会社を辞めてから次の仕事が決まるまで、無収入では生活できません。そんなとき助けになるのが、雇用保険に加入していた方が受け取れる失業給付の基本手当です。
一般的には「失業保険」という呼び方の方が馴染み深いかもしれませんが、正式には雇用保険の失業等給付における「基本手当」という名称です。ハローワークでも「失業保険」で通じますので、このページでは両方の呼び方を使って説明します。
この記事では、基本手当を受け取るための条件から支給される金額、いつまでもらえるのかという期間の話まで、実際に受給するために知っておくべきポイントをすべて解説します。「育児中でも受給できるのか」「アルバイトをしたら減額されるのか」といったよくある疑問にも答えていきます。

■目次
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失業給付の基本手当とは?誰がもらえるのか
基本手当は、雇用保険に加入していた方が離職後、次の仕事を探す間の生活費として支給される給付金です。いわゆる「失業保険」のことですが、誰でももらえるわけではありません。
受給するための3つの条件
基本手当を受給するには、以下の3つの条件すべてを満たす必要があります。
【条件①】雇用保険の加入期間が一定以上あること
- 原則:離職前2年間で通算12ヶ月以上の被保険者期間
- 特定受給資格者・特定理由離職者:離職前1年間で通算6ヶ月以上
【条件②】失業状態にあること
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境面)があること
- 積極的に求職活動を行っているが、就職できない状態にあること
【条件③】ハローワークで求職申込をしていること
- 離職後、ハローワークで求職申込と受給資格決定の手続きを行う必要があります
特に見落としがちなのが条件②です。「今は働けない」「しばらく休みたい」という状態では、基本手当は受給できません。基本手当はあくまで「仕事を探している人の生活を支えるための給付」だからです。
会社都合退職と自己都合退職で条件が違う
上記の条件①にある「特定受給資格者」とは、主に会社都合で退職した方のことです。倒産や解雇など、本人の責任ではない理由で離職した場合、受給資格を得やすくなっています。
一方、自己都合で退職した場合は、原則として離職前2年間で12ヶ月以上の加入期間が必要です。ただし、やむを得ない理由(病気、介護、通勤困難など)がある場合は「特定理由離職者」として、会社都合と同じ条件になることがあります。
基本手当はいくらもらえる?金額の計算方法
基本手当の金額は、離職前6ヶ月間の平均賃金をもとに計算されます。ざっくり言うと、以前の給与の5割〜8割程度が目安です。
基本手当日額の上限と下限(2025年8月1日改定)
下限額:日額2,411円(年齢に関わらず)
上限額:
- 30歳未満:日額7,255円
- 30歳以上45歳未満:日額8,055円
- 45歳以上60歳未満:日額8,870円
- 60歳以上65歳未満:日額7,623円
※上限額・下限額は毎年8月1日に見直されます。
給与が高かった方ほど基本手当も多くなりますが、上限があるため、月収50万円の人も100万円の人もほぼ変わりません。逆に、給与が低かった場合でも、下限額が保障されています。
具体的な金額を知りたい場合
実際にいくらもらえるのかは、以下のページで自動計算できます。
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基本手当はいつまでもらえる?支給期間の全パターン
基本手当の支給日数(給付日数)は、離職理由、年齢、雇用保険の加入期間によって決まります。最短90日から最長360日まで、かなり幅があります。
自己都合退職の場合(一般の離職者)
| 被保険者期間 | 全年齢共通 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
自己都合で退職した場合、年齢に関係なく上記の日数になります。勤続年数が長いほど、支給日数が増える仕組みです。
会社都合退職の場合(特定受給資格者・特定理由離職者)
会社都合や、やむを得ない理由での退職の場合、年齢と被保険者期間に応じて、より長い期間受給できます。
| 年齢 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
就職困難者(障害者など)の場合は、さらに長い給付日数(最長360日)が設定されています。詳細は以下のページで解説しています。
受給期間の「1年間」という制限に注意
ここで重要なのが、基本手当を受け取れる期間には「離職日の翌日から1年間」という制限があることです。
たとえば、給付日数が120日ある場合でも、離職から1年以内に受給を開始しないと、残りの日数が消滅してしまいます。また、受給を開始しても、原則として「離職日の翌日から1年」を過ぎると、残日数があっても受給できなくなります。
ただし、給付日数が300日・330日・360日の方は、受給期間そのものが延長されます(最長で離職日の翌日から1年+60日=420日まで)。長い給付日数の人ほど、使い切るための期限も長くなる仕組みです。
いつから支給される?待機期間と給付制限
ハローワークで受給資格決定を受けてから、すぐに基本手当が支給されるわけではありません。待機期間と給付制限という2つの待ち期間があります。
7日間の待機期間(全員共通)
受給資格決定日から7日間は「待機期間」と呼ばれ、誰でも必ず待つ必要があります。この7日間は、本当に失業状態かどうかを確認するための期間です。
待機期間中にアルバイトなどをすると、その日数分だけ待機期間が延びてしまいますので注意してください。
給付制限(自己都合退職の場合のみ)
正当な理由なく自己都合で退職した場合、待機期間の7日間に加えて、さらに給付制限期間があります。
2025年(令和7年)4月1日以降、給付制限期間は原則「1ヶ月」に短縮されました(5年間のうち2回まで)。3回目以降の自己都合退職の場合は、3ヶ月の給付制限となります。
給付制限の期間
- 1回目・2回目の自己都合退職:1ヶ月
- 3回目以降の自己都合退職:3ヶ月
※5年間のうちに正当な理由のない自己都合退職が2回までの場合に限る
つまり、自己都合退職の場合、実際に最初の基本手当を受け取れるのは、ハローワークで手続きしてから約2ヶ月後が一般的です(待機7日+給付制限1ヶ月+認定日サイクル)。なお、初回の認定日(手続きから約4週間後)では、給付制限が残っていて支給が出ないことも多く、その場合は2回目の認定日で初めて振り込まれます。
会社都合退職の場合はすぐ支給される
会社都合退職(特定受給資格者)や、やむを得ない理由での退職(特定理由離職者)の場合、給付制限はありません。待機期間7日が終われば、すぐに基本手当の支給が始まります。
実際には、最初の認定日(受給資格決定から約4週間後)にまとめて振り込まれるため、手続きから約1ヶ月後に最初の入金があると考えてください。
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育児中・妊娠中の場合はどうなる?受給期間の延長制度
基本手当の受給条件には「いつでも働ける状態であること」が含まれています。そのため、妊娠、出産、育児などですぐに働けない場合は、基本手当を受給できません。
ただし、「受給期間の延長制度」を利用すれば、働けるようになってから基本手当を受け取ることができます。
受給期間の延長とは
通常、基本手当は「離職日の翌日から1年間」しか受給できませんが、以下の理由で働けない場合、最長3年間(本来の1年間+延長3年間=合計4年間)まで受給期間を延ばせます。
延長が認められる理由
- 妊娠、出産、育児(3歳未満の子の養育)
- 病気、けが
- 親族の介護(6親等以内の血族、3親等以内の姻族)
- 配偶者の海外転勤への同行
- 青年海外協力隊等への参加
たとえば、退職後すぐに妊娠・出産で働けない場合でも、延長手続きをしておけば、子どもが3歳になって働けるようになった時点で、失業給付を受け取ることができます。
延長手続きのタイミング
受給期間の延長申請は、働けなくなった日の翌日から30日を経過した日以降に行います。ただし、延長できる期間の最終日(離職日の翌日から4年後)までに申請する必要があります。詳しくは以下のページで解説しています。
認定日とは?4週間に一度の失業認定
基本手当を受け取るには、原則として4週間に1回、ハローワークで「失業認定」を受ける必要があります。
認定日には、失業認定申告書と雇用保険受給資格者証を持ってハローワークに行き、以下の2点を確認してもらいます。
- 失業状態が続いているか(働いていないか)
- 求職活動を行っているか
この2つが認められて初めて、その期間分の基本手当が支給されます。
認定日を忘れたり行けなかったりすると?
認定日にハローワークへ行かないと、その期間の基本手当は支給されません。認定日は原則として指定された日時に行く必要がありますが、やむを得ない理由(病気、冠婚葬祭、面接など)がある場合は、事前にハローワークへ相談することで別日の対応になることもあります。
認定日は受給資格決定時に決まり、雇用保険受給資格者証に記載されています。スケジュール帳に忘れずに記入しておきましょう。
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アルバイトをしても大丈夫?減額・不支給のルール
基本手当を受給中でも、アルバイトやパートで働くことは可能です。ただし、働いた日数・時間・収入によって、基本手当が減額されたり、その日の分が支給されなかったりします。
1日4時間以上働いた場合
1日4時間以上働いた日は「就職または就労した日」として扱われ、その日の基本手当は支給されません。ただし、支給されなかった分の日数は後ろに繰り越されるため、給付日数が減るわけではありません。
1日4時間未満働いた場合
1日4時間未満の労働の場合、「内職または手伝い」として扱われます。この場合、基本手当は支給されますが、収入額によっては減額されることがあります。
減額の計算式
(収入額-控除額1,391円)÷ 80% が基本手当日額を超える場合、超えた分だけ基本手当が減額されます。
ただし、減額によって支給額がゼロになっても、その日は受給したことになります(給付日数が消化されます)。これが「4時間未満だと損」と言われる理由です。なお、「繰り越される」のは1日4時間以上の就労日で、4時間未満は(たとえ支給0円でも)その日数を使った扱いになる点が大きな違いです。
働いたことは必ず申告する
アルバイトをした場合は、失業認定申告書に必ず記入してください。申告しないと不正受給となり、受給額の3倍返し+今後の受給停止という厳しいペナルティがあります。
まとめ
失業給付の基本手当は、雇用保険に加入していた方が離職後の生活を支えるための重要な給付です。受給するには、一定の加入期間があること、失業状態にあること、ハローワークで求職申込をしていることの3つの条件をすべて満たす必要があります。
給付額は離職前6ヶ月の平均賃金の5〜8割程度で、支給日数は離職理由や年齢、加入期間によって90日〜360日と幅があります。自己都合退職の場合は原則1ヶ月の給付制限がありますが、会社都合退職や特定理由離職者の場合は待機期間7日後からすぐに受給できます。
妊娠・出産・育児などですぐに働けない場合は、受給期間の延長制度を利用すれば最長4年間まで受給権を保持できます。また、受給中のアルバイトは可能ですが、1日4時間以上働いた日は支給されず後ろに繰り越され、4時間未満の場合は減額される可能性があります。
基本手当を確実に受給するには、離職票が届いたらすぐにハローワークで手続きを行い、4週間に1回の認定日を忘れずに出席することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 失業保険は退職したら自動的にもらえますか?
A. いいえ。ハローワークで「求職申込」と「受給資格決定の手続き」を行わないと受給できません。退職しただけでは手続きは始まりませんので、離職票が届いたらすぐにハローワークへ行きましょう。
Q2. 基本手当を受給中に就職が決まったらどうなりますか?
A. 就職が決まった時点で基本手当の受給は終了します。ただし、一定の条件を満たせば「再就職手当」という一時金を受け取れます。早く就職するほど支給率が高くなる仕組みです。
Q3. パート・アルバイトでも雇用保険に加入していれば基本手当はもらえますか?
A. はい。雇用形態に関係なく、雇用保険の加入期間や離職理由などの条件を満たせば受給できます。ただし、給付額は離職前の賃金によって決まります。
Q4. 失業手当と育児休業給付金は両方もらえますか?
A. いいえ。同時に受給することはできません。育児休業給付金は在職中の制度であり、退職した場合は失業手当の対象になります。ただし、退職後すぐに育児で働けない場合は、受給期間の延長制度を利用して、育児が落ち着いてから失業手当を受給することができます。
Q5. 受給期間の「1年間」を過ぎたらどうなりますか?
A. 給付日数が残っていても、受給期間(原則1年間)を過ぎると基本手当は受け取れなくなります。離職後は早めにハローワークで手続きをすることが大切です。ただし、病気・育児などの理由で働けない場合は、受給期間の延長制度を利用できます。
Q6. 自己都合退職でも給付制限なしで受給できるケースはありますか?
A. はい。やむを得ない理由(病気・介護・通勤困難・ハラスメントなど)で退職した場合は「特定理由離職者」として、給付制限なしで受給できることがあります。離職票の退職理由が重要になりますので、退職時に会社とよく確認しておきましょう。
Q7. 基本手当の受給中に扶養に入ることはできますか?
A. 健康保険の扶養については、基本手当日額が3,612円以上(年収換算で約130万円以上)の場合は扶養に入れません。税法上の扶養については、基本手当は非課税のため影響しません。