雇用保険の各種給付について

高年齢再就職給付金をわかりやすく解説|計算・要件・再就職手当比較

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60歳を過ぎてから再就職したけれど、前より給料が下がってしまった――そんなときに支給されるのが「高年齢再就職給付金」です。失業保険の手続きをしてから再就職した人が対象で、賃金が75%未満に下がった場合、一定の条件を満たすと給付が受けられます。

ただし、同じような給付金に「再就職手当」があり、どちらか一方しか選べません。2025年4月の制度改正で高年齢再就職給付金の支給率が最大15%から10%に引き下げられたため、再就職手当の方が有利になるケースが増えています。実際にどちらを選ぶべきか、計算して比較しないと損をする可能性があります。

この記事では、高年齢再就職給付金の仕組みから、支給要件、具体的な計算方法、そして再就職手当との比較まで、実務で迷わないように詳しく解説します。

高年齢来よう継続給付金について

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高年齢再就職給付金とは?基本的な仕組み

高年齢再就職給付金は、60歳以降に再就職した際、賃金が前職の75%未満に下がった場合に支給される給付金です。ハローワークで失業保険の手続きをした人が対象になります。

失業保険の手続きをせずに再就職(再雇用)した場合は、この給付金ではなく高年齢雇用継続基本給付金 が該当しますので、注意してください。

支給額と支給期間

高年齢再就職給付金では以下の給付が受けられます。

  • 支給額: 賃金の低下率に応じて決まります(制度改正により上限の支給率が異なります)
  • 支給期間: 失業保険の残日数によって1年間または2年間

具体的には、就職日の前日時点で失業保険の残日数が100日以上残っていることが条件になります。100日以上200日未満なら支給期間は1年、200日以上なら2年間となります。

再就職手当との違い

同じような給付金に「再就職手当」がありますが、両方を同時に受け取ることはできません。どちらか一方を選ぶ必要があります

再就職手当は、残っている失業保険の残日数に応じて、最大で失業保険の70%を一時金として受け取れる制度です。どちらが得になるかは、個別の条件によって異なりますので、後ほど詳しく比較します。

支給を受けるための要件

高年齢再就職給付金を受給するには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

1. 年齢の要件

60歳以上65歳未満であることが必要です。再就職時に60歳を超えていることが条件になります。

2. 雇用保険の加入要件

再就職先で雇用保険の一般被保険者として加入していることが必要です。また、離職前に雇用保険の加入期間が通算で5年以上あることも条件です。

なお、離職期間がある場合は、前職分の加入期間を通算できるかどうかがポイントになります。一般的には、離職から1年以内に再就職していると通算できるケースが多いため、ここはハローワークで必ず確認してください。

3. 失業保険の残日数

再就職日の前日時点で、失業保険の支給残日数が100日以上残っていることが必須条件です。

この残日数によって支給期間が決まります。

  • 100日以上200日未満:支給期間1年
  • 200日以上:支給期間2年

4. 賃金の低下率

60歳時点の賃金と比べて、再就職後の賃金が75%未満になっていることが条件です。

具体的には、離職前の賃金日額を30倍した額と、再就職後の賃金を比較します。賃金日額は、失業保険の計算のもとになった金額で、雇用保険受給資格者証の14項に記載されています。

計算例:

60歳時の賃金日額が1万円で、再就職後の賃金が20万円の場合。
1万円×30倍=30万円
20万円÷30万円=66.7%

この場合、66.7%となり75%未満のため対象となります。

具体的な支給例と非支給例

以下、実際のケースで要件に該当するかどうかを見ていきます。

支給例1:賃金75%未満で支給残日数100日以上

高年齢再就職給付金の支給要件1

このケースでは、賃金が75%未満に低下しており、かつ支給残日数も100日以上あるため、支給対象となります。

支給例2:60歳未満で離職し、60歳過ぎてから再就職した場合

高年齢再就職給付金の支給要件2

60歳未満で離職した場合でも、再就職時に60歳を超えていれば支給対象になります。

非支給例1:支給残日数が100日未満の場合

高年齢再就職給付金の支給要件3

賃金が75%未満でも、支給残日数が100日未満の場合は支給対象外です。

非支給例2:60歳に満たないで再就職した場合

高年齢再就職給付金の支給要件4

再就職時に60歳未満の場合は、高年齢再就職給付金の対象にはなりません。ただし、一定の条件を満たせば再就職手当の対象になる可能性があります。

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支給期間と支給開始のタイミング

高年齢再就職給付金の支給期間は、再就職日の前日に失業保険の残日数がどれだけ残っているかで変わります。

  • 100日以上200日未満: 1年間
  • 200日以上: 2年間

支給開始月の注意点

支給開始月については注意が必要です。月の初日から末日まで雇用保険の被保険者である必要があります。つまり、月の途中入社の場合は、その月は対象外となり、翌月から支給対象となります。

また、支給申請は原則として2ヶ月単位で行い、支給も2ヶ月ごとになります。「いつ振り込まれるか」は申請のタイミング(事業主の提出日)によって前後するため、初回は勤務先に提出予定日を確認しておくと安心です。

65歳到達月までが上限

65歳に到達する月までが支給の上限です。たとえ支給期間が残っていても、65歳の誕生日がくる月で支給は終了します。

支給期間の具体例1:失業保険が100日以上200日未満の場合

高年齢再就職給付金の支給例1

この場合、支給期間は1年間となります。

支給期間の具体例2:失業保険が200日以上の場合

高年齢再就職給付金の支給例2

この場合、支給期間は2年間となります。

支給期間の具体例3:受給中に65歳の誕生日がくる場合

高年齢再就職給付金の支給例3

支給期間が残っていても、65歳到達月で支給は終了します。

支給額の計算方法

高年齢再就職給付金の支給額は、賃金の低下率によって決まります。

低下率の計算

まず、60歳時点の賃金と新しい賃金の比較をして低下率を計算します。

高年齢再就職給付金 低下率の計算

計算例:

60歳時の賃金が35万円、再就職後の賃金が20万円の場合。
20万円÷35万円×100=57.1%

支給率の決定(2025年4月以降)

2025年4月1日以降に60歳に達した方については、給付率が最大15%から最大10%に引き下げられました。

※2025年3月31日までに60歳に達していた方は、経過措置として従来どおり最大15%が適用されます。

  • 低下率が64%以下の場合:支給率10%(最高)
  • 低下率が64%超~75%未満の場合:支給率は計算式で算出(10%未満)

※図は旧制度(最大15%)のものです。2025年4月以降に60歳到達した方は上記の新制度(最大10%)が適用されます。

上限額と下限額

高年齢再就職給付金には上限と下限が設定されています(2025年8月改定)。

上限額

月の賃金が386,922円以上の場合は給付金は支給されません。ここでいう「月の賃金」は、再就職後の各支給対象月の賃金月額(その月に支払われた賃金)を指します。

下限額

計算して支給額が2,411円以下となる場合は、給付金は支給されません。こちらも「月ごとの支給額」が基準です。

具体的な計算例(新制度:最大10%の場合)

計算例1:低下率75%を超えると支給されない

60歳時の賃金が30万円で、60歳以降の賃金が25万円の場合。
25万円÷30万円×100=83.3%

この場合、賃金が75%未満になっていないため、支給されません

計算例2:低下率64%超~75%未満の場合

60歳時の賃金が30万円で、60歳以降の賃金が20万円の場合。
20万円÷30万円×100=66.7%

低下率が66.7%で、64%を超えているため計算式(逓減率)を使います。
このケースでは支給率が約7.5%程度となり、月額約15,000円が支給されます。

計算例3:低下率64%以下は支給率最大の10%

60歳時の賃金が30万円で、60歳以降の賃金が18万円の場合。
18万円÷30万円×100=60%

低下率が60%で64%以下のため、支給率は最大の10%です。
18万円×10%=18,000円

計算例4:支給額が2,411円以下の場合は支給されない

60歳時の賃金が30万円で、60歳以降の月の賃金が2万円の場合。
低下率は6.6%のため支給率は最大の10%ですが、
2万円×10%=2,000円

最低限度額(2,411円)以下になるため、支給されません

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高年齢再就職給付金と再就職手当、どちらが得か?

要件を満たした場合、高年齢再就職給付金と再就職手当のどちらか一方を選択する必要があります。どちらが得になるかは、支給残日数や賃金の低下率によって変わりますので、必ず計算して比較してください。

再就職手当の額

再就職手当の計算方法

再就職手当は以下の計算式で求めます。

基本手当日額 × 支給残日数 × 支給率

支給率は支給残日数によって決まります。

  • 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上:70%
  • 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上:60%

支給残日数が所定給付日数の3分の1未満の場合は、再就職手当の対象になりません

ただし、再就職手当の計算に使う基本手当日額には上限額があります(2025年8月改定)。

  • 離職時の年齢が60歳未満:上限6,570円
  • 離職時の年齢が60歳以上65歳未満:上限5,310円

※通常の失業保険の上限額(7,623円など)とは異なりますので注意してください。

雇用保険受給資格者証の図

実際に比較してみる

以下の条件で両者を比較します(2026年1月時点の制度・新給付率10%で試算)。

年齢 61歳(2025年4月以降に60歳到達)
所定給付日数 270日
賃金日額 12,000円
基本手当日額 5,800円
就職日前日の残日数 150日
再就職先の賃金 20万円

再就職手当の場合

就職日の前日時点で150日の残日数が残っています。所定給付日数270日の場合、残日数150日は「90日以上180日未満」に該当するため、支給率は60%です。

61歳の場合、再就職手当の計算に使う基本手当日額の上限は5,310円です(本来の日額5,800円より低くなるため上限額を使います)。
5,310円×150日×60%=477,900円

高年齢再就職給付金の場合

まず低下率を計算します。
賃金日額12,000円×30倍=360,000円(離職前の賃金)
200,000円÷360,000円×100=55.6%

低下率が55.6%で64%以下のため、支給率は最高の10%です(新制度)。
200,000円×10%=20,000円

支給残日数が150日のため、支給期間は1年間です。
20,000円×12ヶ月=240,000円

比較結果

再就職手当:477,900円
高年齢再就職給付金:240,000円

この例では再就職手当の方が約23万円も多く受け取れます

さらに、高年齢再就職給付金を選んだ場合、在職老齢年金との併給調整により年金が減る可能性があります。制度改正により給付率が下がったため、再就職手当のメリットが相対的に大きくなっています。

在職老齢年金との併給調整により年金が減る

高年齢再就職給付金を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)の一部が支給停止される場合があります。再就職手当にはこの調整はありませんので、年金を受給している方は特に注意が必要です。

併給調整の内容

※2025年4月からの制度改正により、高年齢雇用継続給付の支給率が最大10%となる方については、年金の停止率も最大6%から最大4%に緩和されています。

低下率が64%以下の場合

標準報酬月額が、60歳時点での賃金月額の64%以下である場合(給付率10%の場合)、年金について標準報酬月額の4%相当額が支給停止されます。

支給率が10%の人の場合、在職老齢年金の停止率が4%になるため、実質的な給付率は6%(10%-4%)となります。

低下率が64%を超えて75%未満の場合

標準報酬月額が、60歳時点での賃金月額の64%を超えて75%未満の場合、年金について標準報酬月額に4%から徐々に逓減する率(支給停止率)を乗じて得た額が支給停止されます。

低下率が75%以上である場合

併給調整は行われません。

※注意点:

  • 標準報酬月額とは、厚生年金保険の基準で決定された1ヶ月当たりの賃金相当額です。
  • 高年齢再就職給付金が不支給となった月は、在職老齢年金との併給調整は行われません。
  • 高年齢再就職給付金を受ける時には、在職老齢年金の裁定手続きの際に必要な手続きがあります。

参照元:厚生労働省日本年金機構

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申請手続きの方法

申請手続きは、通常勤務先の事業主が管轄のハローワークに支給申請を行います。

提出書類

  1. 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
  2. 高年齢雇用継続基本給付支給申請書
  3. 払渡希望金融機関指定届

添付書類

  1. 支給申請書と賃金証明書の記載内容を確認できる書類等
  2. 被保険者の年齢が確認できる書類等(運転免許証や住民票の写し(コピーも可))

提出先

事業所の所在地を管轄するハローワーク
※本手続は電子申請による支給申請も可能です。

提出時期

初回の支給申請

最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内

2回目以降の支給申請

管轄公共職業安定所長が指定する支給申請月の支給申請日

支給のタイミング

支給は2ヶ月ごとに、ご自身の指定した口座に振り込まれます。

まとめ:高年齢再就職給付金のポイント

  • 60歳以降の再就職で賃金が75%未満に下がった場合に支給される
  • ハローワークで失業保険の手続きをしていることが必須
  • 支給残日数が100日以上残っている必要がある
  • 支給率は制度改正により異なり、2025年4月以降に60歳到達した方は最大10%(経過措置で最大15%のケースもある)
  • 支給期間は1年または2年(残日数による)
  • 65歳到達月までが支給の上限
  • 再就職手当とどちらか一方を選択する必要がある
  • 在職老齢年金との併給調整により、年金が減る可能性がある(新制度対象者は最大4%相当の停止)
  • 通常は事業主が申請手続きを行う
  • 支給は2ヶ月ごとに自身の口座に振り込まれる

高年齢再就職給付金と再就職手当のどちらを選ぶべきか迷った場合は、必ず両方を計算して比較してください。また、年金を受給している方は、併給調整による年金の減額も考慮に入れる必要があります。分からない場合は、ハローワークに相談することをおすすめします。

よくある質問

高年齢再就職給付金と高年齢雇用継続基本給付金の違いは何ですか?

最大の違いは失業保険の手続きをしたかどうかです。

高年齢再就職給付金は、ハローワークで失業保険の手続きをした後に再就職した人が対象です。一方、高年齢雇用継続基本給付金は、失業保険の手続きをせずに継続して働いている人(定年後の再雇用など)が対象になります。

再就職手当と高年齢再就職給付金、どちらを選ぶべきですか?

個別の条件によって異なるため、必ず両方を計算して比較してください。一般的には、以下の傾向があります。

  • 支給残日数が多く、基本手当日額が高い場合:再就職手当が有利
  • 賃金の低下率が大きく、長期間働く予定の場合:高年齢再就職給付金が有利

ただし、2025年4月から高年齢再就職給付金の給付率が最大10%に引き下げられたため、以前よりも再就職手当の方が有利になるケースが増えています。

支給残日数が99日しかありません。何ももらえないのでしょうか?

高年齢再就職給付金の要件(100日以上)は満たしませんが、再就職手当の対象になる可能性があります。再就職手当は、所定給付日数の3分の1以上の残日数があれば受給できます。

月の途中で就職しました。その月から給付金はもらえますか?

いいえ、月の初日から末日まで雇用保険の被保険者である必要があります。月の途中入社の場合は、翌月から支給対象となります。

65歳を過ぎても給付金はもらえますか?

いいえ、65歳到達月で支給は終了します。たとえ支給期間が残っていても、65歳の誕生日がくる月までとなります。

賃金が上がって75%以上になった月はどうなりますか?

その月は給付金が支給されません。ただし、再び75%未満に下がれば、期間内であれば支給が再開されます。

失業保険を実際には受給しませんでした。それでもリセットされますか?

よくある誤解ですが、失業保険の手続きをしただけで、実際に受給しなければ雇用保険の加入期間はリセットされません。ただし、実際に失業保険を1日でも受給すると、加入期間はリセットされます。

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