パートやアルバイトで働いている方から、「自分も社会保険に加入できるのだろうか」「加入した方がいいのか、それとも扶養のままの方がいいのか」という相談をよく受けます。
結論から言うと、パート・アルバイトでも一定の条件を満たせば、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入できますし、多くの場合、加入した方がメリットがあります。
ただし、配偶者の扶養に入っている場合は、社会保険に加入することで扶養から外れ、保険料の負担が発生します。この「扶養の壁」をどう考えるかが重要なポイントです。
なお、よく混同されますが、社会保険(厚生年金・健康保険)と、雇用保険(失業等に備える保険)は別の制度です。加入条件も違うため、この記事では両方を分けて整理します。
この記事では、パート・アルバイトの社会保険加入条件、メリット・デメリット、そして扶養との関係について、2026年1月時点の最新情報をもとに詳しく解説します。
■目次
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パート・アルバイトの社会保険加入条件
パート・アルバイトが社会保険に加入できる条件は、大きく2つのパターンがあります。

パターン①:4分の3基準(全ての事業所が対象)
会社の規模に関わらず、週の所定労働時間および月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上である場合、社会保険に加入できます。
【例】正社員が週40時間、月20日勤務の場合
・週30時間以上(40時間×3/4)
・月15日以上(20日×3/4)
→ この両方を満たせば社会保険に加入
この基準は、会社の規模や業種に関係なく、すべての事業所に適用されます。
パターン②:短時間労働者の加入基準(従業員数51人以上の事業所)
4分の3基準を満たさない場合でも、以下の5つの要件をすべて満たせば、社会保険に加入できます(2024年10月以降、従業員数51人以上の事業所が対象):
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収106万円以上)※残業代、賞与、通勤手当などは含まない
- 2ヶ月を超えて雇用される見込みがあること(2022年10月に「1年以上」から短縮)
- 学生でないこと(ただし、定時制・夜間・通信制の学生は加入対象)
- 従業員数が51人以上の事業所で働いていること
この基準により、月収8.8万円以上(年収106万円以上)で週20時間以上働くパート・アルバイトは、社会保険の加入対象となります。
従業員数要件の段階的拡大
短時間労働者の社会保険加入は、対象企業が段階的に拡大されています:
- 2016年10月〜:従業員501人以上の企業
- 2022年10月〜:従業員101人以上の企業
- 2024年10月〜:従業員51人以上の企業
なお、従業員数50人以下の企業でも、労使の合意があれば加入できます。
雇用保険と労災保険の加入条件
社会保険(厚生年金・健康保険)とは別に、雇用保険と労災保険についても確認しておきましょう。
雇用保険の加入条件
以下の2つの条件を満たせば、雇用保険に加入できます:
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがあること
雇用保険は、失業時に失業保険(基本手当)を受給するために必要です。年金を増やす制度(厚生年金)とは別なので、条件を分けて判断しましょう。
労災保険
労災保険は、1時間でも働けば自動的に加入となります。パート・アルバイトを含め、すべての労働者が対象です。仕事中のケガや通勤中の事故に対して補償が受けられます。
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社会保険加入のメリット
パート・アルバイトが社会保険に加入すると、以下のようなメリットがあります。
①将来の年金が増える
社会保険に加入すると、国民年金に加えて厚生年金にも加入します。将来受け取る年金額が、国民年金のみの場合よりも多くなります。
厚生年金の額は、加入期間と給料によって決まります。たとえパートでも、加入期間が長ければ、将来の年金額が増えます。
②保険料の半額を会社が負担
社会保険料は、会社が半額を負担してくれます。国民年金・国民健康保険をすべて自分で払う場合と比べて、実質的な負担が半分で済みます。
【例】厚生年金保険料が月2万円の場合
・本人負担:1万円
・会社負担:1万円
→ 実質的な負担は半分
③障害年金・遺族年金が手厚くなる
病気やケガで障害を負った場合、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支給されます。また、万が一亡くなった場合、遺族に遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が支給されます。
国民年金のみの場合よりも、保障が手厚くなります。
④傷病手当金・出産手当金が受けられる
健康保険に加入していると、以下の給付を受けられます:
- 傷病手当金:病気やケガで仕事を休む場合、給料の約3分の2が支給される(最長1年6ヶ月)
- 出産手当金:出産のため仕事を休む場合、給料の約3分の2が支給される(産前42日・産後56日)
国民健康保険には、これらの給付はありません(一部の国保組合を除く)。
詳しくは、以下の記事をご覧ください:
社会保険加入のデメリット
社会保険加入には多くのメリットがありますが、配偶者の扶養に入っている人にとってはデメリットになる場合があります。
扶養から外れると保険料負担が発生
配偶者の扶養に入っている場合、国民年金(第3号被保険者)と健康保険(被扶養者)の保険料負担はありません。
しかし、社会保険に加入すると扶養から外れ、厚生年金保険料と健康保険料を自分で負担する必要があります。
【例】月収10万円の場合の保険料負担(概算)
・厚生年金保険料:約9,000円
・健康保険料:約5,000円
・合計:約14,000円
※会社も同額を負担
※加入する健康保険(協会けんぽ/組合健保)や地域等で金額は変わります
この保険料負担により、手取り額が減ります。
配偶者控除・配偶者特別控除への影響
配偶者の扶養に入っている場合、配偶者(夫または妻)は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けられ、税金が安くなります。
社会保険に加入して年収が増えると、配偶者控除の対象外となり、配偶者の税金が増える可能性があります。なお、配偶者控除が使えなくなっても、年収帯によっては配偶者特別控除が適用される場合があります。
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「106万円の壁」と「130万円の壁」
扶養に関連して、「106万円の壁」と「130万円の壁」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
106万円の壁(社会保険の加入基準)
従業員数51人以上の企業で、月収8.8万円以上(年収106万円以上)、週20時間以上働く場合、社会保険に加入することになります。
これにより、扶養から外れて保険料負担が発生します。
130万円の壁(扶養の収入基準)
年収が130万円以上(60歳以上または障害者は180万円以上)になると、勤務先の従業員数に関わらず、配偶者の扶養(健康保険の被扶養者、国民年金第3号被保険者)から外れます。
この場合、勤務先で社会保険に加入できない人は、自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合は、国民健康保険ではなく勤務先の健康保険・厚生年金に加入します。
※人手不足による残業などで一時的に年収130万円を超えた場合、事業主の証明があれば、引き続き扶養に入れる特例措置(年収の壁・支援強化パッケージ)があります。適用は「連続2回まで」など条件があるため、具体的な扱いは加入している健康保険組合等に確認してください。
どちらの壁を意識すべきか
| 106万円の壁 | 130万円の壁 | |
|---|---|---|
| 対象 | 従業員51人以上の企業 | すべての企業 |
| 加入する保険 | 社会保険(厚生年金・健康保険) | 国民年金・国民健康保険 |
| 保険料 | 会社が半額負担 | 全額自己負担 |
従業員数51人以上の企業で働く場合、106万円の壁を意識する必要があります。従業員数50人以下の企業で働く場合は、130万円の壁を意識します。
ただし、「週・月が正社員の4分の3以上(パターン①)」を満たす場合は、会社規模に関係なく社会保険の加入対象です。まずは自分がパターン①に当てはまるかを先に確認すると、迷いにくくなります。
社会保険加入は本人の希望に関わらず義務
重要なポイントとして、社会保険の加入要件を満たした場合、本人の希望に関わらず加入義務があります。
「扶養のままでいたいので加入したくない」と思っても、加入要件を満たせば、会社は社会保険に加入させなければなりません。
もし加入を避けたい場合は、労働時間や収入を調整して、加入要件を満たさないようにする必要があります。
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まとめ:社会保険加入を判断するポイント
パート・アルバイトの社会保険加入について、重要なポイントをまとめます。
- 週30時間以上かつ月15日以上(正社員の3/4以上)働けば、会社の規模に関わらず社会保険に加入できる
- 従業員51人以上の企業で、月収8.8万円以上(年収106万円以上)、週20時間以上働く場合も加入対象
- 社会保険加入のメリット:将来の年金増加、保険料の半額を会社負担、傷病手当金・出産手当金の受給
- 社会保険加入のデメリット:扶養から外れて保険料負担が発生、手取り額が減る
- 106万円の壁(従業員51人以上の企業)と130万円の壁(すべての企業)がある
- 加入要件を満たせば、本人の希望に関わらず加入義務がある
社会保険に加入すると、一時的には手取り額が減りますが、将来の年金増加や、病気・出産時の保障が手厚くなるというメリットがあります。
目先の手取り額だけでなく、長期的な視点で判断することをおすすめします。特に、会社が保険料の半額を負担してくれる点は、大きなメリットです。
よくある質問
パートでも厚生年金に加入できますか?
はい、加入できます。正社員の3/4以上(週30時間以上など)働く場合は会社の規模に関わらず加入できます。また、従業員51人以上の企業で、月収8.8万円以上(年収106万円以上)、週20時間以上働く場合も加入対象です。
社会保険に加入したくない場合、断れますか?
いいえ、断れません。加入要件を満たした場合、本人の希望に関わらず加入義務があります。もし加入を避けたい場合は、労働時間や収入を調整して、加入要件を満たさないようにする必要があります。
106万円の壁と130万円の壁、どちらを気にすべきですか?
従業員51人以上の企業で働く場合は106万円の壁、従業員50人以下の企業で働く場合は130万円の壁を気にする必要があります。106万円で社会保険に加入すると扶養から外れますが、会社が保険料の半額を負担してくれます。130万円で扶養から外れると、勤務先で社会保険に加入できない場合は国民年金・国民健康保険に自分で加入し、全額自己負担となります。
社会保険に加入すると、手取りはどれくらい減りますか?
月収10万円の場合、厚生年金保険料と健康保険料で合計約14,000円の負担となります(会社も同額負担)。ただし、将来の年金増加や、傷病手当金・出産手当金などの保障が受けられます。
扶養から外れても、社会保険に加入した方がいいですか?
一概には言えませんが、長期的には社会保険に加入した方が有利な場合が多いです。会社が保険料の半額を負担してくれる点、将来の年金が増える点、傷病手当金・出産手当金が受けられる点などのメリットがあります。ただし、短期的には手取り額が減るため、家計の状況に応じて判断してください。
雇用保険と社会保険は違うのですか?
はい、別の制度です。雇用保険は失業時の基本手当(失業保険)を受けるための保険で、週20時間以上、31日以上の雇用見込みで加入できます。社会保険は厚生年金と健康保険のことで、加入条件は雇用保険とは異なります。ただし、多くの場合、社会保険に加入すれば雇用保険にも同時に加入することになります。
学生アルバイトでも社会保険に加入できますか?
学生は原則として社会保険(短時間労働者の特例)の加入対象外です。ただし、定時制・夜間・通信制の学生は加入対象となります。また、4分の3基準(週30時間以上かつ月15日以上など)を満たす場合は、学生でも加入対象となります。