現実的な選択肢
どうしても特定理由離職者として認められなかった場合、以下の選択肢があります。
- 自己都合退職として受給する:2025年4月以降は給付制限が原則1ヶ月に短縮されているため、以前(2ヶ月〜3ヶ月)よりは負担が軽い(ただし、5年で自己都合離職が3回以上など一定の場合は3ヶ月になることがある)
- 傷病手当金を申請する:在職中に健康保険に加入していて、退職日前に「連続3日間の待期期間+4日目以降」の要件を満たしていれば、退職後も最長1年6ヶ月間受給できる可能性がある
- 受給期間の延長を申請する:30日以上働けない状態が続く場合、失業保険の受給期間(本来の1年)を最大3年間延長でき、合計で4年間まで受給権を保持できる(治療後に受給可能)
焦って「働ける」と無理をするよりも、自分の体調と向き合い、最適な制度を選ぶことが大切です。
スポンサーリンク
ハローワークへ行く前の最終チェックリスト
メンタル不調での手続きは、一度提出した書類を覆すのが困難です。窓口に行く前に、以下の3点を確認してください。
診断書(原本)のコピーはとったか?
ハローワークに提出した診断書は、原則返却されません。あとで健康保険の給付申請や、転職活動で必要になっても手元にない…とならないよう、必ずカラーコピーをとっておきましょう。
できれば、スマホで写真を撮っておくことも推奨します。
「働ける」と言えるか?
窓口で「具合が悪くて何もできません」と言うと、その場で失業保険の手続きはストップします。「体調に配慮した仕事なら探せます」と答える準備をしておきましょう。
もし本当に働けない状態であれば、無理に失業保険を申請せず、傷病手当金や受給期間延長を検討してください。
離職票の離職区分は確認したか?
会社からの離職票が「自己都合(4D)」になっていても、診断書を持ってハローワークで手続きすれば「特定理由離職者(3A、3C等)」に変更できます。会社に書き直しを頼む必要はありません。
ハローワークで「この離職票は自己都合になっていますが、実際には病気で退職しました」と伝えれば、職員が確認してくれます。
まとめ:病院へ行くのは「退職届」より先!
メンタルが辛い時は、正常な判断ができなくなりがちです。しかし、「病院に行った日」が1日違うだけで、初回の入金が1ヶ月以上ズレることがあります。
- 在職中に心療内科を受診する(日付の証拠作り)
- 医師に「働けるが、今の職場は無理」という診断書をもらう
- ハローワークで「特定理由離職者」への変更を申し出る
この手順を踏めば、自己都合扱いになりそうなケースでも、給付制限を回避して早く受け取れる可能性が上がり、焦らずに次のステップへ進みやすくなります。
もし既に退職してしまった方も、諦めずに「発症時期の遡及(さかのぼり)」や「傷病手当金」など、あらゆる選択肢を検討してください。まずは、自分の身を守るために病院の予約を入れてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 退職日の何日前までに病院へ行けばよいですか?
明確な期限はありませんが、退職日当日または有給消化中でも構いません。重要なのは「在職期間中に受診している」という事実です。ただし、退職後になってしまうと遡及が難しくなるため、退職を決意したらすぐに予約を取ることをおすすめします。
Q2. 診断書ではなく「就労可否証明書」でも大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。ハローワークが求めているのは「病気で退職したこと」と「今は働ける状態であること」の2点が証明できる書類です。診断書、就労可否証明書、意見書など、名称は問いません。医師に「失業保険の手続きに使う」と伝えれば、適切な書類を作成してくれます。
Q3. 会社に「病気が理由」と伝えていないのですが、大丈夫ですか?
大丈夫です。会社への退職理由の伝え方と、ハローワークでの申告は別物です。会社には「一身上の都合」として退職していても、ハローワークで診断書を提出すれば「特定理由離職者」として認められる可能性があります。会社が発行した離職票が「自己都合」になっていても、ハローワークが職権で変更できます。
Q4. 初診が退職後でも、継続して通院していれば認められますか?
残念ながら、初診日が退職後の場合、継続通院だけでは認められない可能性が高いです。重要なのは「退職日時点で既に病気だったか」という点です。ただし、医師が「症状は在職中から存在していた」と診断書に記載してくれれば、認められるケースもあります。まずは医師に相談してみてください。
Q5. 診断書の費用はどのくらいかかりますか?
医療機関によって異なりますが、一般的に3,000円〜5,000円程度です。病院によっては、ハローワーク指定の様式(就労可否証明書)への記入であれば、診断書より安くなる場合もあります。保険適用外のため、全額自己負担になります。
Q6. 精神科ではなく内科で診断書をもらっても有効ですか?
ストレス性の胃腸炎や不眠症など、内科で診断される病気でも「業務上の精神的ストレスが原因」と明記されていれば有効です。ただし、メンタル不調が主訴の場合は、心療内科や精神科を受診した方が、診断書の説得力が高まります。
Q7. 「就労不可」と書かれた診断書を提出してしまいました。どうすればよいですか?
すでに提出してしまった場合、失業保険ではなく「受給期間の延長」手続きが案内されます。治療に専念し、回復後に改めて「就労可能」の診断書を提出すれば、その時点から失業保険を受給できます。また、在職中に健康保険に加入していた場合は、傷病手当金の申請も検討してください。