会社を退職して失業中の方にとって、国民健康保険料の負担は大きな心配事の一つです。前年の収入をもとに保険料が計算されるため、収入がなくなった状態で高額な保険料を請求されるケースも珍しくありません。
しかし、会社都合退職や雇い止めで離職した方は、国民健康保険料が最大7割軽減される制度があります。この制度を知らずに保険料を全額支払っている方や、負担が重くて無保険になっている方も多いのが実情です。
結論だけ先にまとめると、雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)に記載された離職理由コードが対象(会社都合・雇い止め等)に該当する場合、前年の給与所得を30%(3割)として保険料計算されるため、主に所得割が実質7割軽くなる仕組みです。手続きは市区町村の国保窓口で申請が必要です。
この記事では、失業中の国民健康保険料軽減制度について、対象者の条件、具体的な軽減額、手続き方法、よくある勘違いまで詳しく解説します。自分が対象になるかどうか、どれくらい安くなるのかがすぐにわかります。
■目次
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失業中の国民健康保険料軽減制度とは
平成22年4月から始まったこの制度は、倒産・解雇・雇い止めなどで職を失った方が、安心して医療を受けられるように設けられた制度です。
通常、国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されます。例えば、前年に年収400万円あった方が退職した場合でも、その400万円をもとに保険料が算出されるため、収入がない状態で高額な保険料を支払わなければなりません。
この制度を利用すると、前年の給与所得を30%(3割)として計算されます。つまり、所得割部分については実質7割軽減されることになります。
なお自治体によっては「国民健康保険税」と呼ばれることもありますが、この記事では便宜上「国民健康保険料(国保料)」として説明します。
軽減の具体例
前年の給与所得が500万円だった場合:
- 通常:500万円をもとに保険料を計算
- 軽減後:150万円(500万円×30%)をもとに保険料を計算
ただし、均等割額・世帯割額・資産割額(市町村によって異なる)については軽減されません。軽減されるのは所得割部分のみです。
対象者の条件と判断方法
この制度の対象になるかどうかは、雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)に記載されている離職理由コードで判断します。
対象となる離職理由
以下の離職理由コードに該当する方が対象です:
特定受給資格者(会社都合退職)
- 11:解雇(労働契約期間満了による雇い止めを除く)
- 12:倒産・事業所の廃止
- 21:特定雇止め(雇用期間3年以上の雇い止め)
- 22:特定雇止め(雇用期間3年未満の更新明示ありの雇い止め)
- 31:事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職
- 32:事業所移転等に伴う正当な理由のある自己都合退職
特定理由離職者(やむを得ない理由での退職)
- 23:特定理由の正当な理由のある自己都合退職
- 33:正当な理由のある自己都合退職(特定受給資格者及び特定理由離職者に該当しない場合)
- 34:正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間12ヶ月未満)
対象にならない方
以下の方は、たとえ失業保険を受給していても対象外です:
- 自己都合退職(離職理由コード:2D、2Eなど)
- 定年退職
- 高年齢受給資格者(65歳以上で離職した方)
- 特例受給資格者(短期雇用特例被保険者として受給する方)
離職理由コードは雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)に記載されています。ハローワークで失業保険の手続きをすると発行されるので、必ず確認してください。
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軽減期間と失業保険との関係
軽減期間の基本ルール
軽減期間は離職日の翌日から翌年度末(3月31日)までです。これは失業保険の給付期間とは別で、失業保険を受け終わった後も軽減は継続します。
具体例で見てみましょう:
- 2024年10月15日に離職→2026年3月31日まで軽減対象
- 2025年3月20日に離職→2026年3月31日まで軽減対象
- 2025年4月5日に離職→2027年3月31日まで軽減対象
離職時期によって軽減期間の長さが変わることに注意してください。年度の早い時期に離職すると、軽減期間が最大2年近くになります。
失業保険を受給しない場合でも対象になる?
対象となる離職理由に該当していれば、失業保険を受給していなくても軽減を受けられます。ただし、雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)が必要なので、ハローワークで受給資格の決定手続きは必要です。
つまり、「失業保険は受け取らないけど、国保の軽減だけ受ける」ことも可能です。
途中で就職した場合はどうなる?
国民健康保険に加入している間は、途中で就職しても軽減は継続します。
ただし、就職先で社会保険(健康保険)に加入して国民健康保険を脱退すると、軽減も終了します。その後また国保に戻っても、軽減期間内であれば再び軽減を受けられます。
手続き方法と必要書類
届出が必要です
この軽減制度は自動的に適用されません。市町村の国民健康保険窓口で手続きが必要です。
届出が遅れても、離職日まで遡って軽減を受けられます(ただし、時効により遡及できる期間は原則2年までとなります)。すでに保険料を支払っている場合は、差額が還付されます。
必要な持ち物
- 雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知(ハローワークで発行されるもの)
- マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)
- 国民健康保険証
雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)が手元にそろってから、市町村の国保窓口で手続きできます。交付までに日数がかかることもあるため、ハローワークでの手続きは早めに進めると安心です。
手続きのタイミング
雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)を受け取ったら、できるだけ早く市町村の国保窓口で手続きしましょう。遅れても遡及適用されますが、早めに手続きすることで保険料の請求額を最初から抑えることができます。
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よくある勘違いと注意点
自己都合退職でも対象になるケースがある
「自己都合退職だから対象外」と思い込んでいる方もいますが、以下のような場合は特定理由離職者として対象になります:
- 妊娠・出産・育児により離職した方
- 父母の扶養・介護により離職した方
- 配偶者との別居や配偶者の転勤に伴って離職した方
- 通勤が困難になって離職した方
まずは雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)の離職理由コードを確認することが大切です。
国保以外に加入する場合は対象外
退職後、以下のような健康保険に加入する場合は、国民健康保険に加入しないため、この軽減制度は使えません:
- 会社の健康保険の任意継続
- 家族の健康保険の被扶養者になる
ただし、これらの保険と国保の保険料を比較して、途中で国保に切り替えることも可能です(任意継続は2年間継続が原則でしたが、現在は途中脱退も可能になっています)。
軽減を受けても保険料がゼロになるわけではない
この制度は所得割部分を7割軽減するものです。均等割・世帯割・資産割については軽減されないため、保険料がゼロになるわけではありません。
具体的な軽減額は前年所得や世帯状況、お住まいの市町村によって異なります。詳しくは市町村の国保窓口で試算してもらうことをおすすめします。
世帯主が加入していなくても世帯主宛に請求が来る
国民健康保険料は世帯主に請求されます。例えば、世帯主の父親が会社員で社会保険に加入していて、息子だけが国保に加入している場合でも、納付書は世帯主である父親の名前で届きます。
これは制度上の仕組みであり、実際に国保に加入しているのは息子なので、軽減の対象になるのも息子の所得です。
国保以外の選択肢との比較
退職後の健康保険には、国民健康保険以外にも選択肢があります。保険料を比較して、最も安い方法を選びましょう。
主な選択肢
1. 国民健康保険(軽減あり)
- 前年所得の30%で計算
- 市町村により保険料が異なる
- 手続き:市町村の国保窓口
2. 健康保険の任意継続
- 退職前の健康保険を最長2年間継続できる
- 保険料は退職時の標準報酬月額で計算(会社負担分も自己負担)
- 手続き:退職日の翌日から20日以内に健康保険組合へ申請
3. 家族の健康保険の扶養に入る
- 自己負担はゼロ(家族の保険料も変わらない)
- 条件:年収130万円未満の見込みなど
- 失業保険を受給していると扶養に入れないケースもある(日額3,612円以上の場合など)
特に、失業保険の受給が終わったタイミングで家族の扶養に入れる場合もあります。状況に応じて最適な選択肢を検討しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自己都合退職でもこの制度を使えますか?
A. 原則として使えませんが、妊娠・出産・育児、親の介護、配偶者の転勤などの正当な理由がある自己都合退職の場合は、特定理由離職者として対象になります。雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)の離職理由コードが23、33、34であれば対象です。
Q2. 失業保険を受給しなくても軽減を受けられますか?
A. 受けられます。ただし、雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)が必要なので、ハローワークで失業保険の受給資格決定手続きは必要です。実際に失業保険を受け取るかどうかは関係ありません。
Q3. 軽減期間中に就職した場合はどうなりますか?
A. 就職しても国民健康保険に加入し続ける限り軽減は継続します。ただし、就職先で社会保険(健康保険)に加入すると、国保を脱退するため軽減も終了します。その後また国保に戻った場合、軽減期間内であれば再び軽減を受けられます。
Q4. 届出が遅れた場合、遡って軽減してもらえますか?
A. 遡って軽減を受けられます(原則2年前まで)。離職日まで遡及適用されるため、すでに保険料を支払っている場合は差額が還付されます。気づいたらすぐに市町村の国保窓口で手続きしてください。
Q5. 具体的にどれくらい安くなりますか?
A. 前年の所得、世帯状況、お住まいの市町村によって異なります。所得割部分は前年給与所得の30%で計算されるため、実質7割軽減されますが、均等割・世帯割などは軽減されません。具体的な金額は市町村の国保窓口で試算してもらえます。
Q6. 任意継続と国保、どちらが安いですか?
A. 前年の所得や退職時の給与、扶養家族の有無によって異なります。国保は前年所得をもとに計算し、任意継続は退職時の標準報酬月額をもとに計算します。両方の保険料を試算して比較することをおすすめします。また、失業保険の受給が終わった後は家族の扶養に入れる可能性もあるので、そちらも検討してみてください。
Q7. 高年齢受給資格者でも軽減を受けられますか?
A. 受けられません。高年齢受給資格者(65歳以上で離職した方)と特例受給資格者(短期雇用特例被保険者)は、この軽減制度の対象外です。