「職業訓練は無料で通える上にお金がもらえるらしい、実際いくらもらえるの?」
会社を辞めた後、次の仕事に向けてスキルを身につけたい。でも訓練に通っている間の生活費が心配。そう考えて職業訓練をためらっている方も多いと思います。
実際に、失業保険(基本手当)を受給しながら公共職業訓練を受講すると、基本手当に加えて「受講手当」「通所手当」「寄宿手当」という3つの手当が上乗せで支給されます。さらに、給付制限の解除や給付日数の延長といった大きな利点もあります。
そして、失業保険の受給資格がない方でも「求職者支援訓練」を利用すれば、月10万円の給付金を受けながら無料で訓練に通うことができます。
この記事では、職業訓練中にもらえるお金を把握し、実際に自分の場合どれくらいのお金をもらいながら職業訓練に通うことができるのかをシミュレーションします。
■目次
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職業訓練中にもらえるお金の全体像
まず、職業訓練中に受け取れるお金の全体像を把握しましょう。ここでの「職業訓練」は、ハローワークの受講指示を受けて通う「公共職業訓練」を前提にしています。
公共職業訓練中に受け取れるお金一覧
- 基本手当(失業保険):退職前の給与をもとに計算される日額 × 受講日数
- 受講手当:1日500円(上限40日分 = 最大20,000円)
- 通所手当:訓練施設への交通費(月額上限42,500円)
- 寄宿手当:月額10,700円(訓練施設が遠方で引っ越しが必要な場合のみ)
これらはすべて非課税です。所得税も住民税もかかりません。
ここで重要なのが、これらの手当をもらうにはハローワークから「受講指示」を受けて公共職業訓練に通っていることが条件だという点です。「受講指示」とは、ハローワークが「この人には職業訓練が必要だ」と判断して、訓練の受講を指示するものです。失業保険の受給資格があり、給付日数の残りが一定以上ある方が対象になります。
職業訓練に通う最大のメリット:給付日数の延長
手当の上乗せも大きいですが、それ以上に大事なことが基本手当の給付日数が訓練終了まで延長されるという特典です。これを「訓練延長給付」といいます。
たとえば、所定給付日数が90日の方が6ヶ月間の職業訓練に通った場合、本来なら90日(約3ヶ月)で終わるはずの基本手当が、訓練終了まで(約180日)延長されます。基本手当日額が5,000円なら、延長分だけで約45万円のプラスです。
この「延長」があるからこそ、職業訓練は「スキルが身につく+お金ももらえる」という、退職後の方にとって非常に有利な制度なのです。
自己都合退職の「給付制限」も解除される
自己都合退職の場合、通常は退職後に1ヶ月の給付制限(※2025年4月の法改正により、過去5年間で自己都合退職が2回以下の場合に限り、2ヶ月から1ヶ月へ短縮)、すぐには失業保険を受け取れません。しかし、公共職業訓練の受講指示を受けると、この給付制限が解除され、訓練開始日から基本手当が支給されます。
「早くお金がほしいけど、給付制限で待たされるのが不安」という方にとっては、職業訓練に通うことが給付制限を回避する実質的な手段になります。
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受講手当:1日500円、最大20,000円
受講手当は、公共職業訓練を実際に受講した日に支給される手当です。「訓練に通ったことへの日当」と考えるとわかりやすいでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 1日500円 |
| 支給上限 | 40日分(最大20,000円) |
| 支給日 | 訓練を実際に受講した日のみ(欠席日は対象外) |
| 対象 | 受講指示を受けて公共職業訓練を受講している基本手当の受給資格者 |
1日500円と聞くと少額に感じるかもしれませんが、週5日×4週間で月10,000円の上乗せになります。昼食代の補助と考えれば、ないよりあった方がありがたい金額です。
ただし注意点があります。上限は40日分(20,000円)です。週5日通う訓練コースの場合、約2ヶ月で上限に達します。
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通所手当:訓練校までの交通費(月額上限42,500円)
通所手当は、自宅から訓練施設までの通勤にかかる交通費を補助するものです。会社に勤めているときの「通勤手当」の職業訓練版と考えるとイメージしやすいでしょう。
支給額の計算方法
| 通所方法 | 支給額 |
|---|---|
| 公共交通機関(電車・バス) | 1ヶ月の定期代相当額(月額上限42,500円) |
| 自動車・バイク | 距離に応じた定額(片道2km以上が対象) |
| 自転車・徒歩 | 支給なし(片道2km未満の場合も同様) |
自動車・バイクで通う場合の支給額
公共交通機関がなく自動車やバイクで通所する場合は、片道の距離に応じた定額が支給されます。
自動車・バイクでの通所手当(片道の距離別)
- 2km以上10km未満:3,690円/月
- 10km以上25km未満:5,850円/月
- 25km以上45km未満:8,010円/月
- 45km以上:距離区分に応じた金額(上限あり)
公共交通機関の場合は実費(定期代相当額)が支給されるため、遠方の訓練校に通う場合でも交通費の持ち出しはほとんどありません。ただし、月額42,500円を超える場合は超過分が自己負担になります。
受講手当との大きな違いとして、通所手当には「40日上限」のような制限がありません。訓練期間中ずっと支給されるため、6ヶ月コースなら6ヶ月間まるまる交通費が支給されます。
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寄宿手当:月額10,700円(引っ越しが必要な場合)
寄宿手当は、訓練施設が自宅から遠く、訓練のために一時的に転居(寄宿)が必要な場合に支給される手当です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 月額10,700円 |
| 対象 | 訓練施設への通所が通常の交通手段では困難で、寄宿が必要と認められた方 |
| 条件 | 同居の配偶者等と別居して寄宿する場合に限る |
月額10,700円は家賃の足しとしては少額ですが、基本手当や通所手当と合わせれば、地方から都市部の専門的な訓練コースに通うハードルを少し下げてくれます。
対象者は限られるため、実際に受給するケースは多くありません。「自分が該当するかも」と思ったら、ハローワークで相談してみてください。
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月給別シミュレーション:職業訓練中の月収はトータルいくら?
ここが一番気になるところでしょう。退職前の月給別に、職業訓練中に受け取れる月額の目安をシミュレーションします。
前提条件は以下の通りです。
- 自己都合退職、30歳未満
- ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練を受講中(給付日数延長あり)
- 電車通学で定期代が月8,000円
- 受講手当は上限(40日)に達していない期間
| 退職前の月給(額面) | 基本手当日額(目安) | 基本手当(月22日) | 受講手当(月22日) | 通所手当 | 月額合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 約4,900円 | 約107,800円 | 11,000円 | 8,000円 | 約126,800円 |
| 25万円 | 約5,400円 | 約118,800円 | 11,000円 | 8,000円 | 約137,800円 |
| 30万円 | 約5,900円 | 約129,800円 | 11,000円 | 8,000円 | 約148,800円 |
| 35万円 | 約6,400円 | 約140,800円 | 11,000円 | 8,000円 | 約159,800円 |
| 40万円 | 約6,800円 | 約149,600円 | 11,000円 | 8,000円 | 約168,600円 |
※受講手当は40日分の上限があるため、約2ヶ月目以降は月額合計から11,000円が減ります。
※基本手当日額は年齢・給与額・勤続年数などによって変動します。正確な金額は下記の自動計算ツールでご確認ください。
失業保険がない人でも使える「求職者支援訓練」
ここまで説明してきた受講手当・通所手当・寄宿手当は、失業保険(基本手当)の受給資格がある方が対象です。では、失業保険をもらえない方はどうなるのでしょうか。
求職者支援訓練とは
失業保険の受給資格がない方(雇用保険に加入していなかった方、受給期間が終了した方など)でも、「求職者支援訓練」という制度を利用すれば、無料で職業訓練に通うことができます(テキスト代等は自己負担)。
求職者支援訓練は、公共職業訓練とは別の制度です。ハローワークに求職申し込みをしている方であれば、雇用保険に入っていなかった方でも受講できます。
月10万円の「職業訓練受講給付金」
さらに、一定の要件を満たせば「職業訓練受講給付金」として月額10万円が支給されます。これに加えて通所手当(交通費)と寄宿手当も支給されるため、生活費を確保しながら訓練に通うことが可能です。
職業訓練受講給付金の内容
- 職業訓練受講手当:月額10万円
- 通所手当:訓練施設までの交通費(実費、上限あり)
- 寄宿手当:月額10,700円(転居が必要な場合)
職業訓練受講給付金をもらうための主な条件
ただし、この給付金をもらうにはいくつかの厳しい条件があります。主な条件は以下の通りです。
【職業訓練受講給付金の主な支給要件】
- ハローワークに求職申し込みをしていること
- 雇用保険の被保険者でないこと(または受給資格がないこと)
- 本人の収入が月8万円以下であること
- 世帯全体の収入が月40万円以下であること
- 世帯全体の金融資産が300万円以下であること
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していないこと
- 訓練のすべての実施日に出席していること(やむを得ない理由で欠席する場合でも、総訓練日数の8割以上の出席が絶対条件となります)
条件はかなり厳しいです。とくに訓練のすべての実施日に出席しなければならないところ。風邪なとで休んだ場合でも、証明書が必要であったり、8割以上の出席が条件となっています。
公共職業訓練と求職者支援訓練の違い
2つの訓練制度の違いを整理しておきましょう。
| 比較項目 | 公共職業訓練(受講指示) | 求職者支援訓練 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 失業保険の受給資格がある方 | 失業保険の受給資格がない方 |
| 受講料 | 無料 | 無料 |
| もらえるお金 | 基本手当+受講手当+通所手当+寄宿手当 | 職業訓練受講給付金(月10万円)+通所手当+寄宿手当 |
| 基本手当の延長 | あり(訓練終了まで延長) | なし(そもそも基本手当がない) |
| 給付制限の解除 | あり | 対象外 |
| 収入・資産の条件 | なし | あり(月収8万円以下、金融資産300万円以下等) |
| 出席要件 | 原則8割以上 | 原則すべての実施日に出席 |
失業保険がもらえる方は「公共職業訓練」、もらえない方は「求職者支援訓練」。これが基本的な選び方です。
なお、失業保険の受給資格がある方でも求職者支援訓練を受講すること自体は可能です。ただしその場合、受講手当や通所手当(公共職業訓練の上乗せ分)はもらえず、基本手当の延長もありません。失業保険の受給資格があるなら、公共職業訓練を選ぶほうが圧倒的に有利です。
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職業訓練中の手当に関する注意点
欠席した日は基本手当も受講手当も出ない
職業訓練を欠席した日は、原則として基本手当(失業保険)も受講手当も支給されません。やむを得ない理由(病気、面接、冠婚葬祭など)であれば基本手当のみ支給されるケースもありますが、受講手当は実際に受講した日だけが対象です。
「サボっても失業保険はもらえるだろう」と考えていると痛い目にあいます。出席率が低い場合は訓練の退校処分となり、基本手当の延長も打ち切られる可能性があるため、体調管理は重要です。
受講手当の40日上限に達した後はどうなる?
受講手当の上限40日に達した後も、基本手当と通所手当は引き続き支給されます。月額から約11,000円(受講手当分)が減るだけで、生活に大きな影響を与えるほどの減額ではありません。
アルバイトは「禁止」ではないが要注意
職業訓練中のアルバイトは法律で禁止されているわけではありません。ただし、訓練に支障をきたさないことが大前提です。
注意すべきルールは2つあります。
- 1日4時間以上のアルバイトをした日は、その日の基本手当が支給されない
- 週20時間以上働くと「就職した」とみなされ、失業保険の受給資格自体を失う可能性がある
アルバイトをした場合は、必ず失業認定申告書に正直に申告してください。申告せずに後から発覚すると、不正受給として「受給額の全額返還」に加えて「不正受給額の2倍の納付命令(いわゆる3倍返し)」という非常に重いペナルティの対象になります。
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まとめ:職業訓練は「学びながらお金がもらえる」最強の制度
退職後にスキルアップを考えているなら、職業訓練の活用を検討しない手はありません。受講手当・通所手当・寄宿手当の上乗せだけでなく、基本手当の給付日数延長と給付制限の解除が最大のメリットです。
この記事のポイント
- 公共職業訓練中は基本手当(失業保険)+ 受講手当 + 通所手当 + 寄宿手当がもらえる
- 受講手当は1日500円(上限40日分 = 最大20,000円)
- 通所手当は交通費の実費相当額(月額上限42,500円)で、訓練期間中ずっと支給される
- 寄宿手当は月額10,700円(引っ越しが必要な場合のみ)
- 基本手当の給付日数が訓練終了まで延長されるのが最大のメリット
- 自己都合退職の給付制限も、訓練開始日から解除される
- すべて非課税で、所得税・住民税はかからない
- 失業保険がない方は「求職者支援訓練」で月10万円の給付金を受けながら通える
「職業訓練に通うか迷っている」なら、まずはハローワークの窓口で相談してみてください。どんなコースがあるか、自分の給付日数の残りで受講指示がもらえるかなど、具体的な話が聞けます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 通所手当は電車とバスの乗り継ぎでも全額出ますか?
A. はい。公共交通機関の場合は、最も経済的かつ合理的な経路の1ヶ月分の定期代相当額が支給されます。乗り継ぎを含めた合計額が対象です。ただし、月額42,500円が上限です。
Q. 寄宿手当をもらうにはどんな書類が必要ですか?
A. ハローワークに寄宿が必要であることを証明する書類の提出が求められます。具体的な必要書類は地域やケースによって異なるため、ハローワークの窓口で直接確認してください。
Q. 職業訓練中にアルバイトしたら手当はどうなりますか?
A. 法律上は禁止されていませんが、1日4時間以上のアルバイトをした日は基本手当が支給されません。また、週20時間以上働くと「就職した」とみなされる可能性があります。アルバイトをした場合は必ず失業認定申告書に申告してください。
Q. これらの手当は確定申告で申告する必要がありますか?
A. いいえ。基本手当・受講手当・通所手当・寄宿手当はすべて非課税です。確定申告での申告は不要で、所得税・住民税もかかりません。職業訓練受講給付金(月10万円)も同様に非課税です。
Q. 求職者支援訓練の給付金(月10万円)と失業保険は同時にもらえますか?
A. いいえ。職業訓練受講給付金は、失業保険(基本手当)の受給資格がない方を対象とした制度です。失業保険をもらっている方は、公共職業訓練の受講指示を受けて通うほうが、基本手当の延長や受講手当の上乗せがあるため有利です。
Q. 公共職業訓練と求職者支援訓練、どちらに通うか迷っています。
A. 失業保険の受給資格があるなら、公共職業訓練を選んでください。基本手当の延長、給付制限の解除、受講手当・通所手当の上乗せがあり、経済的に圧倒的に有利です。失業保険の受給資格がない方(雇用保険未加入、受給期間終了など)は、求職者支援訓練が選択肢になります。
参考・出典
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「就職促進給付(受講手当・通所手当等)」

