「学び直しは必要だと思う。でも、会社を辞めて収入がゼロになるのは正直きつい」
そう感じている人にとって、リスキリングは“やる気”の問題ではありません。生活が成り立つかどうか、そこが一番の壁になります。
その現実を踏まえて、在職のまま学ぶ人向けに新しく用意されたのが、教育訓練休暇給付金です。
この制度を使うと、会社に在籍したまま、教育訓練のために30日以上連続の無給休暇を取り、その期間について失業保険(基本手当)と同じ考え方で算定された給付を受けられます。
ただし、誰でも簡単に使える制度ではありません。特に最初に確認すべきポイントは、次の3つです。
- 雇用保険の加入期間が5年以上あるか
- 会社に教育訓練休暇の制度があるか(作れるか)
- 休暇中の社会保険料・住民税を払えるか
この記事では、制度の表面的な紹介ではなく、実際に使うかどうかを判断するための材料を、生活者の目線で整理します。
■目次
教育訓練休暇給付金とは(在職者向けの雇用保険給付)
教育訓練休暇給付金は、雇用保険の一般被保険者が、退職せずに教育訓練へ専念するため、会社の制度に基づいて休暇を取得した場合に支給される給付です。
- 対象:雇用保険の一般被保険者
- 前提:会社の制度に基づく教育訓練休暇
- 条件:30日以上連続の無給休暇
- 給付額:失業給付(基本手当)と同じ考え方で算定
ポイントは、「失業しない」「会社を辞めない」という点です。
職業訓練や失業給付が「離職後の支援」なのに対し、この制度は離職を避けながら学ぶための給付という位置づけになります。
いくらもらえる?給付日数と金額の目安
給付額は、失業保険(基本手当)とほぼ同じ仕組みで決まります。直近の賃金(賞与を除く)をもとに、おおむね50%〜80%の範囲で日額が算定されます。
また、給付を受けられる日数は、雇用保険の被保険者期間によって次のように決まります。
- 被保険者期間5年以上10年未満:90日
- 10年以上20年未満:120日
- 20年以上:150日
あくまで「一時的に学習へ集中するため」の制度であり、数年にわたって給付が続くものではありません。
【参考】月収別の受給イメージ
| 月収(額面) | 給付金の目安(月額) |
|---|---|
| 20万円 | 約13万〜14万円 |
| 30万円 | 約17万〜18万円 |
| 40万円 | 約19万〜20万円 |
※あくまで目安です。年齢・賃金・地域により変動します。正確な額はハローワークで確認してください。
最初に確認すべき3つの条件(ここで可否が決まる)
① 雇用保険の加入期間が5年以上あるか
教育訓練休暇給付金を使うには、休暇開始前に雇用保険の被保険者期間が5年以上必要です。
転職している場合でも通算できることはありますが、自己判断は危険です。まずはハローワークで被保険者期間を確認しましょう。
② 受ける訓練が「職業に関する内容」か
対象となるのは、仕事に結びつく教育訓練です。趣味的な講座は対象外になる可能性があります。
IT・AI・資格・専門学校・大学院など、キャリアや業務改善につながる内容かどうかが判断基準になります。
③ 会社として「30日以上の無給休暇」が取れるか
この制度は、個人が勝手に休んで申請できるものではありません。
就業規則や社内制度に基づいて、30日以上連続の無給休暇を取得する必要があります。制度がない場合、会社が整備に応じてくれるかが分かれ目になります。
見落としがちな注意点:社会保険料と住民税
制度の説明では触れられにくいですが、実際の生活に影響するのがここです。
休暇中は給与が出ないため、健康保険料・厚生年金保険料、住民税の支払い方法が変わります。
- 社会保険の資格は原則として継続
- 本人負担分は支払いが必要
- 給与天引きができない場合、自分で支払うことが多い
- 住民税は前年所得ベースのため、休暇中も納付が続く
給付金が非課税でも、手元に残るお金は想像より少なくなることがあります。ここは必ず事前に確認してください。
まとめ:この制度は「辞めない選択肢」を広げるもの
教育訓練休暇給付金は、退職せずに学び直したい人にとって、有力な選択肢です。
一方で、会社の制度・加入期間・休暇中の支出という条件がそろわなければ使えません。
だからこそ、やるべき順番は次の通りです。
- ハローワークで被保険者期間を確認
- 会社に教育訓練休暇制度の有無を確認
- 休暇中の社会保険料・住民税の支払い方法を確認
- 受講予定の訓練が要件に合うか確認
これらを一つずつ確認すれば、「辞めずに学ぶ」という選択肢が現実的かどうかが見えてきます。