ダブルワークをしている場合、雇用保険や失業保険の扱いがどうなるのか不安に感じる方は多いでしょう。片方の仕事を辞めたとき失業保険はもらえるのか、2つの会社で雇用保険に加入できるのか、加入期間は合算できるのかなど、具体的なケースによって判断が分かれます。
この記事では、ダブルワークと雇用保険に関するよくある疑問を、実際の検索されているケースをもとに解説します。
■目次
ダブルワークで雇用保険に加入する基本ルール
まず、雇用保険の加入要件を確認しておきましょう。
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
(2)1週間の所定労働時間が20時間以上である
この2つの条件を満たせば、アルバイトでもパートでも雇用保険に加入できます。
重要な原則:雇用保険の加入は1人につき1つまでです。被保険者番号も1つしか持てません。そのため、「2つの会社で同時に雇用保険に加入する」という形で加入することはできません。
2社で合わせて週20時間以上でも雇用保険には入れない
よくある誤解が「A社で週10時間、B社で週12時間働いているから、合計22時間で雇用保険に入れる」というものです。
雇用保険の加入要件は1社ごとに判断されるため、2社の労働時間を合算することはできません。あくまで1つの会社で週20時間以上働いている必要があります。
片方の会社を退職したとき失業保険はもらえるか
「A社とB社でダブルワークしていて、雇用保険に加入していたA社を退職した。失業保険を受けながらB社で働き続けても問題ないか」という質問は非常に多く寄せられます。
結論:申請すれば問題なく受給できる
結論として、失業保険の受給要件を満たして申請すれば、もう一方の仕事を続けながら受給できる場合があります。ただし、就業日・就業時間・収入を正確に申告することが絶対条件です。働き方によっては、その日の基本手当が不支給(後ろ倒し)になったり、収入額に応じて減額されたり、雇用保険の加入条件を満たす働き方になると「就職」扱いとなり受給自体が終了することがあります。
失業保険を受けるには、退職時に過去2年間で12ヶ月以上(月11日以上、または月80時間以上勤務)の雇用保険加入実績が必要です。会社都合の退職の場合は、過去1年間で6ヶ月以上です。
待機期間の7日間は絶対に働いてはいけない
失業保険の手続き後、必ず7日間の待機期間があります。これは本当に失業状態にあるかを確認するための期間です。
この7日間は、もう一方の仕事も含めて原則として働かないことが必要です。もし働いた場合、その日は待機期間としてカウントされず、待機が完成するのがその分遅れることになります(働いた事実は申告が必要です)。
ダブルワークを続ける予定の方は、待機期間中はもう一方の仕事も休むか、シフトを調整する必要があります。
給付制限期間中の働き方
自己都合で退職した場合、原則1ヶ月の給付制限期間があります(2025年4月改正により、従来の2ヶ月から1ヶ月に短縮されました ※5年間で2回まで)。
自己都合退職:手続き後7日間の待機期間 + 1ヶ月の給付制限
会社都合退職:手続き後7日間の待機期間のみ
この1ヶ月の給付制限期間中であれば、アルバイト等をすること自体は可能です。ただし、以下の点に注意が必要です。
- 働く場合でも、雇用保険の加入条件(週20時間以上かつ31日以上雇用見込み)を満たす働き方にならないよう、週20時間未満に抑えるのが無難
- 雇用保険の加入条件を満たす働き方をすると「就職」扱いとなり、失業保険(基本手当)の支給対象外となります(この場合、条件を満たせば再就職手当の審査対象となります)。
- 「就職」扱いになるか不安な場合は、事前にハローワークへ確認してから働き方を決める
給付制限後(受給開始後)の働き方と申告ルール
給付制限がなく7日間の待機後にすぐ支給が始まる場合、または給付制限期間が終わって受給が開始した後は、働いた内容を失業認定申告書に正確に記入する必要があります。
・1日4時間以上働いた場合:「○」を記入
・1日4時間未満働いた場合:「×」を記入
1日4時間以上働いた場合、原則としてその日の失業保険は支給されません。ただし、その分が消滅するわけではなく、受給期間の後ろにずれるだけです。
1日4時間未満の場合でも、得た収入の額によっては失業保険が減額される場合があります。
詳しくは失業給付期間中のアルバイトに関する記事 をご覧ください。
2つの会社で雇用保険の加入条件を満たす場合の選び方
「C社とD社でダブルワークしていて、どちらも週20時間以上働いている。どちらの会社で雇用保険に加入すべきか」という状況です。
給与が多い方に加入するのが原則
雇用保険は1人1つしか加入できないため、どちらか一方を選ぶ必要があります。基本的には主たる賃金を受けている(給与が高い)方の会社で加入します。
理由は、失業保険の給付額が退職前の給与をもとに計算されるためです。給与が高い会社で雇用保険に加入していた方が、万が一退職した際の給付額も高くなります。
両方の会社が加入手続きをしようとする場合
両方の会社が雇用保険の加入条件を満たす場合、会社側が知らずに両方とも加入手続きを進めてしまうケースがあります。しかし、システム上、被保険者番号は1つしか発行されないため、結果的にどちらか一方だけが有効になります。
トラブルを避けるため、もう一方の会社には「すでに雇用保険に加入している(加入手続き中を含む)」ことを必ず伝えましょう。
週40時間以上の勤務は労働基準法上の問題がある
2つの会社でそれぞれ週20時間以上働くということは、合計で週40時間以上働くことになります。労働基準法では、1週間40時間を超える労働には割増賃金の支払いが必要です。
そのため、ダブルワークをしていることを会社に伝えていない場合、後々トラブルになる可能性があります。可能な限り、勤務先には状況を伝えておくことをおすすめします。
雇用保険を別の会社に切り替えることはできるか
「E社で雇用保険に加入していたが、F社の方が勤務時間が長くなったため、F社に雇用保険を移したい。E社での加入期間は引き継げるか」というケースです。
切り替えは可能で、加入期間も合算できる
雇用保険の切り替えは可能です。手順は以下の通りです。
- まずE社で雇用保険の資格喪失手続きを行う
- 次にF社で雇用保険の資格取得手続きを行う
E社で加入していた期間もF社に引き継げます。ただし、重要な条件があります。
1年以内に次の会社で加入しないと期間がリセットされる
E社で雇用保険を喪失(離職)した日の翌日から、F社で加入手続きを行うまでの期間が1年を超えると、それまでの加入期間は合算できなくなります。
1年を超えてしまうと、加入期間がリセットされ、ゼロからのスタートになってしまいます。切り替えを検討している場合は、できるだけ早く手続きを進めましょう。
実際に失業保険を受給した場合はリセットされる
よくある誤解として、「一度雇用保険を喪失したら加入期間がリセットされる」というものがあります。
正確には、実際に失業保険(基本手当など)を受給した場合にリセットされるのであって、単に雇用保険を喪失しただけではリセットされません。受給せずに1年以内に次の会社で雇用保険に加入すれば、期間は引き継がれます。
離職票は2社分もらえるのか
ダブルワークをしていて片方を退職した場合、退職した会社から離職票が発行されます。
雇用保険に加入していなかった会社からは、離職票は発行されません(雇用保険に加入していないため、そもそも離職票を発行する義務がありません)。
雇用保険に加入していた会社を退職した場合は、通常通り離職票が発行されます。もう一方の会社で働き続ける場合でも、退職した会社からは離職票を受け取れます。
再就職手当との関係
失業保険を受給中にダブルワークをしていて、そのうちの1社で正社員として就職が決まった場合、再就職手当の対象になる可能性があります。
再就職手当は、失業保険の支給残日数が一定以上残っている状態で再就職した場合に支給される一時金です。ダブルワーク先での就職でも、条件を満たせば再就職手当を受け取れる可能性があります。
※ただし、離職前から継続して雇用されている事業所で労働時間を増やして正社員になる場合などは、「再就職」とは認められず手当の対象外となるケースが多いため、必ず事前にハローワークへ確認してください。
再就職手当には「待期期間(7日間)経過後の就職」「1年以上雇用されることが確実」などの条件があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 両方の会社で週20時間未満だが、合計すると週20時間を超える。雇用保険に入れないか?
A. 入れません。雇用保険の加入要件は1社ごとに判断されるため、複数社の労働時間を合算することはできません。あくまで1つの会社で週20時間以上働いている必要があります。
Q2. 片方を会社都合で退職した場合、失業保険はすぐもらえるか?
A. 会社都合退職の場合、7日間の待機期間のみで給付制限はありません。ただし、待機期間中は原則として働いてはいけないため、もう一方の仕事も7日間は休む(あるいは申告して待機期間を先送りする)必要があります。
Q3. 雇用保険に加入している会社を退職せず、加入していない会社だけ退職した場合、失業保険はもらえるか?
A. もらえません。失業保険は雇用保険に加入していた会社を退職した場合に受給できる制度です。雇用保険に加入していない会社を退職しても、失業保険の対象にはなりません。
Q4. 給付制限期間の1ヶ月間にフルタイムで働いたら、失業保険はもらえなくなるか?
A. 給付制限期間中に雇用保険加入条件を満たすフルタイム勤務などを開始すると「就職」とみなされ、その時点で失業保険(基本手当)の受給資格はなくなります(支給終了)。その場合、条件を満たせば「再就職手当」の支給対象になる可能性があります。
なお、「雇用保険加入条件を満たすフルタイム勤務」とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある働き方を指します。単発バイトや短時間のアルバイトであれば、給付制限期間中でも雇用保険に加入しない範囲で自由に働けます。
Q5. ダブルワーク先の会社が雇用保険に加入させてくれない。違法ではないか?
A. すでに別の会社で雇用保険に加入している場合、2つ目の会社で加入することはできません(1人1つまでのため)。もし、どちらの会社でも雇用保険に加入しておらず、週20時間以上働いている場合は、会社側に加入義務があります。その場合は、ハローワークや労働基準監督署に相談しましょう。
Q6. 2社で雇用保険に加入していたことが後から発覚した。どうなるか?
A. システム上、被保険者番号は1つしか発行されないため、実際には片方しか有効になっていません。ハローワークで確認し、どちらの会社で加入するか整理する必要があります。二重に保険料を支払っていた場合、返還される可能性もあります。
Q7. 雇用保険の切り替えはいつまでにすればいいか?
A. 前の会社で雇用保険を喪失(離職)した日の翌日から1年以内に次の会社で加入手続きを行えば、加入期間を合算できます。1年を超えると加入期間がリセットされるため、切り替えを考えている場合は早めに手続きしましょう。