再就職手当とは、失業保険の受給資格がある方が早期に再就職した場合に支給される一時金です。失業保険の支給残日数が3分の1以上残っていれば、その60%または70%を一括で受け取れます。
「早く就職すると損」と思われがちですが、再就職手当があるため、早期就職してもほとんど損はしません。むしろ、早く就職するほど支給率が上がる仕組みです。
この記事では、2026年2月時点の最新法令に基づき、再就職手当の条件、支給額の計算方法、申請手続きの流れ、そして多くの方が知りたい郵送での提出方法まで、実務で迷わないよう詳しく解説します。
■目次
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再就職手当とは
再就職手当は、ハローワークで失業保険の手続きをした後に早期就職が決まった場合に支給される手当です。就職日の前日時点で、失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていれば支給対象になります。
この記事では「就職日=実際に働き始める日(初出勤日)」として説明します(内定日や入社手続き日ではありません)。
早期就職を促進するための制度で、残った支給日数の60%または70%を一時金として受け取れます。待機期間7日を過ぎてから就職すれば、給付制限期間中でも受給できます。
再就職手当の支給率
支給率は、就職日前日の時点で残っている支給日数によって変わります。
再就職手当の支給率
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上 → 70%
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上 → 60%
例えば、所定給付日数が90日の場合、残日数60日以上(3分の2以上)なら70%支給、残日数30日以上60日未満(3分の1以上)なら60%支給です。残日数30日未満(3分の1未満)は支給対象外になります。
早く就職するほど支給率が高くなる仕組みです。
再就職手当で支給される金額
再就職手当の支給額は、以下の計算式で算出します。
基本手当日額 × 支給残日数 × 60%または70%
- 基本手当日額:失業保険で1日あたり受け取れる金額(年齢ごとに上限あり)
- 支給残日数:就職日の前日時点で残っている日数

計算例1:会社都合退職(給付制限なし)の場合
以下の条件で計算してみます。
- 会社都合退職(給付制限なし)
- 所定給付日数:180日
- 基本手当日額:5,000円
- 退職日:3月31日
- 手続き日:4月16日
- 就職日:6月1日
支給開始日の計算
手続き日(4月16日)から待機期間7日間(4月16日〜4月22日)が経過後、4月23日から失業保険の支給が開始されます。
失業保険の受給日数
支給開始日(4月23日)から就職日前日(5月31日)までは39日間です。この間、失業保険を受給します。
支給残日数の計算
所定給付日数180日 − 受給日数39日 = 残日数141日
180日のうち141日残っているため、所定給付日数の3分の2以上(120日以上)が残っています。支給率は70%となります。
再就職手当の金額
5,000円 × 141日 × 70% = 493,500円
計算例2:自己都合退職(給付制限あり)の場合
以下の条件で計算してみます。2025年4月から自己都合退職の給付制限期間は原則2か月から1か月に短縮されています。
※過去5年間に2回以上の自己都合退職による受給がある場合(今回が3回目となる場合など)は、例外的に3か月の給付制限となります。
- 自己都合退職(給付制限1か月)
- 所定給付日数:90日
- 基本手当日額:5,000円
- 退職日:3月31日
- 手続き日:4月16日
- 就職日:5月1日
支給開始日の計算
手続き日(4月16日)から待機期間7日間(4月16日〜4月22日)が経過後、さらに給付制限期間1か月(4月23日〜5月22日)があります。実際の失業保険支給開始日は5月23日です。
※給付制限の起算日や「1か月」の数え方は、暦や行政庁の閉庁日などの事情で前後することがあります。上記の日付はあくまで計算上のモデルケースですので、実際の日付は必ずハローワークで確認してください。
失業保険の受給日数
この例では、就職日(5月1日)が支給開始日(5月23日)より前のため、失業保険を1日も受給していません。
支給残日数の計算
所定給付日数90日すべてが残っています。90日は所定給付日数の3分の2以上なので、支給率は70%です。
再就職手当の金額
5,000円 × 90日 × 70% = 315,000円
給付制限期間中でも、待機期間を過ぎていれば再就職手当は受給できます。
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再就職手当が支給される8つの条件
以下の8つの条件をすべて満たす必要があります。
- 待機期間7日間が経過していること
- 失業保険の支給残日数が3分の1以上残っていること
- 就職先が離職前の会社と関係がないこと
- 給付制限期間がある場合、最初の1か月はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介であること
- 再就職先で1年以上の雇用が見込めること
- 再就職先で雇用保険に加入すること
- 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受給していないこと
- 受給資格決定前から採用が内定していた事業主でないこと
それぞれ詳しく解説します。
1. 待機期間7日間が経過していること
ハローワークで失業保険の手続きをした日から7日間は「待機期間」です。この期間は、失業状態であることを確認するための期間で、給付制限の有無に関係なく全員に適用されます。
待機期間中は失業保険も再就職手当も支給されません。ただし、待機期間中に内定が決まることは問題ありません。就職日(実際に働き始める日)が待機期間終了後であれば、再就職手当の対象になります。
2. 失業保険の支給残日数が3分の1以上残っていること
就職日の前日時点で、所定給付日数の3分の1以上が残っている必要があります。
給付制限がない場合の例

所定給付日数が90日の場合、残日数が30日以上あれば再就職手当の対象です。残日数60日以上(3分の2以上)なら70%支給、残日数30日以上60日未満(3分の1以上)なら60%支給です。
給付制限がある場合の例

給付制限期間がある場合、給付制限が終了してから失業保険の支給が始まります。それ以外の考え方は同じです。
3. 就職先が離職前の会社と関係がないこと
直前に勤めていた会社と資本・資金・人事・取引面で密接な関係がある会社への就職は、再就職手当の対象外です。グループ会社内での異動や配置転換とみなされるためです。
4. 給付制限期間がある場合、最初の1か月はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介であること
自己都合退職などで給付制限期間がある場合、給付制限期間の最初の1か月間は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職に限り、再就職手当が支給されます。

※現在は給付制限が原則1ヶ月のため、原則として給付制限期間中はすべてこの「最初の1か月」の条件が適用されます(※例外的に給付制限が3か月の場合は最初の1か月のみ)。
最初の1か月間に、求人サイトや知人の紹介などで就職した場合は、再就職手当の対象外です。給付制限期間の1か月が経過した後であれば、どのような方法で就職しても再就職手当を受給できます。
2025年4月改正との関係に注意
2025年4月より給付制限期間は原則1か月になっていますが、「最初の1か月」の制限は引き続き適用されます。つまり、原則1か月のケースでは、実質的に給付制限期間中の就職はすべてハローワーク等の紹介が必要になります(※例外的に給付制限が3か月の場合は、最初の1か月のみ紹介が必要です)。
職業紹介事業者とは
職業紹介事業者とは、リクルートエージェントやdodaなどの転職エージェント、人材紹介会社のことです。求職者と企業の間に入って、求人の紹介や面接調整を行う会社を指します。
対象になる例
- ハローワークの紹介
- 転職エージェント(リクルートエージェント、dodaなど)
- 人材紹介会社
対象にならない例
- 求人サイト(リクナビ、エン転職など)での応募
- 知人・友人の紹介
- 企業への直接応募
- 派遣会社への登録(登録のみで就労しない場合)
求人サイトは求人情報を提供しているだけで、紹介ではありません。また、派遣会社に登録しただけでは就職とはみなされません。
5. 再就職先で1年以上の雇用が見込めること
正社員(無期雇用)の場合は問題ありません。契約社員、派遣社員、パート・アルバイトの場合は、継続して1年以上働ける見込みがあるかどうかが重要です。
判断基準
- 「1年間限定の契約」→ 対象外
- 「3か月契約(更新の可能性あり)」→ 対象
- 「3か月契約(更新なし)」→ 対象外
派遣社員の場合、3か月ごとの更新が一般的ですが、更新の可能性があれば再就職手当の対象です。実際の判断は派遣会社が行い、「再就職手当支給申請書」に1年以上の雇用見込みがあるかどうかを記入します。
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6. 再就職先で雇用保険に加入すること
再就職先で雇用保険に加入する必要があります。雇用保険の加入条件は「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがあること」の2つです。
例えば、週3日で1日4時間(週12時間)のパートタイムの場合、雇用保険に加入できないため、再就職手当の対象外です。
ただし、週20時間未満の勤務を始めた場合でも、失業認定では「就労(働いた日)」として申告が必要で、働いた日数や収入により基本手当が減額・不支給になることがあります。始める前にハローワークへ確認すると安心です。
会社によっては試用期間中は雇用保険に加入しないこともありますが、加入条件を満たしていれば、再就職手当の支給には影響しません。
7. 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受給していないこと
再就職日から過去3年以内に、再就職手当または常用就職支度手当を受給している場合は、再び受給することはできません。
※常用就職支度手当とは、障害者や就職困難者が安定した職業に就いた場合に支給される手当です。
8. 受給資格決定前から採用が内定していた事業主でないこと
受給資格決定とは、ハローワークで失業保険の手続きをした日のことです。その日より前に内定が決まっていた会社への就職は、再就職手当の対象外です。
就職が決まっている事実を隠して失業認定を受けると、不正受給になります。
再就職手当の手続きから支給までの流れ

ステップ1:再就職が決まったらハローワークへ連絡
再就職が決まったら、まずハローワークに電話で連絡してください。ハローワークから来所日の案内があります。通常、就職日の前日(月曜日が初出勤なら金曜日)に来所するよう指示されます。
【ハローワーク来所時の持ち物】
- 雇用保険受給資格者証
- 失業認定申告書
- 採用証明書(後日提出でも可)
失業認定申告書には、就職先の事業所名、住所、電話番号を記入してください。
この日は再就職手当の申請ではなく、就職日前日までの失業保険の最終認定を行います。再就職手当の対象者には、ハローワークから「再就職手当支給申請書」が渡されます。

ステップ2:就職先に「再就職手当支給申請書」の記入を依頼
再就職手当支給申請書には、事業主が記入する欄があります。就職先に以下の項目を記入してもらってください。
- 事業所名・所在地
- 雇入年月日
- 採用内定年月日
- 職種
- 1週間の所定労働時間
- 賃金月額
- 雇用期間(1年を超えて雇用する見込み)
- 事業主のサイン
特に重要なのは「1年を超えて雇用する見込みがあるかどうか」です。ここで「無し」と記入されると、再就職手当を受給できません。
ステップ3:就職日から1か月以内にハローワークへ提出
就職日から1か月以内に、以下の書類をハローワークに提出します。
【ハローワークへの提出書類】
- 再就職手当支給申請書(事業主記入欄が完成しているもの)
- 雇用保険受給資格者証
- その他ハローワークから指示されたもの(採用証明書・出勤簿の写し等)
郵送での提出も可能
再就職手当支給申請書は、郵送でも提出できます。
郵送時の宛名の書き方
封筒の宛名は以下のように記入してください。
〒xxx-xxxx
(ハローワークの住所)
○○公共職業安定所
雇用保険給付課 御中
再就職手当申請書在中

「雇用保険給付課」の部分は、ハローワークによって「雇用保険課」「給付課」など名称が異なる場合があります。事前にハローワークに確認するか、「雇用保険担当 御中」としても問題ありません。
封筒の左下に「再就職手当申請書在中」と赤字で記入すると、担当部署に届きやすくなります。差出人(住所・氏名・電話番号)も忘れずに書きましょう。
郵送時の注意点
- 簡易書留や特定記録郵便で送ると安心です
- コピーを取っておくことをおすすめします
- 締切が近い場合は、持参するか速達で送りましょう
- 返送用封筒や追加資料が必要かはハローワークで異なるため、案内があればそれに従ってください
1か月を過ぎても提出可能
原則は1か月以内の提出ですが、就職日から2年以内であれば申請可能です(時効期間内)。
※遅れても時効(2年)まで申請は可能です。ただし遅れるほど確認に時間がかかることがあります。原則は1か月以内なので、できるだけ早めに提出しましょう。提出が遅れそうな場合は、事前にハローワークに連絡してください。
ステップ4:支給決定通知書が届き、口座に振り込まれる
申請書を提出してから約1か月以内に、「就業促進手当支給決定通知書」という封書が届きます。この通知書には、再就職手当の支給が決定したことと支給金額が記載されています。
通知書が届いてから約1週間以内に、失業保険で指定した口座に振り込まれます。
繁忙期などで1か月を過ぎても通知書が届かない場合もあります。心配な場合は、ハローワークに問い合わせてください。
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まとめ
再就職手当は、失業保険の支給残日数が3分の1以上残っている状態で早期に就職した場合に支給される手当です。支給額は残日数の60%または70%で、早く就職するほど支給率が高くなります。
受給するには8つの条件をすべて満たす必要がありますが、特に重要なのは以下の点です。
- 待機期間7日間が経過していること
- 給付制限期間がある場合、その期間中(原則最初の1か月)はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介であること
- 再就職先で1年以上の雇用が見込めること
- 再就職先で雇用保険に加入すること
申請書は就職日から1か月以内にハローワークへ提出します。郵送での提出も可能です。提出が遅れても2年以内であれば申請可能ですが、できるだけ早めに提出しましょう。
再就職手当を活用すれば、早期就職してもほとんど損はしません。条件を確認して、適切に手続きを進めてください。
再就職手当に関するよくある質問
Q. 契約社員、派遣社員、パート・アルバイトでも再就職手当はもらえますか?
再就職手当の条件を満たしていれば受給できます。特に重要なのは、雇用保険に加入すること(週20時間以上の労働)と、1年以上の雇用見込みがあることです。派遣社員の場合、3か月契約でも更新の可能性があれば対象になります。
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Q. 起業・独立した場合でも再就職手当はもらえますか?
自営業や個人事業主として起業する場合でも、再就職手当を受給できます。ただし、開業届と1年以上事業を継続できることを証明する必要があります。店舗の賃貸契約書や融資の証明書、具体的な事業計画などが求められます。単に「開業するつもり」というだけでは認められません。
Q. 給付制限期間中に就職が決まった場合、再就職手当はもらえますか?
もらえます。ただし、給付制限期間の最初の1か月間(2025年改正後の原則期間すべて)は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職に限られます。
給付制限期間が終わる前に就職する場合、失業保険を1日も受給していないため、再就職手当を申請せずに、今回の受給資格を残しておく(受給期間内に再離職した場合に備える)という選択も可能です。ただし、受給期間(原則1年)が過ぎると権利は消滅します。どちらが有利かは、ご自身の状況や今後のキャリアプランによるため、ハローワークで相談してください。
Q. 待機期間中に内定が出た場合、再就職手当はもらえますか?
内定が出るだけなら問題ありません。実際に働き始める日(就職日)が待機期間終了後であれば、再就職手当の対象です。
Q. 給付制限の最初の1か月で知人紹介の内定を得た場合は?
内定の時期は問題ありません。重要なのは就職日(実際に働き始める日)です。就職日が給付制限期間の最初の1か月以内の場合、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介でなければ再就職手当の対象外です。知人の紹介や求人サイトでの応募の場合、就職日を給付制限1か月経過後にずらしてもらうことも検討してください。
Q. 提出期限(1か月以内)に間に合わなかった場合はどうなりますか?
就職日から2年以内であれば申請可能です(時効期間内)。原則は1か月以内ですが、雇用保険関連の給付金には2年の時効期間があるためです。提出が遅れそうな場合は、事前にハローワークに連絡しておくと安心です。
Q. 再就職手当を受け取った後、すぐに退職した場合はどうなりますか?
原則として再就職手当を返還する必要はありません。ただし、再就職手当は「基本手当(失業保険)が支給されたもの」として扱われるため、再離職後に受け取れる基本手当の日数は、再就職手当で支給された金額に相当する日数分だけ調整されます。退職理由によっては給付制限が付く場合もあるため、再離職したら早めにハローワークで確認してください。
Q. 申請中に退職した場合はどうなりますか?
すぐにハローワークに連絡してください。再就職手当が支給されるかどうかは、在籍確認によって判断されます。再就職手当が支給されなかった場合でも、失業保険の残日数は残っているため、ハローワークで再度手続きをすれば失業保険を受給できます。
Q. 再就職先の賃金が離職前より低い場合、追加で手当はもらえますか?
「就業促進定着手当」を受給できる可能性があります。再就職手当を受給した方が対象で、再就職先で6か月間働いた後、その間の賃金が離職前の賃金より低い場合に支給されます。支給額は失業保険の支給残日数の40%または30%です。
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