雇用保険(失業保険)の役立話

退職前に残業すると失業保険は増える?計算方法と注意点

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退職前に残業をすると、失業保険(雇用保険の基本手当)の給付額が増えることをご存知ですか?失業保険の給付額は退職前6ヶ月の給与で決まるため、残業代が多ければ多いほど、給付額も増える仕組みになっています。

この記事では、退職前の残業が失業保険にどう影響するのか、計算方法、注意点、そして知っておくべきポイントを詳しく解説します。

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退職前の残業で失業保険が増える仕組み

失業保険の給付額は、退職前6ヶ月間の給与総額をもとに計算されます。この給与総額には、基本給だけでなく実際に支払われた残業代も含まれます

基本となる計算式

■賃金日額の計算式:退職前6ヶ月の給与総額 ÷ 180日

この計算で出た「賃金日額」をもとに、失業保険の基本手当日額が決まります。賃金日額が高ければ高いほど、1日あたりにもらえる失業保険の額が増えるということです。

※病気欠勤などで賃金支払基礎日数が11日未満の月がある場合は、その月を除外して計算することがあります。

具体例で見る給付額の違い

わかりやすく具体例で見てみましょう。

【ケース1】残業がほとんどない場合

  • 基本給:月25万円
  • 残業代:月1万円
  • 6ヶ月の給与総額:156万円(26万円×6ヶ月)
  • 賃金日額:8,667円(156万円÷180日)

【ケース2】退職前に残業を増やした場合

  • 基本給:月25万円
  • 残業代:月5万円
  • 6ヶ月の給与総額:180万円(30万円×6ヶ月)
  • 賃金日額:10,000円(180万円÷180日)

この例では、残業代を月4万円増やすことで、賃金日額が約1,333円アップします。これにより、実際に受け取る1日あたりの失業保険(基本手当日額)も増額されます。

※実際の基本手当日額は、賃金日額に給付率(約50〜80%)をかけた額になります。賃金日額が高くなると給付率が下がる調整が入るため、残業代を増やした分がそのまま給付額に反映されるわけではありません

2023年4月改正:中小企業の残業代割増率が引き上げ

退職前の残業について知る上で、押さえておきたい制度変更があります。2023年4月1日より、中小企業でも月60時間を超える残業の割増率が50%に引き上げられました

※厚生労働省より

割増率の変更内容

  • 月60時間まで:25%の割増(変更なし)
  • 月60時間超:25%→50%に引き上げ

例えば、月80時間残業をした場合、60時間分は25%の割増、60時間を超える20時間分は50%の割増賃金になります。

深夜労働・休日労働との組み合わせ

※厚生労働省より

深夜労働(22時〜5時)の場合、さらに割増率が上乗せされます。

  • 月60時間以内の深夜残業:50%割増(時間外25% + 深夜25%)
  • 月60時間超の深夜残業:75%割増(時間外50% + 深夜25%)

つまり、退職前に月60時間を超える残業や深夜残業をすれば、通常よりも多くの残業代を受け取れる可能性があり、その結果として失業保険の給付額にも影響します。

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残業代が失業保険に反映されないケース

ただし、すべての残業代が失業保険の計算に反映されるわけではありません。以下のケースでは注意が必要です。

1. みなし残業(固定残業代)の場合

給与に「みなし残業代」として一定額が含まれている場合、その金額自体は給与総額に含まれます。しかし、みなし残業の範囲内で残業時間を増やしても支給額が増えない場合は、退職前に多く残業しても給付額は増えません。

2. 管理職で残業代が出ない場合

労働基準法上の「管理監督者」として扱われ、残業代が支給されない場合は、残業をしても給与は増えず、失業保険の給付額にも影響しません。

3. 残業代が未払いの場合

残業をしても会社が残業代を支払わない場合、給与総額に含まれないため、失業保険の給付額には反映されません。ただし、未払い残業代は退職後に請求できます

4. 退職前6ヶ月より前の残業

失業保険の計算対象は退職前6ヶ月間の給与です。それより前にどれだけ残業しても、給付額の計算には入りません。

退職前の残業で注意すべきポイント

過度な残業は健康を害するリスクがある

失業保険の給付額を増やすために無理な残業をすることは、健康を害するリスクがあります。月80時間を超える残業は「過労死ライン」とされており、体調を崩してしまっては元も子もありません。

給付額を増やすことも大切ですが、健康を第一に考えた働き方を心がけてください。

会社に残業を拒否されるケースもある

退職が決まっている場合、会社側が残業を制限したり、早期退職を促したりするケースもあります。引き継ぎの都合などで、思うように残業ができない可能性も考慮しておきましょう。

賃金日額には上限がある

失業保険の賃金日額には上限額が設定されています(年齢によって異なる)。そのため、どれだけ残業代を増やしても、給付額が青天井に増えるわけではありません。上限額は毎年8月1日に改定されます。

【参考:賃金日額の上限額(2025年8月改定値)】

  • 29歳以下:14,510円
  • 30歳〜44歳:16,110円
  • 45歳〜59歳:17,740円
  • 60歳〜64歳:16,940円

※上記を超える給与をもらっていても、計算上はこの上限額で頭打ちになります。

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残業以外で失業保険の給付額を増やす方法

残業以外にも、失業保険の給付額に影響する要素があります。

各種手当を確認する

失業保険の計算に含まれるのは、残業代だけではありません。以下の手当も給与総額に含まれます。

  • 通勤手当(3ヶ月以内の定期代は除く ※6ヶ月定期等は1ヶ月分に換算して算入)
  • 住宅手当
  • 家族手当
  • 役職手当

これらの手当がある場合は、退職前6ヶ月の間にしっかりと受け取っておくことが大切です。

賞与(ボーナス)は含まれない

注意が必要なのは、賞与(ボーナス)は給与総額に含まれないという点です。退職前に多くのボーナスをもらっても、失業保険の給付額には影響しません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 退職前の何ヶ月間の給与が対象になりますか?

退職前6ヶ月間の給与が対象です。正確には、被保険者期間として計算された最後の6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180日で割って賃金日額を計算します。

Q2. みなし残業代は失業保険の計算に含まれますか?

はい、含まれます。みなし残業代(固定残業代)は給与として支払われている限り、給与総額に算入されます。ただし、みなし残業の範囲内で残業時間を増やしても支給額が変わらない場合は、給付額は増えません。

Q3. 退職直前の1ヶ月だけ残業を増やしても効果はありますか?

はい、効果はあります。ただし、6ヶ月間の平均で計算されるため、1ヶ月だけ増やしても効果は限定的です。できれば退職前の数ヶ月間、継続的に残業をするほうが給付額への影響は大きくなります。

Q4. 残業代が未払いの場合、失業保険の給付額に影響しますか?

未払いの残業代は、給与として支払われていない限り、失業保険の計算には含まれません。ただし、退職後に未払い残業代を請求し、支払われた場合は、離職票の訂正を申し出ることで、給付額を見直してもらえる可能性があります。ハローワークに相談してください。

Q5. 賞与(ボーナス)は失業保険の計算に入りますか?

いいえ、賞与(ボーナス)は失業保険の賃金日額の計算には含まれません。通常の月給のみが対象となります(年4回以上支給される特殊な賞与を除く)。

Q6. 産休前や育休前にも残業をしたほうがいいですか?

産休前や育休前に残業をすることで、出産手当金や育児休業給付金の額が増える可能性があります。これらの給付金も、直近の給与をもとに計算されるためです。ただし、妊娠中の無理な残業は健康リスクが高いため、医師の判断を優先してください。

Q7. 会社都合退職と自己都合退職で計算方法は変わりますか?

いいえ、賃金日額の計算方法は同じです。ただし、会社都合退職のほうが給付日数が多く、給付制限期間もないため、受け取る総額は大きくなります。
※2025年4月より、自己都合退職の給付制限期間は原則1ヶ月です。

まとめ:退職前の残業と失業保険

失業保険の給付額は、退職前6ヶ月の給与総額で決まります。残業代が多ければ多いほど、給付額も増える仕組みです。

押さえておくべきポイント

  • 賃金日額 = 退職前6ヶ月の給与総額 ÷ 180日
  • 残業代、各種手当は計算に含まれる
  • 賞与(ボーナス)は含まれない
  • 2023年4月以降、中小企業でも月60時間超の残業は50%割増
  • みなし残業や管理職など、残業代が出ないケースでは効果が限定される
  • 過度な残業は健康を害するリスクがある

失業保険の給付額を増やすために退職前に残業を増やすことは一つの方法ですが、健康を第一に考えた働き方を心がけてください。無理のない範囲で、制度を理解したうえで判断することが大切です。

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