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公務員は失業保険がもらえない?退職手当の仕組みとペナルティを解説

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「公務員を辞めたら、失業保険ってもらえないの?」

転職や退職を考え始めた公務員の方が、最初にぶつかる壁がこれです。民間企業で働く友人は「ハローワークに行けばしばらくお金がもらえる」と言っている。でも自分は公務員。調べてみると「公務員は雇用保険に入っていない」という事実を知り、急に不安になる。そんな人は少なくありません。

結論から言うと、公務員は失業保険(雇用保険の基本手当)をもらうことはできません。しかし、その代わりに「失業者の退職手当」という別の制度が用意されています。簡単に言えば、「民間の人がもらえる金額に足りない分を、退職金に上乗せして補填してくれる」仕組みです。

この記事では、公務員がなぜ失業保険に入れないのか、代わりの制度でいくらもらえるのか、勤続5年と10年でどれくらい差が出るのか、さらに懲戒免職のような最悪のケースまでわかりやすく解説します。

■目次

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なぜ公務員は失業保険に入れないのか

民間企業で働く会社員は、毎月の給料から「雇用保険料」が天引きされています。これは会社が倒産したり、リストラにあったりしたときに、次の仕事が見つかるまでの生活費を国が保障するための掛け金です。

一方、公務員はこの雇用保険に入っていません。理由はシンプルで、雇用保険法の第6条に「公務員は原則として適用しない」と書かれているからです。

公務員が雇用保険の対象外とされる理由

  • 雇用主が国や自治体なので、民間企業のように「倒産」がない
  • 法律で身分が強く保障されていて、簡単にクビにならない
  • 「突然、職を失う」リスクが民間より極端に低いと判断された

つまり「失業するリスクが低いから、保険に入る必要がない」という考え方です。実際、公務員は在職中に雇用保険料を払っていないため、民間の同世代よりほんの少しだけ手取りが多いというメリットもあります。

ただし、これは裏を返せば「自分の意思で辞めたとき、ハローワークで失業保険をもらえない」ということでもあります。保険料を1円も払っていない以上、民間と同じ給付を受ける権利がないのは当然といえば当然です。

公務員の救済制度「失業者の退職手当」とは

「じゃあ公務員は辞めたら何の保障もないの?」と思うかもしれませんが、ちゃんとセーフティネットは用意されています。それが「失業者の退職手当」です。

仕組みをひと言で言うと「差額の補填」

この制度の考え方はとてもシンプルです。

失業者の退職手当の計算ロジック

「もしこの人が民間企業で働いていたら、失業保険をいくらもらえたか?」を計算し、実際に受け取った退職金がその金額より少なければ、足りない分だけを国が補填してくれる仕組みです。

たとえば、民間基準で計算すると50万円の失業保険をもらえるはずの人が、公務員の退職金として20万円しか受け取れなかった場合。差額の30万円が「失業者の退職手当」としてハローワーク経由で支給されます。

公務員と民間の退職後の保障の違い

逆に、退職金が民間の失業保険より多い場合は差額が発生しないため、この制度の対象にはなりません。つまり、長く勤めて退職金がたくさんもらえるベテランほど対象外になり、勤続年数が短い若手ほど恩恵が大きい仕組みになっています。

受け取るための4つの条件

ただし、退職すれば自動的にもらえるわけではありません。以下の条件をすべて満たす必要があります。

【失業者の退職手当を受け取るための条件】

  1. 公務員としての勤続期間が原則12ヶ月(1年)以上あること
  2. 受け取った退職金が、民間基準の失業保険の総額を「下回っている」こと
  3. 「失業の状態」にあること(働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしている)
  4. 所定の待期期間・給付制限を経過していること

特に大事なのは3つ目の条件です。「失業」とは、ただ仕事をしていない状態ではありません。「いつでも働ける状態で、実際に仕事を探しているのに見つからない」ことを意味します。病気で動けない人や、しばらく働くつもりがない人は対象外です。

これは民間の失業保険とまったく同じ考え方です。

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勤続年数で金額はどれくらい変わる?民間との比較シミュレーション

ここからが一番気になるところでしょう。「で、結局いくらもらえるの?」という話です。勤続年数ごとに、退職金と失業者の退職手当を合わせた金額をシミュレーションしてみましょう。

公務員の退職金の計算式

公務員の退職金は、基本的に以下の式で決まります。

退職金の計算式

退職時の基本給(俸給月額)× 支給率(勤続年数に応じた係数)

この「支給率」が最初の数年はとても低く、勤続年数が長くなるほど一気に跳ね上がります。これが若手公務員に厳しい現実を突きつけるポイントです。

年齢別の退職金の目安(自己都合退職の場合)

退職時の年齢 自己都合退職金の目安
20歳未満 約 8万円
20〜24歳 約 20万円
25〜29歳 約 52万円
30〜34歳 約 107万円
35〜39歳 約 222万円

20代で辞めると退職金は多くても50万円程度。この金額だけで転職活動期間を乗り切るのは、正直かなり厳しいです。

勤続1〜2年で辞めた場合:退職手当が命綱

具体的なケースで見てみましょう。新卒入庁後、勤続1年で自己都合退職した27歳の職員の場合です。

項目 金額
退職前6ヶ月の給与総額 約140万円
賃金日額(1日あたりの稼ぎ) 約7,782円
民間基準の失業保険(基本手当日額×90日) 約49.4万円
公務員の退職金(勤続1年) 約11.7万円
差額=失業者の退職手当 約37.9万円

退職金約11.7万円はすでに受け取っているので、ハローワークで「11.7万円÷日額5,494円=約21日分は前払い済み」と計算されます。90日−21日=残り69日分×5,494円=約37.9万円が追加で支給されるわけです。

合計すると約49.6万円。民間で失業保険をもらう場合とほぼ同じ金額になります。若手公務員にとっては、この差額補填がまさに命綱です。

勤続5年で辞めた場合:補填がもらえるかギリギリのライン

勤続5年になると話が変わってきます。支給率が2.511に上がるため、月給25万円の場合、退職金はおよそ60〜70万円になります。

一方、民間基準の失業保険の総額は20代後半だとおおむね50〜60万円程度。つまり、退職金の方が上回る可能性が出てくるのです。

勤続5年は"境界線"

退職金と民間の失業保険がちょうど拮抗する時期です。ハローワークで計算してもらった結果、「あなたの退職金の方が多いので、差額の補填はありません」と言われるケースが増え始めます。

この時期に退職する方は、「退職金はある程度まとまって入るが、追加の手当は期待できない」と理解して資金計画を立てる必要があります。

勤続10年で辞めた場合:完全に退職金だけで自立できる

勤続10年を迎えると、支給率は5.022へ跳ね上がります。月給のベースも上がっているため、退職金は150万円を超えるケースが多くなります。

民間の失業保険には年齢ごとに上限があり、自己都合退職だと総額でどんなに多くても百数十万円程度が天井です。したがって、勤続10年の退職金はほぼ確実に失業保険を上回ります。

差額補填はゼロ。ハローワークに行く目的は、手当ではなく純粋に求人探しに切り替わります。ここが、退職金だけで転職期間を乗り切れるようになる明確な分岐点です。

勤続年数ごとの全体比較

勤続年数 退職金の目安 民間の失業保険相当額 差額補填
1年 約11.7万円 約49.4万円 約37.9万円
3年 約40万円 約49万円 約9万円
5年 約63万円 約55万円 0円
10年 約150万円超 約80〜100万円 0円
20年 数百〜1,000万円 約100〜130万円 0円

このように、勤続5年あたりを境に差額が消え、それ以降は退職金だけで十分に転職期間をまかなえるようになります。

懲戒免職でも退職手当はもらえるのか?

ここからは、あまり考えたくないケースの話です。公務員が窃盗・痴漢・横領・飲酒運転などの重大な不祥事を起こし、「懲戒免職」という最も重い処分を受けた場合、お金はどうなるのでしょうか。

退職金は「原則不支給」または「大幅減額」

懲戒免職になると退職金は原則として全額支給されないか、一部のみの支給へと大幅に減額されます。どれだけ長年真面目に働いてきたとしても、非常に厳しいペナルティが待っています。

公務員の退職金は「長年誠実に公務に尽くしたことへの報奨」という意味合いが強いため、国民の信頼を裏切った人に税金から報奨金を出すわけにはいかない、という考え方です。

さらに、懲戒免職の処分を受けた日から2年間は、いかなる公務員にも再び就くことができません。ニュースで実名が報道されることも多く、民間への再就職も非常に厳しい状況になります。

それでも「失業者の退職手当」は受給できる

「退職金ゼロ、再就職もできない。もう終わりだ」と思うかもしれません。しかし、ここが日本の制度として重要なポイントです。

不祥事を起こして退職金が0円になった場合でも、完全に社会から見放されるわけではありません。勤続1年以上で、かつ「働く意思と能力」があるなどの条件を満たせば、「失業者の退職手当」を受給する権利自体は法律上残されています。(ただし、ハローワーク窓口での「就労意欲の確認」は通常より厳格に行われます)

なぜ犯罪者にも手当が出るのか?

退職金は「過去の功労に対するご褒美」なので没収されます。しかし「失業者の退職手当」は「これからの最低限の生活を支え、社会に復帰するための命綱」です。目的がまったく違います。

この支援まで断ってしまうと、食べることもできず再び犯罪に走る悪循環を生む危険があります。憲法が保障する生存権の観点から、最低限のセーフティネットとして機能しているのです。

退職金が0円なので、民間基準の失業保険相当額がまるまる全額補填されます。民間企業で懲戒解雇された人にもペナルティ期間はあるものの失業保険が出るのと、考え方は同じです。

逮捕・勾留中はもらえない

ただし、1つ大きな壁があります。犯罪で逮捕・勾留されている間や、裁判の結果として服役している間は、ハローワークに通って求職活動をすることが物理的に不可能です。

「失業の状態」=「今すぐ働ける状態で求職活動をしている」ことが条件なので、身柄を拘束されている期間は1円も支給されません。手当の権利が発生するのは、拘束が解けて社会に戻り、実際にハローワークの窓口に行けるようになってからです。

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退職後の手続き|ハローワークでやること

ここからは、実際に公務員を退職した後に踏むべき手続きを順番に解説します。民間と違うところがあるので注意してください。

退職後にやることフローチャート

「離職票」ではなく「退職票」を受け取る

民間企業を辞めた人は「離職票」をもらいますが、公務員はそもそも雇用保険に入っていないので離職票は発行されません。その代わり、所属していた官公庁の人事担当から「退職票」と「証明願」という書類を受け取ります。

この退職票が、いくら給与をもらっていたかを証明する唯一の書類です。絶対になくさないでください。

ハローワークでの手続きの流れ

【退職後のハローワーク手続き】

  1. 退職時に職場の人事担当から「退職票」と「証明願」を受け取る
  2. 住所地のハローワークに行き、退職票を提出して求職の申し込みをする
  3. ハローワークで証明を受けた書類を元の職場に提出する(自治体により異なる)
  4. 「退職手当受給資格証」が交付され、今後のスケジュールが決まる

自己都合退職には「給付制限」がある

手続きをしたからといって、すぐにお金がもらえるわけではありません。自分の意思で辞めた場合は、次のペナルティ期間があります。

退職後の手続きフロー&2025年改正ポイント

  • 待期期間:7日間(全員共通)
  • 給付制限:原則1ヶ月(過去5年以内に3回以上退職している場合は3ヶ月)

この「完全無収入の期間」を、わずかな退職金と貯金でどう乗り切るかが、若手退職者にとって最初の大きな試練です。

また、手続き全体を退職日の翌日から1年以内に終わらせないと、受給する権利自体が消滅します。のんびりしていると取り返しがつかなくなるので、退職したら真っ先にハローワークへ行きましょう。

退職後の健康保険と年金の切り替え

退職した瞬間から、給料はゼロになります。でも健康保険や年金の請求は容赦なくやってきます。在職中は共済組合に入っていて、保険料は職場が半分負担してくれていました。退職後はすべて自己負担です。

健康保険:2つの選択肢と「絶対に守るべき期限」

退職後は、以下の2つの健康保険から自分に合ったものを選びます。ここで絶対に注意すべきなのが「手続きの期限」です。

  • 任意継続を選ぶ場合: 退職日の翌日から「20日以内」に手続き必須。1日でも遅れると加入できなくなります。
  • 国民健康保険を選ぶ場合: 退職日の翌日から「14日以内」が原則。ただし、遅れても遡って加入・支払いを行うことは可能です。
選択肢 内容 向いている人
任意継続 退職前の共済組合にそのまま加入(最長2年)。ただし保険料は在職中の約2倍に 在職中の給与が高かった人、扶養家族がいる人
国民健康保険 市区町村の役所で加入手続き。前年の所得をもとに保険料が決まる 20代の独身、前年所得が低い人

20代の若手が自己都合退職した場合、国民健康保険の方が安くなるケースが多いです。前年の所得がベテランより低い分、保険料が抑えられるためです。

失業中なら保険料の「減免」が使える

さらに大事なポイントがあります。国民健康保険には、失業で収入が激減した人向けの保険料減免制度があります。

公務員は離職票がないので減免の証明が難しそうに見えますが、ハローワークで発行された「退職手当受給資格証」があれば大丈夫。これを役所の窓口に見せて相談すれば、保険料が大幅に安くなる可能性があります。

退職したらすぐに役所へ行き、「任意継続と国民健康保険のどちらが安いか」「減免は受けられるか」を窓口で計算してもらうのが最も確実です。

年金:国民年金への切り替え

在職中は厚生年金(第2号被保険者)でしたが、退職後は国民年金(第1号被保険者)に切り替えます。市区町村の役所に年金手帳と本人確認書類を持参して手続きしてください。

収入がなく保険料の支払いが厳しい場合は、国民年金の免除制度も利用できます。全額免除や一部免除があり、将来の年金額は減りますが、未納のまま放置するよりずっと有利です。

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まとめ

公務員は雇用保険に入っていないため、民間のような失業保険をもらうことはできません。しかし、その代わりに「失業者の退職手当」という差額補填の仕組みが用意されています。

勤続1〜2年の若手なら約38万円の差額補填が命綱に。勤続5年を超えると退職金の方が多くなり、補填はゼロに近づきます。勤続10年以上なら退職金だけで十分やっていけます。

懲戒免職のような最悪のケースでも、退職金は没収されますが「失業者の退職手当」は受給可能。生存権を守るための最低限のセーフティネットです。

大切なのは、退職前に制度を正しく知り、退職後すぐに手続きを始めること。退職票の受け取り、ハローワークへの届出、健康保険と年金の切り替え。この3つを退職後1ヶ月以内に済ませれば、無駄なく制度を活用できます。

よくある質問(FAQ)

公務員は本当に失業保険を1円ももらえないの?

はい。公務員は雇用保険に加入していないため、民間のような失業保険(基本手当)は受給できません。ただし、退職金が民間の失業保険相当額より少ない場合は、「失業者の退職手当」として差額が補填されます。

ハローワークに行くときは何を持っていけばいい?

職場からもらう「退職票」と「証明願」、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)、写真2枚、印鑑、銀行口座の通帳またはキャッシュカードが基本です。民間の場合と持ち物はほぼ同じですが、離職票の代わりに退職票を持っていく点が違います。

入庁して1年未満で辞めたらどうなる?

勤続期間が12ヶ月未満の場合、「失業者の退職手当」の受給条件を満たしません。退職金もごくわずかか、ほぼゼロになるため、十分な貯金がない状態での退職は非常にリスクが高くなります。

待期期間中にバイトしていい?

7日間の待期期間中は、原則としてアルバイトをしてはいけません。給付制限期間(1ヶ月)中のバイトについては、時間や収入の条件があるためハローワークに事前に相談してください。

懲戒免職で退職金がゼロでも生活できるの?

退職金は全額没収されますが、「失業者の退職手当」は受給可能です。民間基準の失業保険相当額が全額支給されるため、すぐに生活が破綻するわけではありません。ただし逮捕・勾留中は受給できないため、拘束期間が長い場合は厳しい状況になります。

公務員を辞めて個人事業主になりたい場合はどうなる?

「失業者の退職手当」は「就職する意思がある人」が対象です。開業届を出してしまうと「失業の状態」ではなくなるため、手当は受給できなくなります。個人事業を始めるタイミングと手当の受給期間を慎重に計画してください。

参考・出典

  • 総務省「地方公務員給与実態調査」
  • 厚生労働省「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令(給付制限の短縮)」
  • e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
  • e-Gov法令検索「地方公務員法」
  • ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」

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