退職時に離職票をもらおうとしたら「うちは雇用保険に入っていない」と言われた、給与明細を見返したら雇用保険料が引かれていなかった——こんな状況に直面すると、失業保険を受け取れないのではないかと不安になりますよね。
結論から言うと、会社が雇用保険に未加入でも、失業保険を受け取れる可能性があります。本来加入すべき条件を満たしているのに未加入だった場合、適切な手続きを踏めば、遡って加入手続き(遡及加入)が行われることがあります。
この記事では、会社が雇用保険に加入していなかった場合の対処法を、「給与から引かれていなかったケース」と「引かれていたのに未加入だったケース」の2つに分けて、具体的な手順とともに解説します。
泣き寝入りする必要はありません。あなたが受け取るべき権利をしっかり確保するための方法をお伝えします。
■目次
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そもそも雇用保険の加入義務とは
まず、どんな会社が雇用保険に加入しなければならないのかを確認しましょう。
雇用保険の適用条件
事業主は、以下の要件に該当する労働者を雇用した場合、必ず雇用保険に加入させる義務があります。
雇用保険の適用条件
- 31日以上の雇用見込があること
- 1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
この条件を満たしていれば、正社員はもちろん、パート・アルバイトであっても雇用保険の加入対象です。
また、雇用保険の適用は法人・個人を問いません。個人事業主であっても、労働者を一人でも雇用し上記適用範囲であれば、加入することを義務づけられています。
雇用保険料の負担割合
雇用保険に加入すると、事業主と労働者で雇用保険料を分担して支払います。労働者が負担する保険料は給与から天引きされるのが一般的です。
雇用保険料率は年度によって変動しますが、2025年度(令和7年度)の保険料率は以下の通りです:
| 事業内容 | 労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 6/1000 | 9.5/1000 | 15.5/1000 |
| 農林水産 清酒製造の事業 |
7/1000 | 10.5/1000 | 17.5/1000 |
| 建設の事業 | 7/1000 | 11.5/1000 | 18.5/1000 |
たとえば、月の総支給額が30万円で営業職(一般事業)の場合:
労働者負担:30万円 × 6/1000 = 1,800円
事業主負担:30万円 × 9.5/1000 = 2,850円
労働者は毎月約1,800円を負担することになります。
会社が雇用保険に未加入だった場合の2つのケース
会社が雇用保険に加入していなかった場合、大きく分けて2つのケースがあります。それぞれで対応方法が異なります。
まず最初に、手元の給与明細(または源泉徴収票)で「雇用保険料」が控除されているかどうかを確認してください。ここが分岐点になります。
ケース1:給与から雇用保険料が引かれていなかった
給与明細を確認して、雇用保険料が一度も引かれていなかった場合です。会社がそもそも雇用保険に加入する手続きをしていなかったケースです。
この場合、遡及加入できる期間は原則として最大2年間です。
対応方法:
- 2年分の雇用保険料を事業主側と労働者側が遡って支払う
- 10年間勤務していても、遡及できるのは原則2年間のみ
- 2年間分に相当する被保険者期間としてカウントされる
つまり、10年間働いていたとしても、失業保険の給付日数は2年間分の被保険者期間に基づいて計算されます。
2年間分でどのくらいの失業保険がもらえるか
被保険者期間2年(区分:1年以上5年未満)の場合の給付日数:
- 自己都合退職:90日
- 会社都合退職(45歳未満):90日
- 会社都合退職(45歳以上60歳未満):180日
ケース2:給与から引かれていたのに未加入だった(悪質)
給与明細や源泉徴収票で雇用保険料が天引きされていることが明らかなのに、会社が実際には雇用保険の加入手続きを行っていなかった場合です。非常に悪質なケースです。
この場合、2年を超えて遡及加入できる可能性があります。
対応方法:
- 雇用保険料が給与明細・源泉徴収票等で天引きされていることを証明できる書類が必要
- 2010年(平成22年)10月1日以降に制度化された救済措置
- 原則として、雇用保険料を天引きしていた期間について遡及加入が認められる可能性がある
ただし、以下の条件があります:
- 在職中の方、または2010年10月1日以降に離職した方が対象
- 給与明細や源泉徴収票などで雇用保険料の天引きが証明できること
重要なポイント
既に退職している場合でも、2010年10月1日以降の離職であれば、給与からの天引き実績を証明できれば、2年を超えて遡及加入できる可能性があります。証明できなければ原則2年間のみの遡及となる可能性があります。
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実際の手続き方法|ハローワークでの対応
会社が雇用保険に未加入だったことが判明した場合、以下の手順で対応します。
STEP1:証拠書類を準備する
まず、以下の書類を準備してください。
- 給与明細(できるだけ全期間分)
- 源泉徴収票
- 雇用契約書(または労働条件通知書)
- タイムカード・出勤簿のコピー(可能であれば)
特に、給与明細で雇用保険料が天引きされていたことを証明できるかどうかが重要です。これによって遡及できる期間が大きく変わります。
STEP2:管轄のハローワークに相談する
準備した書類を持って、会社の所在地を管轄するハローワークに相談に行きます。(あなたの住所地ではなく、会社の所在地です)
どこに相談すべきか迷う場合は、まず最寄りのハローワークに電話で確認すると、担当窓口を案内してもらえます。
ハローワークでは以下を確認します:
- 雇用保険の加入要件を満たしているか
- どの期間まで遡及できるか
- 必要な手続きと会社への対応
STEP3:ハローワークから会社へ指導
ハローワークが会社に対して、雇用保険加入手続き(確認請求の対応を含む)を行うよう指導します。
会社側が手続きを行えば、遡及して雇用保険に加入でき、離職票が発行されます。
会社が支払いを拒否した場合の対応
ハローワークからの指導にも関わらず、会社が雇用保険料の支払いを拒否するケースがあります。
会社側が支払いたがらない理由
会社側が支払いを渋る背景には、以下のような事情があります:
- あなた一人だけでなく、他の従業員の分も遡って支払う必要が出てくる
- 過去2年分(場合によってはそれ以上)の保険料をまとめて支払う必要がある
- 金額が高額になる場合がある
雇用保険未加入の罰則
事業主には雇用保険に加入する義務があり、加入しなかった場合は罰則規定があります。
雇用保険法第83条第1号
- 第7条(被保険者の届出)の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合:6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金
ただし、罰則の有無や実際の取り扱いは事案によって異なります。ここでは「未加入でも手続きで解決できる可能性がある」点に集中し、まずはハローワークで手続きを進めることが重要です。
それでも支払わない場合の対処法
個人でできる最初の対応は、ハローワークで「確認請求」を行うことです。確認請求とは、会社が加入手続きをしてくれない場合に、本人が申し立てて「加入要件を満たしていたか」「いつから働いていたか」などをハローワークに確認してもらう手続きです。
確認請求により、ハローワークが事実関係を確認し、被保険者期間が決定される場合があります。
それでも解決しない場合は、以下の選択肢があります:
- 労働基準監督署への相談
- 弁護士への相談
- 損害賠償請求訴訟(通常であればもらえただろう失業給付額を請求)
ただし、訴訟には費用がかかります。訴訟費用と弁護士費用を考慮すると、得られる金額が減る可能性もありますので、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
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パート・アルバイトの場合も同じ対応でOK
「パート 雇用保険 引かれてない」というクエリが多いことから分かるように、パート・アルバイトの方で同じ悩みを持つ方が多くいます。
パート・アルバイトであっても、加入要件(31日以上の雇用見込・週20時間以上)を満たしていれば、正社員と同じ対応が可能です。
- 給与から引かれていなかった → 原則2年間遡及可能
- 給与から引かれていたのに未加入 → 2年を超えて遡及可能(条件付き)
パートだから諦める必要は全くありません。ハローワークに相談してください。
在職中に気づいた場合の対応
まだ会社に在職中に雇用保険未加入に気づいた場合は、退職前に対応することを強くおすすめします。
在職中であれば:
- 会社との交渉がしやすい
- 天引き実績がある場合、遡及加入の見通しが立てやすい
- 証拠書類の収集がしやすい
退職してからでも対応は可能ですが、会社側の協力を得にくくなる可能性があります。気づいたらすぐにハローワークに相談しましょう。
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まとめ:会社の未加入は泣き寝入りする必要なし
会社が雇用保険に未加入だった場合の重要ポイントをまとめます。
- 加入要件を満たしていれば、遡及加入が可能
- ケース1(給与から引かれていない):原則2年間遡及可能
- ケース2(引かれていたのに未加入):2年を超える遡及が可能な場合あり(条件付き)
- パート・アルバイトも対象
- 最初の相談先はハローワーク
- 証拠書類(給与明細等)の保管が重要
会社が雇用保険に加入していなかったことが判明しても、諦める必要はありません。本来あなたが受け取るべき権利は、適切な手続きを踏めば確保できる可能性があります。
まずは証拠書類を準備して、会社の所在地を管轄するハローワークに相談に行きましょう。ハローワークの職員が具体的な手続きを案内してくれます。
一人で悩まず、専門機関に相談することが解決への第一歩です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 会社が雇用保険に入っていなかった場合、失業保険は受け取れないのですか?
A. いいえ、受け取れる可能性があります。会社が本来加入すべき労働者を未加入にしていた場合、遡及して加入手続きを行うことができます。給与から雇用保険料が引かれていなかった場合は原則2年間、引かれていたのに未加入だった場合は2年を超えて遡及できる可能性があります。
Q2. 給与明細を捨ててしまった場合はどうすればいいですか?
A. まずはハローワークに相談してください。給与明細がなくても、雇用契約書、源泉徴収票、タイムカードなどで雇用実績を証明できれば対応できる場合があります。ただし、給与から雇用保険料が天引きされていたことを証明できない場合は、遡及期間が原則2年間に限定される可能性があります。
Q3. 10年働いたのに2年分しか遡及できないのは不公平では?
A. 確かに不公平に感じるかもしれませんが、給与から雇用保険料が引かれていなかった場合の遡及期間は原則2年間とされます。ただし、給与から雇用保険料が天引きされていたことを証明できる場合は、2年を超えて遡及できる可能性があります。給与明細や源泉徴収票で天引き実績を確認してください。
Q4. 会社が倒産してしまった場合はどうなりますか?
A. 会社が倒産しても、ハローワークを通じて遡及加入の手続きは可能です。ただし、会社が存在しない場合、保険料の徴収や手続きが複雑になる可能性があります。できるだけ早くハローワークに相談してください。
Q5. パート・アルバイトでも同じように対応できますか?
A. はい、雇用保険の加入要件(31日以上の雇用見込・週20時間以上の勤務)を満たしていれば、正社員と同じように対応できます。パート・アルバイトだからといって諦める必要はありません。
Q6. 会社が支払いを拒否した場合、自分で保険料を全額払えば失業保険を受け取れますか?
A. いいえ、労働者が全額を負担することはできません。雇用保険料は事業主と労働者が決められた割合で負担することが法律で定められています。会社が支払いを拒否する場合は、ハローワークで「確認請求」を行うのが有効です。
Q7. 自分が加入要件を満たしているか確認する方法は?
A. 以下の2つの条件を満たしているか確認してください:(1) 31日以上雇用される見込みがあるか、(2) 1週間の所定労働時間が20時間以上か。雇用契約書や勤務実績で確認できます。判断が難しい場合は、ハローワークに相談すれば教えてもらえます。