教育訓練と職業訓練は名前が似ていますが、まったく別の制度です。この記事では、両者の違いから、教育訓練給付金の受給条件、対象講座、申請手続きまで詳しく解説します。
「無職でも受けられるの?」「転職したら雇用保険の加入期間はリセットされる?」といった疑問にも答えていきます。
■目次
教育訓練と職業訓練の違い【まず結論】
教育訓練と職業訓練の最大の違いは、「誰が対象か」と「費用負担」です。
教育訓練給付制度は、在職者でも離職者でも利用できます。ただし、受講料は自己負担が必要で、修了後に費用の20%~最大80%が給付金として戻ってくる仕組みです。約14,000講座が対象で、オンラインや夜間・土日に受講できる講座も多く、働きながらスキルアップしたい人に適しています。
一方、職業訓練(公共職業訓練)は、離職者(求職者)が対象です。受講料は無料で、条件を満たせば職業訓練受講給付金(月10万円)が支給されるケースもあります。ハローワーク主体で行われる再就職支援制度です。
【結局どっちを見ればいい?】
- 在職中でスキルアップしたい → 教育訓練(受講料は自己負担、修了後に一部給付)
- 失業中で再就職を目指す → 職業訓練(受講料無料。条件次第で生活支援の給付が出ることも)
- 「教育訓練は無職でもOK?」 → OK。ただし離職から受講開始までの期限がある(後述)
【簡単な比較表】
| 項目 | 教育訓練給付制度 | 職業訓練 |
|---|---|---|
| 対象者 | 在職者・離職者 | 離職者のみ |
| 費用 | 自己負担(後で一部給付) | 無料 |
| 給付率 | 20%~最大80% | - |
| 実施主体 | 民間教育機関 | ハローワーク・公的機関 |
| 講座数 | 約14,000講座 | 限定的 |
つまり、今働いている人が自分でスキルアップしたいなら「教育訓練」、失業中で再就職を目指すなら「職業訓練」と覚えておくと分かりやすいです。
教育訓練給付金の3つのタイプと給付率の違い
教育訓練給付金には、学ぶ講座の内容や目的に応じて3つのタイプがあります。それぞれ給付率と上限額が異なります。
一般教育訓練給付金
簿記、TOEIC、MOS、CAD、日商簿記など、基本的なビジネススキルや資格取得を目指す講座が対象です。
- 給付率:受講費用の20%
- 上限額:10万円
- 最低額:4,000円を超えない場合は支給なし
計算例:パソコン教室(入学金1万円+受講料12万円=合計13万円)
13万円 × 20% = 2万6,000円が給付されます。
特定一般教育訓練給付金
大型免許、介護職員初任者研修、税理士、社労士など、速やかな再就職・早期のキャリア形成に役立つ資格が対象です。
- 給付率:受講費用の40%(最大50%)
- 上限額:20万円(最大25万円)
- 追加給付:資格取得し就職した場合、10%加算
- 最低額:4,000円を超えない場合は支給なし
- 受講前に「訓練前キャリアコンサルティング」の受講が必須
計算例:大型免許取得(入学金+教習料25万円)
25万円 × 40% = 10万円が給付されます。
※資格を取得し就職等の条件を満たせば、さらに10%(2万5,000円)が追加支給されます。
専門実践教育訓練給付金
看護師、保育士、美容師、調理師など、専門的・実践的な教育訓練が対象です。給付率が最も高く、最長4年間の長期講座にも対応しています。
- 給付率:受講費用の50%(最大80%)
- 上限額:年間40万円(最大64万円)× 最長4年
- 追加給付①:資格取得後1年以内に雇用された場合、20%加算
- 追加給付②:受講後の賃金が受講前より5%以上上昇した場合、さらに10%加算(2024年10月新設)
- 受講前に「訓練前キャリアコンサルティング」の受講が必須
なお、専門実践教育訓練は(離職者で一定条件を満たす場合)生活費の補助として「教育訓練支援給付金」が関係してくることがあります。失業保険との関係も含め、最終的な可否はハローワークの確認が確実です(FAQでも補足します)。
専門実践教育訓練については、別記事でより詳しく解説しています。詳しくは以下をご覧ください。
受給条件と雇用保険加入期間の計算ルール
教育訓練給付金を受け取るには、雇用保険の被保険者期間が一定期間必要です。ここでは、受給条件と転職時の加入期間の計算方法を詳しく説明します。
基本的な受給条件
教育訓練給付金を受給するには、以下の条件を満たす必要があります。
【受給資格の条件】
- 初回受給の場合:雇用保険の被保険者期間が通算1年以上
- 2回目以降の場合:前回の給付金受給から通算3年以上の被保険者期間が必要
つまり、初めて教育訓練給付金を利用する人は、雇用保険に1年以上加入していればOKです。2回目以降は、前回受給してから3年以上空ける必要があります。
在職者と離職者の違い
在職中の人は、現在雇用保険に加入していれば、受講開始日時点で条件を満たしていれば受給できます。
離職者(無職の人)は、以下の条件を満たす必要があります。
- 離職日の翌日から受講開始日まで1年以内であること
- 退職後1年を超えてしまうと、原則として受給資格を失います
ただし、妊娠・出産・育児・疾病・負傷などで受講できない場合は、所定の手続きをすれば受講開始期限を最大20年まで延長できます。該当する場合は、早めにハローワークで相談してください。
転職した場合の雇用保険期間の計算【重要】
転職経験がある人にとって重要なのが、「雇用保険の加入期間は合算できるのか?」という点です。
結論から言うと、前職と現職の間が1年以内であれば合算可能です。逆に、無職期間が1年を超えると、それ以前の加入期間はリセットされます。
【合算できる例】
前職で5年勤務 → すぐに転職 → 現職で半年勤務
→ 雇用保険加入期間は5年6ヶ月として計算されます。
【リセットされる例】
前職で5年勤務 → 1年2ヶ月のブランク → 現職で半年勤務
→ 前職の5年間はカウントされず、加入期間は半年のみとなります。
転職活動が長引いた場合や、フリーランス期間があった場合は注意が必要です。ただし、「1年以内」の判定は、離職日の翌日から新しい会社の雇用保険加入日までの期間で判断されます。
失業保険を受給すると雇用保険期間はリセットされる?
よくある誤解として、「失業保険(雇用保険の基本手当)を受給すると、雇用保険の加入期間がリセットされる」というものがあります。
これは半分正解で、半分不正解です。正確には次のとおりです。
- 失業保険を1日でも受給した場合:その時点で教育訓練給付のための雇用保険加入期間がリセットされます
- 失業保険の受給資格決定を受けただけで、実際には受給していない場合:リセットされません
つまり、ハローワークで受給資格の手続きをしただけなら問題ありませんが、実際に失業保険の給付を1日分でも受け取ると、それまでの雇用保険加入期間はゼロに戻ります。
ここで言う「リセット」は、教育訓練給付金の受給要件(被保険者期間)の計算上の話です。年金や健康保険など、他制度が一律にリセットされるという意味ではありません。
転職活動中に「失業保険を受け取るか、教育訓練給付金の受給資格を温存するか」は、慎重に判断する必要があります。
育児休業給付金を受給した場合は?
育児休業給付金を受給しても、雇用保険の加入期間はリセットされません。育児休業中も雇用保険の被保険者であり続けるためです。
ただし、育児休業中は賃金の支払いがなく、失業保険(基本手当)の算定基礎期間としてカウントされない場合がありますが、教育訓練給付の被保険者期間としては加入期間に含まれます。
対象講座と給付額の詳細
教育訓練給付金の対象となる講座は、厚生労働大臣が指定した約14,000講座です。すべて民間の教育機関が実施しており、オンラインや夜間・土日開講の講座も多くあります。
最新の対象講座は、厚生労働省の公式サイトで検索できます。
一般教育訓練の主な対象講座
一般教育訓練は、受講費用の20%(上限10万円)が給付されます。
■情報関係の資格や講座
- WEBクリエイター能力認定試験
- Microsoft Office Specialist (MOS)
- CAD利用技術者、建築CAD検定
- Photoshopクリエイター能力認定検定
- Illustratorクリエイター能力認定試験
- VBAエキスパート
- Oracle認定資格・LPIC・ITパスポート・基本情報技術者
■事務関係の資格や講座
- 実用英語技能検定
- TOEIC、TOEFL
- 日本語教育能力検定試験
- 建設業経理検定
- 簿記検定試験(日商簿記)
- インテリアコーディネーター
■技術系の資格や講座
- 土木施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 建築施工管理技術検定
特定一般教育訓練の主な対象講座
特定一般教育訓練は、受講費用の40%(条件を満たせば最大50%)が給付されます。
■輸送・機械運転関係の資格や講座
- 大型自動車第一種・第二種免許
- 中型自動車第一種・第二種免許
- 大型特殊自動車免許
- 準中型自動車第一種免許
- 普通自動車第二種免許、けん引免許
- 玉掛け・フォークリフト運転・高所作業車運転
- 小型移動式クレーン運転・床上操作式クレーン運転
- 車両系建設機械運転技能講習
- 移動式クレーン運転士免許
- クレーン・デリック運転士免許
■医療・社会福祉・保健衛生関係の資格や講座
- 介護職員初任者研修
- 介護支援専門員実務研修等
- 特定行為研修、喀痰吸引等研修
- 福祉用具専門相談員
- 登録販売者試験
■その他の資格や講座
- 宅地建物取引士資格試験
- 自動車整備士
- 電気主任技術者試験
- 社会保険労務士、通関士
- 税理士・行政書士・司法書士
- ファイナンシャルプランニング技能検定
専門実践教育訓練の主な対象講座
専門実践教育訓練は、受講費用の50%~最大80%(上限年間64万円を最長4年)が給付されます。
■医療・社会福祉・保健衛生関係の資格や講座
- 看護師、准看護師、助産師、保健師
- 介護福祉士(実務者養成研修含む)
- 美容師、理容師、保育士、栄養士
- 歯科衛生士、歯科技工士、社会福祉士
- 柔道整復師、精神保健福祉士
- はり師、あん摩マッサージ指圧師
- 臨床工学技士、言語聴覚士
- 理学療法士、作業療法士、視能訓練士
- 調理師、製菓衛生師
- キャリアコンサルタント
教育訓練給付金の申請手続きの流れ
教育訓練給付金の申請は、一般教育訓練と特定一般教育訓練・専門実践教育訓練で手続きが異なります。ここでは、それぞれの流れを説明します。
一般教育訓練の申請手続き
一般教育訓練の場合、受講修了後に必要書類を持参してハローワークに申請します。本人がまず受講料を全額支払い、修了後にハローワークに給付金を請求する流れです。
申請期限:受講修了日の翌日から1ヶ月以内
申請場所:本人の住所を管轄するハローワーク(やむを得ない場合を除き郵送不可 ※電子申請も可)
必要書類:
| 必要な書類 | 備考 |
|---|---|
| 1. 教育訓練給付金支給申請書 | 教育訓練の受講修了後、教育訓練施設が用紙を配布します。 |
| 2. 教育訓練修了証明書 | 教育訓練の受講修了後、教育訓練施設から発行されます。 |
| 3. 領収書 | 教育訓練施設より本人が支払った教育訓練経費について発行します。クレジットカード等による支払いの場合は、クレジット契約証明書(又は必要事項が付記されたクレジット伝票)が発行されます。 |
| 4. キャリアコンサルティング費用を申請する場合 | キャリアコンサルティングの費用に係る領収書、キャリアコンサルティングの記録、キャリアコンサルティング実施証明書が必要です。 |
| 5. 本人・住所確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証など。マイナンバーカードがあれば1枚で済みます。 |
| 6. 個人番号(マイナンバー)確認書類 | マイナンバーカード、通知カードなど。 |
| 7. 身元(実在)確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証など。 |
| 8. 返還金明細書 | 教育訓練経費の一部が還付された場合に必要です。 |
| 9. 払渡希望金融機関の通帳又はキャッシュカード | |
| 10. 教育訓練経費等確認書 |
特定一般教育訓練・専門実践教育訓練の申請手続き
特定一般教育訓練と専門実践教育訓練の場合、受講前に必ず「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。これを受けていないと、給付金は支給されません。
■受講前に必要な提出書類
※「ジョブ・カード」は、職務経歴や学習歴などを整理するキャリアの棚卸しシートです(キャリアコンサルティングで作成・交付されます)。
| 必要な書類 | 備考 |
|---|---|
| 1. 教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票 | ハローワークなどで配布 |
| 2. 上記のジョブ・カード | 訓練前キャリア・コンサルティングでの発行から1年以内のもの |
| 3. 本人・住所確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証など |
| 4. 個人番号(マイナンバー)確認書類 | マイナンバーカードなど |
| 5. 身元(実在)確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証など |
| 6. 払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード | |
| 7. 専門実践教育訓練給付および特定一般教育訓練給付再受給時報告 | 過去に同給付を受給したことがある場合に必要となります。 |
■受講後に必要な提出書類
申請期限:受講修了日の翌日から1ヶ月以内
申請場所:本人の住所を管轄するハローワーク(やむを得ない場合を除き郵送不可 ※電子申請も可)
| 必要な書類 | 備考 |
|---|---|
| 1. 受給資格確認通知書 | 受給資格確認時にハローワークでお渡しします。 |
| 2. 教育訓練給付金支給申請書 | 教育訓練の受講修了後、教育訓練施設が用紙を配布します。 |
| 3. 教育訓練修了証明書 | 教育訓練の受講修了後、教育訓練施設から発行されます。 |
| 4. 特定一般教育訓練実施者が発行する教育訓練経費に関する領収書 | 教育訓練施設より本人が支払った教育訓練経費について発行します。 |
| 5. 本人・住所確認書類 | 受講前の提出書類と同じ |
| 6. 個人番号(マイナンバー)確認書類 | 受講前の提出書類と同じ |
| 7. 特定一般教育訓練実施者が発行する返還金明細書 | 一部還付された場合に必要です。 |
| 8. 教育訓練経費等確認書 | |
| 9. 特定一般教育訓練給付受給時報告書 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 無職(離職者)でも教育訓練給付金は受けられますか?
A. はい、受けられます。ただし、離職日の翌日から受講開始日まで1年以内である必要があります。1年を超えると原則として受給資格を失いますが、妊娠・出産・育児・疾病などの理由がある場合は、申請により適用対象期間を最大20年まで延長できます。
Q2. 転職したら雇用保険の加入期間はリセットされますか?
A. 前職と現職の間が1年以内であれば、雇用保険の加入期間は合算できます。無職期間が1年を超えると、それ以前の加入期間はリセットされます。
Q3. 失業保険を受給すると教育訓練給付金は受けられなくなりますか?
A. 失業保険(雇用保険の基本手当)を1日でも受給すると、教育訓練給付のための雇用保険加入期間がリセットされます。ただし、受給資格の決定を受けただけで、実際に受給していない場合はリセットされません。
Q4. 教育訓練給付金と失業保険は併用できますか?
A. 一般教育訓練・特定一般教育訓練の場合、併用はできません。ただし、専門実践教育訓練の場合、45歳未満の離職者など条件を満たせば「教育訓練支援給付金」として失業保険に準じた給付(基本手当日額の60%または80% ※)を受けられる場合があります。本制度は2027年3月31日までの時限措置です。
※2025年4月1日以降に受講開始した場合は60%に引き下げられています。
Q5. 働きながら(在職中)でも教育訓練給付金は受けられますか?
A. はい、受けられます。教育訓練給付制度は、在職者でも離職者でも利用可能です。約14,000講座の中には、オンラインや夜間・土日に受講できる講座も多くあります。
Q6. 特定一般教育訓練と専門実践教育訓練の違いは何ですか?
A. 特定一般教育訓練は給付率40%(最大50%)で、大型免許や介護職員初任者研修など比較的短期の資格取得が対象です。専門実践教育訓練は給付率50%~最大80%(上限年間64万円×最長4年)で、看護師や保育士など専門的な長期講座が対象です。
Q7. 教育訓練給付金は何回でも受けられますか?
A. 初回は雇用保険加入期間1年以上で受給できますが、2回目以降は前回受給から3年以上の被保険者期間が必要です。何回でも受給可能ですが、間隔を空ける必要があります。
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