失業保険(雇用保険の基本手当)をもらえる金額や期間は、退職理由によって大きく変わります。同じ自己都合退職でも、正当な理由がある場合とない場合では、給付制限の有無や給付日数が異なります。
この記事では、失業保険で優遇される「特定受給資格者」「特定理由離職者」について、離職理由コードの見方から具体的な条件まで詳しく解説します。
■目次
失業保険の4つの対象者区分
失業保険を申請すると、退職理由に応じて以下の4つのいずれかに分類されます。この分類によって、給付制限の有無と給付日数が決まります。

- 特定受給資格者:会社都合退職(倒産・解雇・退職勧奨など)
- 特定理由離職者1:契約満了で更新されなかった場合(更新を希望していた)
- 特定理由離職者2:正当な理由のある自己都合退職(病気・介護・配偶者の転勤など)
- 一般受給資格者:正当な理由のない自己都合退職
区分による優遇措置の違い
| 対象者 | 給付制限 | 給付日数優遇 |
|---|---|---|
| 特定受給資格者 | なし | あり |
| 特定理由離職者1 | なし | あり |
| 特定理由離職者2 | なし | なし |
| 一般受給資格者 | あり(1か月間) | なし |
給付制限とは、ハローワークで受給資格決定を受けた後、7日間の待期期間が満了してから、さらに一定期間、失業保険を受け取れない期間のことです。一般受給資格者(正当な理由のない自己都合退職)の場合、2026年1月現在は原則1か月間の給付制限があります。
ただし、退職日からさかのぼって5年間のうちに「正当な理由のない自己都合退職」で受給資格決定を2回以上受けている場合、次の自己都合退職は給付制限が3か月間になります。
また、一定の教育訓練等を受ける場合は、給付制限が解除される制度もあります(対象や手続きはケースで異なるため、申請時にハローワークで確認してください)。
給付日数優遇とは、自己都合退職よりも失業保険を受け取れる期間が長くなることです。年齢や雇用保険の加入期間によって、最大で330日まで受給できます。
離職理由コードの見方【重要】
自分がどの対象者に分類されるかは、会社から送られてくる「離職票-2」の離職理由コードで確認できます。

離職票-2の右側に、退職理由の欄があります。ここに会社が記入した離職理由コードに○がついています。このコードによって、どの対象者に該当するかが決まります。
離職理由コードと対象者の対応表
| 対象者 | 離職コード | 給付制限 |
|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 1A, 1B, 2A, 2B, 3A, 3B | なし |
| 特定理由離職者1 | 2C | なし |
| 特定理由離職者2 | 3C, 3D | なし |
| 一般受給資格者 | 4D, 5E | あり(1か月間) |
※離職理由コードは他にも複数あります。ここではよく出る代表例を載せています。最終的な区分判断はハローワークが行います。
離職区分の詳細:離職理由コード(詳細を詳しく説明)
離職理由コードが間違っている場合
やむを得ない理由で退職したのに、離職票が「4D(正当な理由のない自己都合退職)」になっている場合は、ハローワークで相談してください。
たとえば、配偶者の転勤で退職したのに4Dになっているケースです。この場合、ハローワークが会社に確認し、証明書類(転勤辞令のコピーなど)を提出すれば、特定理由離職者として認められる可能性があります。
重要なのは、会社が記入した離職理由コードは確定ではないということです。最終的な判断はハローワークが行います。離職票を受け取ったら早めに確認し、気になる場合は申請時に必ず申し出ましょう。
特定受給資格者とは
特定受給資格者とは、自分の意思に反して、会社の都合で退職を余儀なくされた人です。給付制限がなく、給付日数も優遇されます。
倒産などによる離職
- 倒産(破産、民事再生、会社更生等の手続き、手形取引の停止など)による離職
- 事業所の被保険者の3分の1を超える者が離職した場合、または1か月に30人以上の離職が予定されている場合
- 事業所の廃止による離職
- 事業所の移転により、通勤が困難になったための離職
解雇等による離職
- 解雇による離職(重大な自己責任による解雇を除く)
- 労働契約の締結時に明示された労働条件が事実と著しく相違したための離職
- 給料の3分の1を超える額が支払日までに支払われなかった月が2か月以上続いたための離職
- 給料が従来に比べ85%未満に低下したための離職(低下が予想できなかった場合)
- 退職前6か月のうち、以下のいずれかに該当する時間外労働が行われたための離職
- 連続する3か月で月45時間を超える時間外労働
- いずれか1か月で月100時間を超える時間外労働
- 連続する2か月以上の期間で平均して月80時間を超える時間外労働
また、事業主が危険もしくは健康障害の恐れがあると行政機関から指摘されたにもかかわらず、措置を講じなかったための離職
- 妊娠・出産・育児・介護に関する法令違反や不利益な取扱いを受けたための離職
- 事業主が労働者の職種転換時に、継続して働けるような必要な配慮を行わなかったための離職
- 有期労働契約で3年以上雇用されていたのに契約が更新されなかったための離職
- 有期労働契約で「契約更新あり」とされていたのに更新されなかったための離職(上記8に該当する場合を除く)
- 上司や同僚から著しい冷遇・嫌がらせを受けたための離職、またはセクハラ・パワハラの事実があったにもかかわらず事業主が措置を講じなかったための離職
- 事業主から直接または間接的に退職するよう勧奨を受けたための離職(早期退職優遇制度による募集は該当しない)
- 事業主の法律違反などにより、事業所が3か月以上休業したための離職
- 事業主の業務が法律に違反しているための離職
特定理由離職者とは
特定理由離職者は、1と2の2種類に分かれます。両者の違いは、給付日数の優遇があるかどうかです。
特定理由離職者1(給付日数優遇あり)
労働契約期間が満了し、更新がなかったことによる離職です。ただし、契約更新を希望していたのに更新されなかった場合に限ります。
離職票の「契約更新の有無」欄と「更新の希望」欄の記載が重要です。離職票に「契約の更新をする場合がある」と記載されている場合が該当します。特定受給資格者の解雇等による離職の8または9に該当する場合(3年以上の雇用または更新ありの契約)を除きます。
離職理由コードは2Cです。
特定理由離職者2(給付日数優遇なし、給付制限なし)
以下の正当な理由のある自己都合退職が該当します。給付制限はありませんが、給付日数の優遇はありません。
- 体力の不足、心身の障害、疾病、けが、視力・聴力・触覚の減退等による離職
- 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険の受給期間延長措置を受けた人
- 父または母の死亡、疾病、けがのため介護が必要になったための離職(家庭の事情が急変した場合)
- 配偶者または扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難になったための離職
- 次の理由により通勤が困難になったための離職
- 結婚により住所が変わったため
- 育児に伴う保育所等の利用または親族への保育の依頼
- 事業所が通勤困難な場所へ移転したため
- 自分の意思に反して引越しが必要になったため
- 鉄道・バス等の交通機関の廃止または運行時間の変更
- 会社の指示による転勤・出向に伴う別居の回避
- 配偶者の転勤・出向・再就職に伴う転居
- 特定受給資格者の範囲に該当しない企業整備による人員整理等で、希望退職者の募集に応じたための離職
離職理由コードは3C、3Dです。
特定理由離職者になるための証明書類
特定理由離職者として認められるには、退職理由を証明する書類が必要になる場合があります。主な書類は以下のとおりです。
- 病気・けがの場合:医師の診断書
- 介護の場合:介護が必要であることがわかる医師の診断書、要介護認定の通知書など
- 配偶者の転勤の場合:配偶者の転勤辞令のコピー、転居先の住民票など
- 通勤困難の場合:住民票、結婚証明書など
ハローワークで申請する際に、どのような書類が必要かを確認してください。
給付日数の比較
対象者区分によって、失業保険を受け取れる日数が大きく異なります。
特定受給資格者と特定理由離職者1の給付日数
給付日数優遇ありの場合です。年齢と雇用保険の加入期間によって、90日〜330日の範囲で給付されます。
| 被保険者であった期間 | 6か月以上1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
特定理由離職者2と一般受給資格者の給付日数
給付日数優遇なしの場合です。年齢に関わらず、加入期間だけで決まります。
| 被保険者であった期間 | 6か月以上1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全年齢 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
注意点として、特定理由離職者2と一般受給資格者では、給付日数は同じですが、給付制限の有無が異なります。特定理由離職者2は給付制限なし、一般受給資格者は1か月間の給付制限があります。
就職困難者の給付日数
就職困難者とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、刑法等の規定により保護観察に付された方などです。
| 被保険者であった期間 | 6か月以上1年未満 | 1年以上 |
|---|---|---|
| 45歳未満 | 150日 | 300日 |
| 45歳以上65歳未満 | 360日 |
就職困難者は、特定受給資格者や特定理由離職者とは別の区分です。離職理由コードだけでは判断できないため、障害者手帳などの証明書類を用意してハローワークで確認してください。
よくあるケース別の判断
配偶者の転勤で退職した場合
配偶者の転勤に伴って退職した場合、特定理由離職者2に該当します。給付制限はありませんが、給付日数の優遇はありません。
必要な書類は、配偶者の転勤辞令のコピー、転居先の住民票などです。離職票が4D(正当な理由のない自己都合)になっていても、ハローワークで証明書類を提出すれば3C(特定理由離職者2)として認められます。
病気で退職した場合
病気やけがで働けなくなって退職した場合、特定理由離職者2に該当します。医師の診断書が必要です。
ただし、退職時点で働けない状態の場合は、すぐに失業保険を受け取ることはできません。受給期間の延長手続きをして、病気が治って働けるようになってから受給することになります。
介護のために退職した場合
家族の介護のために退職した場合、特定理由離職者2に該当します。介護が必要であることがわかる医師の診断書や、要介護認定の通知書などが必要です。
契約満了で更新されなかった場合
有期契約で働いていて、契約満了時に更新されなかった場合の判断は複雑です。
- 契約更新を希望していた場合:特定理由離職者1(給付日数優遇あり)
- 契約更新を希望していなかった場合:一般受給資格者(給付制限あり)
- 3年以上雇用されていた場合:特定受給資格者(給付日数優遇あり)
- 「契約更新あり」とされていたのに更新されなかった場合:特定受給資格者(給付日数優遇あり)
離職票の「契約更新の有無」欄と「更新の希望」欄の記載が重要になります。会社との認識が違うときは、申請時に必ず申し出ましょう。
特定理由離職者1と2の違い
特定理由離職者は1と2に分かれますが、その違いは以下のとおりです。
| 項目 | 特定理由離職者1 | 特定理由離職者2 |
|---|---|---|
| 対象 | 契約満了で更新されなかった(更新希望あり) | 正当な理由のある自己都合退職(病気・介護・転勤など) |
| 給付制限 | なし | なし |
| 給付日数優遇 | あり | なし |
| 離職理由コード | 2C | 3C、3D |
両者とも給付制限はありませんが、給付日数の優遇があるかどうかが大きな違いです。特定理由離職者1は特定受給資格者と同じ給付日数になりますが、特定理由離職者2は一般受給資格者と同じ給付日数になります。
特定受給資格者・特定理由離職者のその他のメリット
特定受給資格者や特定理由離職者に認定されると、失業保険の優遇以外にも以下のメリットがあります。
国民健康保険料の軽減
特定受給資格者または特定理由離職者の場合、国民健康保険料が軽減される制度があります。前年の給与所得を30/100として計算するため、保険料が大幅に安くなります。
離職票を持って市区町村の国民健康保険の窓口で手続きしてください。
詳しくは:失業中は国民健康保険が安くなる
国民年金保険料の免除・猶予
特定受給資格者または特定理由離職者の場合、国民年金保険料の免除・猶予制度を利用できます。前年の所得を含めずに審査されるため、免除が認められやすくなります。
詳しくは:国民年金を安くする国民年金免除制度
よくある質問
Q1. 離職理由コードはどこに書いてありますか?
A. 離職票-2の右側にある「離職理由」欄に記載されています。会社が該当する番号に○をつけて記入します。離職票は退職後10日前後で会社から郵送されてきます。
Q2. 特定理由離職者1と2の違いは何ですか?
A. 最大の違いは給付日数の優遇があるかどうかです。特定理由離職者1(契約満了で更新されなかった場合)は給付日数優遇あり、特定理由離職者2(病気・介護・転勤などの正当な理由がある自己都合)は給付日数優遇なしです。ただし、両方とも給付制限はありません。
Q3. 会社が離職理由コードを間違えて記入した場合、訂正できますか?
A. できます。ハローワークで申請する際に、実際の退職理由と離職票の記載が異なることを説明してください。証明書類(診断書、転勤辞令など)を提出すれば、ハローワークが正しい区分に訂正してくれます。会社が記入した離職理由コードは確定ではなく、最終判断はハローワークが行います。
Q4. 特定理由離職者として認められるには、どんな証明書類が必要ですか?
A. 退職理由によって異なります。病気・けがの場合は医師の診断書、介護の場合は要介護認定の通知書や診断書、配偶者の転勤の場合は転勤辞令のコピーや住民票などです。ハローワークで申請する際に、具体的に何が必要か確認してください。
Q5. 就職困難者と特定理由離職者の違いは何ですか?
A. 就職困難者は身体障害者、知的障害者、精神障害者などが該当し、特定理由離職者とは別の区分です。就職困難者は、退職理由に関わらず、障害者手帳などの証明があれば認定されます。給付日数は最大360日と、特定受給資格者よりもさらに長くなります。
Q6. 自己都合退職で4Dになっていますが、体力不足で辞めたので特定理由離職者にできますか?
A. 体力の不足も特定理由離職者2に該当する可能性があります。ただし、医師の診断書など、体力不足で働けなかったことを証明する書類が必要です。ハローワークで相談して、必要な書類を確認してください。
Q7. 給付制限期間は、5年間で3回目以降は3か月になると聞きましたが、どういうことですか?
A. 2025年4月の法改正で、正当な理由のない自己都合退職の給付制限期間が原則2か月から原則1か月に短縮されました。ただし、退職日からさかのぼって5年間のうちに「正当な理由のない自己都合退職」で受給資格決定を2回以上受けている場合、次の自己都合退職は給付制限期間が3か月になります。これは転職を繰り返すことを抑制するための措置です。
まとめ
失業保険で優遇されるかどうかは、離職理由コードによって決まります。会社から送られてくる離職票-2の右側に記載されている離職理由コードを必ず確認してください。
特定受給資格者(1A、1B、2A、2B、3A、3B)と特定理由離職者1(2C)は、給付制限なし・給付日数優遇ありです。特定理由離職者2(3C、3D)は、給付制限なし・給付日数優遇なしです。
離職理由コードが実際の退職理由と異なる場合は、ハローワークで相談しましょう。証明書類を提出すれば、正しい区分に訂正してもらえます。
また、特定受給資格者・特定理由離職者として認定されると、国民健康保険料の軽減や国民年金保険料の免除制度も利用できるため、忘れずに手続きしてください。