失業保険を受給中に突然病気やケガで働けなくなった場合、「失業保険はどうなるのか」と不安になりますよね。実は、病気・ケガで「働ける状態ではない」日が続くと、失業保険(基本手当)をそのまま受け取れない期間が出ます。その場合でも、条件を満たせば「傷病手当」へ切り替えて受給を続けられます。
ただし、ここで注意が必要なのは、「傷病手当」と「傷病手当金」はまったく別の制度だということです。名前が似ているため混同されやすいのですが、傷病手当は雇用保険の制度、傷病手当金は健康保険の制度で、対象者も条件も全く異なります。
また、病気の期間が30日以上続く見込みの場合は、傷病手当を受け取るか、それとも失業保険の受給期間を延長して回復後に受け取るか、選択する場面が出てきます。どちらを選ぶべきかは、病気の回復見込みや今後の就職活動の予定によって変わってきます。
この記事では、傷病手当の仕組み、傷病手当金との違い、受給延長との比較、そして具体的な手続き方法まで、わかりやすく解説します。
■目次
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傷病手当とは? 失業保険を受給中に病気・ケガで働けなくなった場合の給付
傷病手当は失業保険の代わりに支給される
傷病手当とは、失業保険(基本手当)の受給資格者が、病気やケガのため「働ける状態ではない」期間が続く場合に、基本手当に代わって支給される給付です。
失業保険は本来「すぐにでも働ける状態」であることが前提です。しかし、病気やケガで働けない状態になると、その前提が崩れます。そこで、状況に応じて基本手当の扱いを切り替えることで、制度として整合を取っています。
重要なのは、傷病手当は失業保険に「上乗せ」されるのではなく、失業保険に「代わって」支給されるという点です。受け取る金額の考え方や残り日数の扱いも、基本手当とセットで整理されます。
傷病手当と傷病手当金の違い(重要)
「傷病手当」と「傷病手当金」は名前が似ていますが、まったく別の制度です。多くの人が混同するため、ここで明確に違いを整理しましょう。
傷病手当(雇用保険)
・退職後、失業保険受給中に病気・ケガで働けなくなった場合
・失業保険(基本手当)の代わりに支給される
・金額は基本手当日額をもとに計算される
・ハローワークで手続き
傷病手当金(健康保険)
・在職中に病気・ケガで働けなくなった場合
・給与(標準報酬)をもとに計算される(目安として約3分の2)
・通算1年6ヶ月まで受給可能
・加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合など)で手続き
つまり、在職中なら傷病手当金、退職後の失業保険受給中なら傷病手当です。この記事で解説するのは「傷病手当(雇用保険)」の方です。
傷病手当金について詳しくは、傷病手当金は、ケガや病気をした時の生活保障をご覧ください。
傷病手当を受け取るための4つの条件
傷病手当を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 失業保険(基本手当)の受給資格者であること
- 退職後にハローワークで失業保険の手続きを済ませていること
- 病気やケガのために働けない状態が15日以上続くこと
- その病気やケガは失業保険の手続き後に発生したこと
重要ポイント1: 手続き後の病気・ケガであること
傷病手当を受けるには、失業保険の手続きをした「後」に病気・ケガになったことが条件です。退職前や、退職後でもハローワーク手続き前に病気・ケガになった場合は、原則として傷病手当の対象外です。
退職前や手続き前から病気・ケガで働けない場合は、失業保険の受給期間延長の手続きを行い、回復後に失業保険を受給する流れになります。
重要ポイント2: 15日以上という基準
病気・ケガで働けない期間が14日以内で収まる見込みなら、傷病手当ではなく、失業認定日(認定日)を変更して基本手当の受給を続ける扱いになることがあります。
14日以内の病気・ケガ
認定日を変更して、回復後に基本手当の手続きを続けます(この間は「働ける状態ではない」ため、認定や手続き方法はハローワークの指示に従ってください)。
15日以上の病気・ケガ
傷病手当に切り替える扱いになります。基本手当とは別の申請書(傷病手当支給申請書)等の提出が必要になります。
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傷病手当で受け取れる金額と期間
金額は失業保険と同じ
傷病手当で受け取れる金額は、失業保険の基本手当日額をもとに計算されます。たとえば、基本手当日額が6,000円なら、傷病手当も日額6,000円が目安になります。
期間は所定給付日数の残り日数分
傷病手当を受け取れる期間は、失業保険の所定給付日数から、すでに受給した日数を引いた残り日数です。
たとえば、所定給付日数が90日で、失業保険を30日分受け取った後に傷病手当に切り替えた場合、傷病手当は残り60日分受け取れます。
待期期間・給付制限期間はどうなる?
失業保険と同じく、7日間の待期期間や給付制限期間(自己都合退職の場合、原則1ヶ月)は適用されます。
たとえば、給付制限期間中(手続きから1ヶ月間)に病気になった場合、その期間は傷病手当も支給されません。給付制限期間が終了してから、傷病手当の支給対象として扱われます。
傷病手当と受給延長、どちらを選ぶべき?
30日以上の病気・ケガの場合は選択肢がある
病気やケガが30日以上続く見込みの場合、以下の2つの選択肢があります。
選択肢1: 傷病手当を受け取る
失業保険を傷病手当に切り替えて、所定給付日数の範囲内で受給を続ける。
選択肢2: 受給期間を延長する
失業保険の受給期間を延長(最長4年間)し、回復後に失業保険を受け取る。
どちらを選ぶべきか? 判断基準
傷病手当を選ぶべきケース:
- 病気の回復見込みが数ヶ月以内で、その後すぐに就職活動できる
- 給付を先延ばしにせず、今すぐ受け取りたい
- 回復後の就職活動に自信がある
受給延長を選ぶべきケース:
- 病気の回復に半年以上かかる見込み
- 回復後にしっかり就職活動したい
- 職業訓練を受けたい(傷病手当中は職業訓練を受けられない)
一般的には、30日以上続く見込みがあるなら「傷病手当」か「受給期間延長」かを整理してから動く方が迷いにくいです。傷病手当を受け取ると、その分の給付日数が消費されるため、回復まで長い場合は延長のほうが結果的に有利になりやすい、という考え方になります。
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傷病手当の手続き方法
必要書類
傷病手当を受けるには、以下の書類が必要です。
- 傷病手当支給申請書(ハローワークで入手、または郵送依頼)
- 傷病証明書(医師が作成、ハローワーク所定の様式あり)
- 雇用保険受給資格者証
提出のタイミング
傷病手当は、基本的に治った(回復した)あとにハローワークで手続きします。
ただし、体調や入院などで窓口に行けない場合もあります。その場合は、代理人の来所や郵送など、提出方法を含めてハローワークに早めに相談してください(地域の運用により案内が異なる場合があります)。
傷病証明書の取得
傷病証明書は、医師に作成してもらいます。病院によっては文書料がかかる場合があります(通常数千円程度)。
証明書には、「いつからいつまで働けない状態だったか」を記載してもらう必要があります。
傷病手当を受給中の注意点
健康保険の傷病手当金や労災と同時受給はできない
以下の給付を受けている期間は、傷病手当を受給できません。
- 健康保険の傷病手当金
- 労災保険の休業補償給付
これらの給付は、傷病手当よりも金額が大きいことが多いため、同時に受給できないようになっています。
職業訓練は受けられない
傷病手当を受給している期間は、職業訓練を受けることができません。職業訓練は「すぐにでも働ける状態」であることが前提だからです。
もし職業訓練を受けたい場合は、受給延長を選択し、回復後に失業保険を受け取りながら職業訓練を受ける方が良いでしょう。
途中で回復した場合
傷病手当を受給中に回復した場合は、次の認定(手続き)から通常の失業保険に戻ります。残りの給付日数分を失業保険として受け取ることができます。
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まとめ: 失業保険受給中に病気になったら傷病手当
失業保険を受給中に病気やケガで15日以上働けなくなった場合、傷病手当に切り替えることで給付を続けることができます。
押さえておくべきポイント:
- 傷病手当は失業保険の代わりに支給される(上乗せではない)
- 傷病手当と傷病手当金はまったく別の制度(雇用保険 vs 健康保険)
- 15日以上働けない場合に傷病手当に切り替わる
- 30日以上の場合は、傷病手当を受け取るか受給期間延長するかを選べる
- 回復見込みが長い場合や職業訓練を受けたい場合は受給延長が有利になりやすい
- 窓口へ行けないときは、提出方法(代理・郵送等)を含めて早めに相談する
病気やケガは突然起こるものです。万が一の場合でも、こうした制度があることを知っておけば、焦らずに対応できます。不明な点があれば、ハローワークの窓口で相談しましょう。
よくある質問
Q1. 14日間病気で働けなかった。傷病手当をもらえる?
A. いいえ、もらえません。傷病手当は「15日以上」働けない場合に支給されます。14日以内の場合は、認定日を変更して基本手当の手続きを続ける扱いになることがあります。手続き方法(来所・郵送等)はハローワークの指示に従ってください。
Q2. 給付制限期間中(自己都合退職後の1ヶ月間)に病気になった。傷病手当はもらえる?
A. 給付制限期間中は、失業保険も傷病手当も支給されません。給付制限期間が終了してから、傷病手当の支給対象として扱われます。ただし、病気の期間が15日以上続く場合は、申請書類の準備や相談は早めに進めておくと安心です。
Q3. 傷病手当と受給延長、どちらが得?
A. 一概には言えませんが、病気の回復に半年以上かかる見込みの場合や、回復後に職業訓練を受けたい場合は受給延長の方が有利になりやすいです。傷病手当を受け取ると給付日数が消費されてしまいますが、受給延長すれば回復後に受け取る余地が残ります。延長の手続きは「30日以上働けない状態が続く」場合に検討する流れになるため、タイミングはハローワークに相談しましょう。
Q4. 傷病手当をもらいながら職業訓練を受けられる?
A. いいえ、受けられません。傷病手当は「病気やケガで働けない状態」に対する給付なので、職業訓練を受けることはできません。職業訓練を受けたい場合は、回復後に通常の失業保険に戻ってから受講するか、受給延長を選択して回復後に失業保険を受け取りながら職業訓練を受けましょう。
Q5. 退職前から病気だった。傷病手当をもらえる?
A. いいえ、もらえません。傷病手当は「失業保険の手続き後に発生した病気・ケガ」が対象です。退職前や、退職後でもハローワーク手続き前から病気・ケガで働けない場合は、受給期間延長の手続きを行い、回復後に失業保険を受給する流れになります。延長手続きの案内や必要書類はハローワークで確認してください。
Q6. 傷病手当の手続きはいつまでにすればいい?
A. 原則として、回復後にハローワークで手続きを行います。窓口へ行けない事情がある場合は、代理人の来所や郵送等の方法も含めて早めに相談してください。申請できる期間にも上限があるため(手続きの可否を含めて)放置せず確認しましょう。
Q7. 失業保険と傷病手当、両方同時にもらえる?
A. いいえ、もらえません。傷病手当は失業保険の「代わり」に支給されるものであり、「上乗せ」ではありません。受け取る金額も期間も基本手当の枠内で整理されます。同時受給はできません。