「失業保険をもらっている途中で再就職すると、残りの分は損するんじゃないの?」
実はそんなことはありません。早めに再就職すると、残っている失業保険の60%〜70%を一括でもらえる制度があります。それが「再就職手当」です。
たとえば、失業保険が90日分残っている状態で再就職した場合、最大で約31万5,000円が一括で振り込まれるケースもあります。「早く就職するほど損」ではなく、むしろ「早いほどお得」な仕組みです。
この記事では、再就職手当の条件から計算方法、申請の流れ、よくある質問まで、初めての方でも迷わないよう図解付きで解説します。
「自分はもらえるの?」「いくらもらえるの?」「いつ振り込まれるの?」そんな疑問をすべて解消します。
■目次
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再就職手当ってどんな制度?
再就職手当は、ひとことで言うと「早めに就職した人へのボーナス」です。
ハローワークで失業保険の手続きをしたあと、早めに新しい仕事が決まった場合に、残っている失業保険の一部をまとめてもらえます。
もらえる条件をざっくり言うと、就職する前日の時点で失業保険の残り日数が3分の1以上あればOKです。
※この記事では「就職日」=「実際に働き始める日(初出勤日)」として説明します。内定日や入社の書類手続きをした日ではありませんのでご注意ください。
早く就職するほど、もらえる割合が高くなる
再就職手当には「支給率」があり、失業保険が多く残っているほど高い割合でもらえます。
再就職手当の支給率
- 残り日数が所定給付日数の3分の2以上 → 70%もらえる
- 残り日数が所定給付日数の3分の1以上 → 60%もらえる
たとえば、失業保険が90日分の人が就職する場合を考えてみましょう。
- 残り60日以上(3分の2以上)で就職 → 70%の支給率
- 残り30〜59日(3分の1以上)で就職 → 60%の支給率
- 残り30日未満(3分の1未満) → 対象外(もらえない)
つまり、早く就職するほど多くもらえるのがポイントです。
再就職手当はいくらもらえる?計算式と具体例
再就職手当の金額は、次の計算式で出せます。
基本手当日額 × 残りの日数 × 60%または70%
- 基本手当日額:失業保険で1日あたりもらえる金額(※ただし、再就職手当の計算用には年齢ごとに上限額が決められています。そのため、元々の基本手当日額が高い人は、計算結果より少し少なくなる場合があります)
- 残りの日数:就職する前日の時点で残っている失業保険の日数
実際にいくらになるか、2つのパターンで計算してみましょう。
計算例①:会社都合で辞めた場合(給付制限なし)
以下の条件で計算してみます。
- 会社都合退職(リストラや倒産など。給付制限なし)
- 失業保険の日数:180日分
- 基本手当日額:5,000円
- 退職日:3月31日
- ハローワークで手続きした日:4月16日
- 新しい会社で働き始める日:6月1日
① まず、失業保険がいつから始まるか
ハローワークで手続きした日(4月16日)から7日間は「待期期間」です。この間は失業保険も再就職手当ももらえません。待期期間が終わるのは4月22日。つまり、4月23日から失業保険がスタートします。
② 失業保険を何日分受け取ったか
失業保険の開始日(4月23日)から就職日の前日(5月31日)までは39日間。この39日分の失業保険を先に受け取ります。
③ 残りの日数を計算
180日 − 39日 = 残り141日
180日のうち141日も残っているので、3分の2以上(120日以上)をクリア。支給率は70%になります。
④ 再就職手当の金額
5,000円 × 141日 × 70% = 493,500円
約50万円が一括で振り込まれます。
計算例②:自分から辞めた場合(給付制限あり)
次は、自己都合退職のケースです。2025年4月から、自己都合退職の給付制限は原則2ヶ月→1ヶ月に短縮されています。
※過去5年間に自己都合退職で2回以上受給歴がある場合は、例外的に3ヶ月の給付制限になります。
- 自己都合退職(給付制限1ヶ月)
- 失業保険の日数:90日分
- 基本手当日額:5,000円
- 退職日:3月31日
- ハローワークで手続きした日:4月16日
- 新しい会社で働き始める日:5月1日
① 失業保険はいつから始まる?
手続き日(4月16日)から待期期間7日(〜4月22日)を経て、さらに給付制限1ヶ月(〜5月22日頃)があります。つまり、実際に失業保険がもらえるのは5月23日からです。
※給付制限の「1か月」の数え方は、暦の関係で数日の前後がある場合があります。正確な日付はハローワークで確認してください。
② 失業保険は何日分もらった?
就職日(5月1日)のほうが失業保険の開始日(5月23日)より前なので、失業保険は1日ももらっていません。
③ 残りの日数
90日全部が残っています。3分の2以上なので支給率は70%。
④ 再就職手当の金額
5,000円 × 90日 × 70% = 315,000円
給付制限中に就職しても、待期期間(7日間)さえ過ぎていれば再就職手当はもらえます。
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再就職手当をもらうための8つの条件
再就職手当をもらうには、以下の8つの条件すべてを満たす必要があります。多く見えますが、普通に就職する分にはほとんどの方がクリアできます。
- 待期期間の7日間が終わっていること
- 失業保険の残り日数が3分の1以上あること
- 前の会社と関係ない会社に就職すること
- 給付制限がある人は、最初の1ヶ月間はハローワーク等の紹介で就職すること
- 新しい会社で1年を超えて働く見込みがあること
- 新しい会社で雇用保険に入ること
- 過去3年以内に再就職手当をもらっていないこと
- ハローワークの手続きをする前から内定していた会社ではないこと
それぞれ、よくある疑問と一緒にわかりやすく説明します。
条件①:待期期間の7日間が終わっていること
ハローワークで手続きした日から7日間は「待期期間」です。この期間中は失業状態かどうかを確認するための期間で、全員に共通です(会社都合でも自己都合でも同じ)。
この7日間の中に就職日があると、再就職手当はもらえません。
ただし、待期期間中に「内定」が出ること自体は問題ありません。実際に働き始める日(就職日)が8日目以降であればOKです。
条件②:失業保険の残り日数が3分の1以上あること
就職日の前日時点で、失業保険がどれだけ残っているかがポイントです。
給付制限がない場合
たとえば90日分の人なら、残りが30日以上あればもらえます。60日以上残っていれば70%、30〜59日なら60%です。
給付制限がある場合
給付制限がある場合も考え方は同じです。給付制限が終わってから失業保険の支給が始まり、そこからの残り日数で計算します。
条件③:前の会社と関係ない会社に就職すること
前に働いていた会社と「資本や資金、人事面で密接な関係がある会社(密接な関連会社)」に就職した場合は、対象外です。
単に同じグループ会社というだけで一律NGになるわけではなく、実務ではハローワークが個別に判断します。しかし、「一度辞めて、実質的に同じ経営元の会社に入る」のは異動と同じとみなされるため、対象外になる可能性が高いです。
条件④:給付制限中の最初の1ヶ月間は職業紹介事業者の紹介であること
自己都合退職などで給付制限がある方は、給付制限期間の最初の1ヶ月間に限り、就職のルートに制限がかかります。
この「最初の1ヶ月」の間は、以下のいずれかの紹介で就職した場合だけ、再就職手当がもらえます。
職業紹介事業者とは、リクルートエージェントやdodaなどの転職エージェント、人材紹介会社のことです。求職者と企業の間に入って、求人の紹介や面接調整を行う会社を指します。
対象になる例
- ハローワークの紹介
- 転職エージェント(リクルートエージェント、dodaなど)
- 人材紹介会社
対象にならない例
- 求人サイト(リクナビ、エン転職など)での応募
- 知人・友人の紹介
- 企業への直接応募
- 派遣会社への登録(登録のみで就労しない場合)
求人サイトは求人情報を提供しているだけで、紹介ではありません。また、派遣会社に登録しただけでは就職とはみなされません。
2025年4月の改正で要注意!
2025年4月から給付制限は原則1ヶ月に短縮されましたが、この「最初の1ヶ月はハローワーク等の紹介が必要」というルールはそのまま残っています。
つまり、給付制限が1ヶ月の場合、給付制限の期間中はずっとこの制限がかかることになります。
※例外的に給付制限が3ヶ月の方は、最初の1ヶ月だけがこの制限の対象です。
ポイントは、「求人サイト」と「転職エージェント」は別物だということです。
- 求人サイト:求人情報が載っているだけ。自分で応募する → 「紹介」ではない
- 転職エージェント:担当者が企業との間に入って求人を「紹介」してくれる → 「紹介」に該当する
※派遣会社に「登録しただけ」の場合は就職とはみなされません。実際に派遣先で働き始めた日が就職日です。
条件⑤:新しい会社で1年を超えて働く見込みがあること
正社員なら基本的に問題ありません。気になるのは契約社員や派遣社員、パート・アルバイトの方でしょう。
ポイントは「実際に1年を超えて働くかどうか」ではなく、「1年を超えて働ける見込みがあるか」です。
- 「3ヶ月契約だけど、更新の可能性あり」 → OK(対象)
- 「3ヶ月契約で、更新なし(期間限定)」 → NG(対象外)
- 「1年間だけの期間限定プロジェクト」 → NG(対象外)
派遣社員の場合は、派遣会社が「再就職手当支給申請書」に「1年を超えて雇用する見込みがあるか」を記入してくれます。不安な場合は派遣会社に確認してみましょう。
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条件⑥:新しい会社で雇用保険に入ること
雇用保険に加入することが条件です。雇用保険の加入条件は2つ。
- 週20時間以上働くこと
- 31日以上働く見込みがあること
たとえば、週3日×1日4時間(週12時間)のパートだと雇用保険に入れないので、再就職手当の対象外になります。
ちなみに、試用期間中に雇用保険に入っていなくても、加入条件を満たしていれば再就職手当には影響しません。
※週20時間未満で働き始める場合でも、失業認定では「就労した日」として申告が必要です。その場合の取り扱いは、事前にハローワークに相談してください。
条件⑦:過去3年以内に再就職手当をもらっていないこと
前の就職で再就職手当(または常用就職支度手当)をもらっていた場合、3年間は再び受給できません。
※常用就職支度手当とは、障害のある方など就職が困難な方が安定した仕事に就いたときにもらえる手当です。
条件⑧:ハローワークの手続き前から内定していた会社ではないこと
ハローワークで失業保険の手続きをした日より前に、すでに内定が決まっていた会社に就職する場合は、再就職手当の対象外です。
「もう就職が決まっているのに、失業保険の手続きをしてお金をもらう」ことは不正受給にあたります。絶対にやめましょう。
再就職手当の申請から振り込みまでの流れ
全体の流れは4ステップです。順番に見ていきましょう。
ステップ①:就職が決まったらハローワークに電話する
新しい仕事が決まったら、まずハローワークに電話してください。すると「〇日に来てください」と案内されます。だいたい就職日の前日(月曜が初出勤なら金曜日)に行くことが多いです。
【ハローワークに持っていくもの】
- 雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)
- 失業認定申告書
- 採用証明書(あとから出してもOK)
失業認定申告書には、就職先の会社名・住所・電話番号を記入してください。
この日にやることは「就職日の前日までの失業保険の最終認定」です。再就職手当の申請はまだこの日ではありません。再就職手当の対象になる方には、ハローワークから「再就職手当支給申請書」が渡されます。
ステップ②:新しい会社に申請書の記入をお願いする
再就職手当支給申請書には、会社(事業主)が書く欄があります。新しい会社に渡して、以下の項目を記入してもらいましょう。
- 会社名・住所
- 入社した日
- 内定が出た日
- どんな仕事をするか(職種)
- 週何時間働くか
- お給料の金額(月額)
- 1年を超えて雇用する見込みがあるかどうか(ここが一番大事!)
- 会社の印鑑やサイン
特に「1年を超えて雇用する見込み」の欄で「無し」と書かれてしまうと、再就職手当はもらえません。契約社員や派遣社員の方は、事前に確認しておくと安心です。
ステップ③:就職日から1ヶ月以内にハローワークへ提出
働き始めた日から1ヶ月以内に、以下の書類をハローワークに提出しましょう。
【提出する書類】
- 再就職手当支給申請書(会社の記入が完了したもの)
- 雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)
- ハローワークから指示された書類(採用証明書、出勤簿の写しなど)
郵送で出すこともできます
平日にハローワークへ行く時間がない方は、郵送で提出できます。
封筒の書き方
〒xxx-xxxx
(ハローワークの住所)
○○公共職業安定所
雇用保険給付課 御中
再就職手当申請書在中
「雇用保険給付課」の名前はハローワークによって「雇用保険課」「給付課」など違うことがあります。わからなければ「雇用保険担当 御中」でも大丈夫です。
封筒の左下に「再就職手当申請書在中」と赤字で書いておくと、担当者の手元に届きやすくなります。裏面には自分の住所・氏名・電話番号も忘れずに。
郵送するときの注意点
- 「簡易書留」か「特定記録郵便」で送ると、届いたかどうか確認できて安心
- 申請書のコピーを取っておく(万が一の紛失対策)
- 締切が近いなら、直接持っていくか速達で送る
- 返送用封筒が必要かどうかはハローワークによって違うので、案内があればそれに従う
1ヶ月を過ぎてしまっても大丈夫?
原則は就職日から1ヶ月以内ですが、2年以内なら申請できます。これは法律で決まっている「時効」の期間です。
ただし、遅れると確認に時間がかかることもあります。なるべく1ヶ月以内に出しましょう。遅れそうなときは、ハローワークに一報入れておくと安心です。
ステップ④:通知書が届いたら約1週間で振り込まれる
申請書を出してから約1ヶ月以内に、「就業促進手当支給決定通知書」という封筒が届きます。この中に、再就職手当がもらえることと金額が書かれています。
通知書が届いてから約1週間で、失業保険で登録した銀行口座に振り込まれます。
繁忙期などで1ヶ月を過ぎても届かないこともあります。心配なときはハローワークに電話して聞いてみましょう。
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まとめ:早めの就職は損じゃない。再就職手当を活用しよう
「失業保険をギリギリまでもらってから就職するほうがトク」と思っている方は多いですが、再就職手当を使えば、早めに就職してもしっかりお金がもらえます。
しかも、早く就職するほど支給率が上がる仕組み。決して「早く就職したら損」ではありません。
気をつけるポイントは以下の通りです。
- 待期期間の7日間が終わってから就職すること
- 給付制限がある人は、その期間中はハローワークや転職エージェント経由で就職すること
- 新しい会社で1年を超えて働く見込みがあること
- 雇用保険に加入する働き方であること
申請書は就職から1ヶ月以内にハローワークへ。郵送でも出せます。もし遅れても2年以内なら間に合いますが、なるべく早めに出しましょう。
条件を確認して、もらえるお金はきちんともらってください。
再就職手当のよくある質問(FAQ)
Q. 契約社員、派遣社員、パート・アルバイトでも再就職手当はもらえる?
もらえます。条件は「雇用保険に加入すること(週20時間以上)」と「1年を超えて働く見込みがあること」の2つ。派遣社員でも、3ヶ月契約で「更新の可能性あり」ならOKです。
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Q. 起業・独立した場合でも再就職手当はもらえる?
もらえます。ただし、「開業届を出した」だけでは不十分です。1年を超えて事業を続けられることを証明する書類(店舗の賃貸契約書、融資の証明、事業計画書など)が必要です。なんとなく「起業するつもり」では認められません。
Q. 給付制限の期間中に就職が決まったら、再就職手当はもらえる?
もらえます。ただし、給付制限の期間中(原則1ヶ月)はハローワークか転職エージェントの「紹介」による就職に限られます。求人サイトからの自己応募や知人の紹介ではもらえません。
ちなみに、給付制限中に就職する場合は「失業保険を1日ももらっていない」状態です。この場合、再就職手当を申請せずに受給資格を残しておき、万が一すぐ辞めたときに備えるという選択肢もあります。どちらがお得かは状況によるので、ハローワークで相談してみてください。
Q. 待期期間(7日間)の間に内定が出たんだけど、大丈夫?
大丈夫です。内定が出ること自体は問題ありません。大事なのは「実際に働き始める日(就職日)」が待期期間終了後(8日目以降)であることです。
Q. 友人の紹介で就職が決まったけど、再就職手当はもらえない?
給付制限の最初の1ヶ月以内に就職する場合、友人の紹介ではもらえません。ただし、就職日を給付制限の1ヶ月が過ぎた後にずらしてもらえれば、どんな方法で就職してもOKです。就職先に相談してみてください。
Q. 提出期限の1ヶ月に間に合わなかった!もうもらえない?
大丈夫です。就職日から2年以内なら申請できます(法律上の時効期間)。遅れてもいいので、諦めずにハローワークに提出しましょう。ただし、遅れるほど確認に時間がかかることがあるので、事前にハローワークに連絡しておくとスムーズです。
Q. 再就職手当をもらった後にすぐ辞めたら、返さないといけない?
原則として返す必要はありません。ただし、「最初から1年以上働くつもりがなかったのにウソの申請をした」「実態として最初から短期契約だった」などの場合は不正受給とみなされ、返還を求められる可能性があります。正当な理由で辞めた場合は返還不要ですが、再就職手当でもらった金額は「失業保険をもらったこと」として扱われます。再び失業保険をもらうときに、その分だけ日数が減ります。辞めたあとの手続きについてはハローワークに早めに相談してください。
Q. 申請中に辞めてしまった場合は?
すぐハローワークに連絡してください。まだ在籍しているかどうかの確認が入ります。再就職手当がもらえなかった場合でも、失業保険の残り日数がまだあれば、もう一度ハローワークで手続きすれば失業保険を再開できます。
Q. 新しい会社のお給料が前より低い場合、追加でもらえるお金はある?
「就業促進定着手当」という手当があります。再就職手当をもらった人が対象で、新しい会社で6ヶ月働いたあと、その間のお給料が前の会社より低い場合にもらえます。金額は失業保険の残り日数の30%〜40%です。
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参考・出典
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「雇用保険手続きのご案内(自己都合退職者の給付制限期間の短縮)」
- ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」






