失業保険と傷病手当金は同時にもらえるのか、疑問に思っていませんか?
結論から言うと、失業保険(基本手当)と傷病手当金を同時に受給することはできません。これは、失業保険が「すぐに働ける状態」を前提としているのに対し、傷病手当金は「病気やケガで働けない状態」を前提としているためです。
ただし、傷病手当金を受給している間も、失業保険の受給期間を延長する手続きをしておけば、治療後に失業保険を受け取ることができます。この手続きを知らないと、失業保険の受給権を失ってしまう可能性があるため注意が必要です。
この記事では、失業保険と傷病手当金の違い、どちらが有利か、そして受給期間延長の手続き方法について、具体的な判断材料を交えて詳しく解説します。
■目次
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失業保険と傷病手当金は同時に受給できない
失業保険と傷病手当金は、制度の目的が全く異なるため、同時に受給することができません。
それぞれの制度の目的
【失業保険(雇用保険の基本手当)】
- 目的:失業中の生活を支えながら、再就職を支援する
- 前提条件:すぐに働ける状態であること(就職できる能力と意思があること)
- 運営:厚生労働省(雇用保険)
- 手続き先:ハローワーク
【傷病手当金】
- 目的:病気やケガで働けない期間の生活を保障する
- 前提条件:病気やケガで働けない状態であること
- 運営:健康保険(協会けんぽ、健康保険組合など)
- 手続き先:加入している健康保険
このように、「働ける状態」と「働けない状態」という正反対の前提条件があるため、同時受給は制度上認められていません。
同時受給しようとするとどうなるか
もし失業保険を受給中に病気やケガで働けなくなった場合、以下のいずれかの対応が必要です:
- ハローワークで「傷病手当」(雇用保険の傷病手当)への切り替え手続きを行う
- 失業保険の受給を一時停止し、治療に専念する
逆に、傷病手当金を受給中に失業保険の手続きを進めることはできません。治療が終わり、「働ける状態」になってから失業保険の手続きを行う必要があります。
迷ったときの結論(超要点)
- 今、働けない(療養が必要):まず傷病手当金(または雇用保険の傷病手当)を検討
- 働ける(求職活動できる):失業保険(基本手当)を申請
- 長引きそう:失業保険の「受給期間延長」を早めに済ませておく
傷病手当金とは?受給要件と金額
まず、傷病手当金の制度について詳しく整理しましょう。
傷病手当金の受給要件
傷病手当金を受給するには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります:
- 健康保険の被保険者であること(国民健康保険は対象外)
- 業務外の病気やケガで療養中であること(業務上の病気・ケガは労災保険の対象)
- 療養のため働けない状態であること(医師の証明が必要)
- 連続3日間休んだ後、4日目以降も休んでいること
- 休業期間中に給料の支払いがないこと(一部支給の場合は差額が支給される)
支給額の計算方法
傷病手当金の支給額は、以下の式で計算されます:
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3
例えば、月給30万円(標準報酬月額30万円)の場合:
- 1日あたり:30万円 ÷ 30日 × 2/3 = 約6,667円
- 月額換算:約20万円(6,667円 × 30日)
つまり、給料の約3分の2が支給される計算になります。
支給期間
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算1年6ヶ月です(2022年1月の法改正により、支給開始日から1年6ヶ月経過後も、支給日数が通算して1年6ヶ月に達するまで受給可能となりました)。
通算とは、途中で復職(出勤)して支給が止まる期間があっても、受給日数が“消えずに残る”という意味です。たとえば、いったん回復して1ヶ月働き、また同じ傷病で休職した場合でも、残っている支給日数があれば再開できる可能性があります(同一の傷病かどうか等で取り扱いが変わるため、保険者に確認してください)。
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退職後も傷病手当金を受給できる条件
傷病手当金は、一定の条件を満たせば退職後も受給を継続できます(資格喪失後の継続給付)。
退職後も受給を継続できる条件
以下の条件をすべて満たす必要があります:
- 退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること(任意継続被保険者期間は除く)
- 退職日の前日までに、連続3日間の待期を完成させていること(在職中に傷病手当金の受給資格を得ていること)
- 退職日に出勤していないこと(退職日に出勤すると、その後の受給資格を失います)
退職の挨拶や私物整理で短時間でも出勤すると、「就労した」と扱われて継続給付の条件を満たせなくなることがあります。不安な場合は、退職日の扱いを会社と保険者(協会けんぽ・健保組合)に事前確認しておくと安全です。
退職後の受給期間
退職後も、支給開始日から通算1年6ヶ月まで受給できます。ただし、働ける状態に回復した時点で支給は終了します。
失業保険と傷病手当金、どちらが有利か
病気やケガで退職する場合、失業保険と傷病手当金のどちらを選ぶべきかは、個人の状況によって異なります。
傷病手当金が有利なケース
- 給料が高かった場合:失業保険には年齢ごとの上限額があります。一方、傷病手当金は「標準報酬月額」をベースに計算されるため、高収入の方は傷病手当金の方が多くなる可能性があります
- 治療期間が長期化する見込みの場合:失業保険の給付日数(最大330日)を超えて療養が必要な場合、傷病手当金(最大通算1年6ヶ月)の方が長期間受給できます
- 退職前に傷病手当金の受給資格を得ている場合:すでに連続3日間休んでいる場合、退職後も継続して受給できます
失業保険が有利なケース
- 治療期間が短い場合:数ヶ月で回復し、すぐに求職活動ができる場合
- 会社都合退職で給付日数が多い場合:特定受給資格者として給付日数が優遇される場合
- 給料が低かった場合:失業保険の方が給付率(50〜80%)が高くなるケースがあり、金額的に有利な場合があります
具体的な比較例
月給30万円、35歳、勤続10年の方が会社都合で退職した場合:
| 傷病手当金 | 失業保険 | |
|---|---|---|
| 日額 | 約6,667円 | 約6,208円(概算) |
| 月額換算 | 約20.0万円 | 約18.6万円(概算) |
| 最大受給期間 | 通算1年6ヶ月 | 240日(約8ヶ月) |
| 総額(最大) | 約360万円 | 約149万円(概算) |
この例では、治療期間が長期化する場合は傷病手当金の方が受給総額が大きくなりやすい一方、回復が早く求職活動に移れる場合は失業保険で早期に再就職へ動いた方が、生活の立て直しが早いケースもあります。
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失業保険の受給期間延長手続きが重要
傷病手当金を受給する場合でも、失業保険の受給期間延長手続きは必ず行っておくべきです。
受給期間延長とは
通常、失業保険の受給期間は「離職日の翌日から1年間」です。しかし、病気やケガで働けない期間が30日以上ある場合、この受給期間を最大4年間(本来の1年+延長できる3年)まで延長できます。
ここで重要なのは、給付日数が増える制度ではないことです。受給できる「権利(受給期間)」を後ろ倒しにしてキープする手続きなので、療養が長引いても“受け取る順番”を崩さずに済みます。
延長手続きの方法
【手続きのタイミング】
- 病気やケガなどで「30日以上、働けない状態」が続く場合に対象になります
- 30日が経過したら、できるだけ早めに申請しておくと安心です(申請が遅れるほど、療養後にバタつきやすくなります)
【必要書類】
- 受給期間延長申請書(ハローワークで入手)
- 離職票-2(お持ちの場合)
- 延長理由を証明する書類(医師の診断書、傷病手当金の支給決定通知書など)
- 印鑑
【手続き先】
- 住所地を管轄するハローワーク
- 郵送や代理人による手続きも可能
延長手続きを忘れるとどうなるか
延長手続きをしないまま離職日から1年が経過すると、失業保険の受給権が消滅してしまいます。治療後に働ける状態になっても、失業保険を受給できません。
傷病手当金を受給する場合でも、念のため受給期間延長手続きをしておくことを強くおすすめします。
雇用保険の傷病手当との違い
混同しやすい制度として、「雇用保険の傷病手当」があります。これは健康保険の「傷病手当金」とは全く別の制度です。
雇用保険の傷病手当とは
失業保険の受給手続き後(求職申込後)、求職活動中に病気やケガで15日以上働けない状態になった場合に支給される手当です。
- 支給額:基本手当日額と同額
- 支給期間:基本手当の給付日数の範囲内
- 条件:ハローワークで求職申込後に、15日以上継続して働けない状態
つまり、失業保険の基本手当を病気・ケガ版に切り替えたものというイメージです。なお、体調が悪いのに無理に求職活動を続けると手続きが複雑になりやすいため、早めにハローワークへ相談して、適切な制度に切り替えるのが安全です。
健康保険の傷病手当金との違い
| 健康保険の傷病手当金 | 雇用保険の傷病手当 | |
|---|---|---|
| 運営 | 健康保険 | 雇用保険 |
| 対象 | 在職中または退職後の療養 | 失業保険受給中の療養 |
| 支給額 | 給料の約2/3 | 基本手当日額と同額 |
| 最大期間 | 通算1年6ヶ月 | 基本手当の給付日数内 |
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不正受給は絶対にダメ
検索クエリに「失業保険 傷病手当 ばれる」というものがありますが、失業保険と傷病手当金の同時受給は不正受給に当たり、発覚すれば厳しいペナルティがあります。
不正受給のペナルティ
- 支給停止:それ以降の失業保険が打ち切られる
- 返還命令:不正に受給した全額を返還
- 納付命令(いわゆる3倍返し):不正受給額の最大2倍の金額を追加で支払う(返還分と合わせて約3倍)
- 刑事告発:悪質な場合は詐欺罪で告発される可能性
なぜ「確認される」のか
「ばれるかどうか」を気にしてしまう気持ちは自然ですが、制度は“どちらか一方の前提”で設計されています。失業保険側では認定日に「就職できる状態か」「求職活動をしているか」を確認し、傷病手当金側では「療養のため働けない状態か」を医師の証明等で確認します。
この前提が同時に成り立たないため、申告内容や手続き状況に矛盾が出ると、確認(照会・調査)の対象になります。不明な点があれば、最初からハローワークや健康保険に相談したうえで、適切な制度に切り替えるのが安全です。
まとめ:失業保険と傷病手当金の関係
失業保険と傷病手当金の関係について、重要なポイントをまとめます。
- 失業保険と傷病手当金は同時に受給できない(制度の前提条件が正反対)
- 傷病手当金は給料の約2/3が最大通算1年6ヶ月支給される
- 退職後も傷病手当金を受給するには、在職中に連続3日間の待期を完成させる必要がある
- どちらが有利かは、給料額、治療期間、給付日数などによって異なる
- 傷病手当金を受給する場合でも、失業保険の受給期間延長手続きは必ず行うべき
- 不正受給は厳しいペナルティがあるため絶対に避ける
病気やケガで働けない期間がある場合、焦らず治療に専念することが大切です。制度を正しく理解し、自分の状況に合った選択をしましょう。判断に迷う場合は、ハローワークや加入している健康保険に相談することをおすすめします。
よくある質問
失業保険と傷病手当金は同時にもらえますか?
いいえ、もらえません。失業保険は「すぐに働ける状態」が前提条件であるのに対し、傷病手当金は「病気やケガで働けない状態」が前提条件です。制度の前提が正反対のため、同時受給はできません。
失業保険と傷病手当金、どちらが得ですか?
一概には言えませんが、判断材料として以下を確認してください:給料が高かった場合や治療期間が長期化する見込みの場合は傷病手当金が有利です。治療期間が短く、すぐに求職活動ができる場合は失業保険が有利です。また、会社都合退職で給付日数が多い場合も失業保険が有利な場合があります。
傷病手当金を受給しながら、失業保険の受給期間延長手続きはできますか?
はい、できます。むしろ、傷病手当金を受給する場合でも、失業保険の受給期間延長手続きは必ず行っておくべきです。延長手続きをしておけば、治療後に働ける状態になったときに失業保険を受給できます。延長手続きをしないと、離職日から1年経過後に受給権が消滅してしまいます。
退職後も傷病手当金はもらえますか?
はい、一定の条件を満たせばもらえます。条件は:①退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること(任意継続期間を除く)、②退職日の前日までに連続3日間の待期を完成させていること、③退職日に出勤していないこと、の3つです。特に退職日に出勤すると受給資格を失うため注意が必要です。
雇用保険の傷病手当と健康保険の傷病手当金は違うのですか?
はい、全く別の制度です。健康保険の傷病手当金は在職中または退職後の療養期間に給料の約2/3が最大通算1年6ヶ月支給されます。一方、雇用保険の傷病手当は失業保険受給中(求職申込後)に15日以上働けなくなった場合に、基本手当日額と同額が支給されるもので、給付日数の範囲内で支給されます。
失業保険と傷病手当金を同時に受給したらばれますか?
同時受給は不正受給に当たり、申告内容や手続き状況に矛盾が出ると確認(照会・調査)の対象になります。発覚すると、支給停止、全額返還、納付命令(いわゆる3倍返し)、悪質な場合は刑事告発などの厳しいペナルティがあります。最初からハローワークや健康保険に相談し、適切な制度を選んでください。
傷病手当金の金額はいくらですか?
傷病手当金の金額は、支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3で計算されます。例えば月給30万円の場合、1日あたり約6,667円、月額換算で約20万円になります。つまり、給料の約3分の2が支給される計算です。