会社を辞めた後、届いた離職票を開いて「1A」「4D」といったコードを見ても、それが何を意味するのか、すぐにわかる人はほとんどいません。
でも、このコードひとつで失業保険の受給額が数十万円変わることがあります。
「自分は自己都合退職だから、もらえる額は少ないんだろう」と思い込んでいる方も多いのですが、実はそのコードが間違っているケースや、本来なら会社都合として扱われるべきケースも珍しくありません。知らないまま手続きを進めてしまうと、本来もらえるはずだったお金を受け取れないまま終わってしまいます。
この記事では、離職理由コードの確認方法から、あなたの退職がどの区分に当たるのか、何日分もらえるのか、そしてコードが間違っていた場合の対処法まで、すべてまとめています。
※令和7年4月から、自己都合退職の給付制限期間が原則2か月から原則1か月に短縮されました。さらに、教育訓練等の受講で給付制限そのものが解除される制度も始まっています。
この記事でわかること
- 離職理由コード(1A〜5E)の意味と一覧
- あなたの退職が「会社都合」「特定理由」「自己都合」のどれに当たるか
- 給付制限の有無と受給開始のタイミング
- 所定給付日数の早見表(年齢・勤続年数別)
- 離職理由コードが間違っていた場合の修正手順
- 国民健康保険・国民年金の軽減制度
■目次
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離職理由コードとは? あなたの受給額を左右する「たった2文字」
離職理由コードは、離職票や雇用保険受給資格者証に記載されるコードです。このコードによって、失業保険の受給条件が大きく変わります。
離職理由コードが決める4つのこと
- 給付制限の有無 … 待期7日後すぐもらえるか、さらに1〜3か月待つか
- 受給開始のタイミング … 実際にいつから振り込まれるか
- 所定給付日数 … 90日〜330日のどれになるか
- 国民健康保険の軽減対象か … 離職理由によって保険料が最大7割減になる
「自己都合だからしかたない」と思って確認しないまま手続きを進める方がいますが、それはとてももったいないことです。コードをひとつ確認するだけで、受け取れる金額や期間が大きく変わる可能性があります。
離職票-2での確認方法
会社を退職後、約1〜2週間で届く「離職票-2」に離職理由コードが記載されています。
○がついている箇所が、あなたの離職理由コードです。「1A」「2C」「4D」などのアルファベット+数字の組み合わせで表されています。
雇用保険受給資格者証での確認方法
ハローワークで手続き後、最初の認定日に渡される「雇用保険受給資格者証」でも確認できます。
※離職票のコード(例:1A、4Dなど)と、受給資格者証のコード(例:11、40など)は表記が異なります。この記事では、各表の「( )」内で対応関係を示しています(例:離職票の1A=受給資格者証の11、離職票の4D=受給資格者証の40)。
離職理由コード一覧と4つの区分
離職理由コードは、退職の理由と経緯によって大きく4つの区分に分類されます。この区分が、給付制限の有無と給付日数の優遇を決定します。
| 区分 | 給付制限 | 給付日数優遇 | 受給開始の目安 |
|---|---|---|---|
| 特定受給資格者 | なし | あり | 待期7日後から |
| 特定理由離職者1 | なし | あり | 待期7日後から |
| 特定理由離職者2 | なし | なし | 待期7日後から |
| 一般受給資格者 | 原則1か月 | なし | 待期7日+(原則1か月)後から |
※注意:一般受給資格者(自己都合)でも、退職日が令和7年3月31日以前か、令和7年4月1日以降かで「原則」の給付制限期間が変わります(本文の「給付制限期間の変更」を必ず確認してください)。また、条件により給付制限が3か月になる場合があります。
それぞれの区分に含まれるコードを、以下で詳しく見ていきます。
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特定受給資格者の離職理由コード(倒産・解雇等)
- 雇用保険の加入要件:6か月以上
- 給付制限:なし
- 給付日数優遇:あり
特定受給資格者は、自分の意思ではなく会社側の事情で退職に至った場合に該当します。倒産や解雇はもちろん、退職勧奨や事業所の移転なども含まれます。
| 離職コード | 退職理由 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1A (11) | 解雇(3年以上更新された非正規社員で雇止め通知なしを含む) | リストラ、倒産による解雇 |
| 1B (12) | 天災等の理由により事業の継続が不可能になったことによる解雇 | 災害で事業継続不可能 |
| 2A (21) | 特定雇止め(雇用期間3年以上・雇止め通知あり) | 長期勤務後の契約終了 |
| 2B (22) | 特定雇止め(雇用期間3年未満・更新の確約あり) | 「更新する」約束があったのに更新されなかった |
| 3A (31) | 事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職 | 退職勧奨、パワハラ |
| 3B (32) | 事業所移転等に伴う正当な理由のある自己都合退職 | 通勤困難な場所への移転 |
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「自己都合」だと思い込んでいませんか?会社都合に変更できるケース
離職票に「40(自己都合)」と記載されていても、以下に当てはまる場合はハローワークに申し出ることで「会社都合(特定受給資格者)」に変更できる可能性があります。
残業時間が多かった場合
- 離職直前6か月のうち、3か月連続で月45時間超の時間外労働があった
- 1か月で100時間超の時間外労働があった
- 2か月以上平均して月80時間超の時間外労働があった
給料の未払いや減額があった場合
- 給料の3分の1を超える額が支払期日までに未払いの月が2か月以上続いた
- 以前の給料と比べて85%未満に低下した
ハラスメントがあった場合
- パワハラ・セクハラを受け、事実が確認できる場合
- 会社に相談したが適切な対応がなされなかった場合
通勤が困難になった場合
- 事業所の移転や転居に伴い、往復の通勤時間が概ね4時間以上になった場合
主張する際は、タイムカードのコピー、給与明細、LINEの履歴、医師の診断書などの「証拠」を持参しましょう。証拠があるかないかで、ハローワークの判断が大きく変わります。
特定理由離職者の離職理由コード(正当な理由のある自己都合退職)
自己都合退職であっても、契約更新の不成立や病気・介護など、やむを得ない理由がある場合は「特定理由離職者」として扱われます。給付制限がなくなるため、自己都合退職との差は非常に大きいです。
特定理由離職者1(給付日数の優遇あり)
- 加入要件:6か月以上
- 給付制限:なし
- 給付日数優遇:あり
| 離職コード | 退職理由 |
|---|---|
| 2C (23) | 期間の定めのある労働契約の期間が終了し、かつ次の労働契約の更新がないことにより離職した者(本人が更新を希望したにもかかわらず更新されなかった場合) |
特定理由離職者2(給付日数の優遇なし)
- 加入要件:6か月以上
- 給付制限:なし
- 給付日数優遇:なし
| 離職コード | 退職理由 |
|---|---|
| 3C (33) | 正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間12か月以上)。病気、介護、配偶者の転勤などやむを得ない事情による退職 |
| 3D (34) | 正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間12か月未満) |
契約期間満了等(給付制限なし・給付日数優遇なし)
- 加入要件:12か月以上
- 給付制限:なし
- 給付日数優遇:なし
| 離職コード | 退職理由 |
|---|---|
| 2D (24) | 契約期間満了により退職(更新なしと明記があった場合等で、労使双方合意のもとに契約期間満了となり退職) |
| 2E (25) | 定年退職、移籍出向 |
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一般受給資格者の離職理由コード(自己都合退職・重責解雇)
「なんとなく辞めた」「転職のために辞めた」といった、正当な理由のない自己都合退職がここに該当します。また、懲戒解雇など本人に重大な責任がある場合も含まれます。
- 加入要件:12か月以上
- 給付制限:原則1か月(条件により3か月の場合あり)
- 給付日数優遇:なし
| 離職コード | 退職理由 |
|---|---|
| 4D (40) | 正当な理由のない自己都合退職 |
| (45) | 正当な理由のない自己都合退職(受給資格等決定前に被保険者期間が2か月以上) ※45は短期雇用特例被保険者(特例一時金)のコードです |
| 5E (50) | 被保険者の責めに帰すべき重大な理由による解雇(懲戒解雇等) |
| (55) | 被保険者の責めに帰すべき重大な理由による解雇(受給資格等決定前に被保険者期間が2か月以上) ※55は短期雇用特例被保険者(特例一時金)のコードです |
なお、5E(重責解雇)の場合は給付制限が3か月となり、令和7年4月改正後もこの点は変更されていません。
【重要】令和7年4月からの給付制限期間の変更
改正前(2020年10月〜2025年3月):
- 原則:2か月
- 退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合:3か月
改正後(令和7年4月〜):
- 原則:1か月
- 退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合:3か月
- 一定の教育訓練等の受講により、給付制限が解除される扱い
また、受給資格の決定後、待期が満了しないまま再就職し被保険者となり、1か月以上経過した後に新たな受給資格を取得せず再び退職した場合は、給付制限が1か月になる特例もあります。
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あなたは何日もらえる?所定給付日数の早見表
失業保険がもらえる日数は、「離職理由の区分」「年齢」「被保険者期間(雇用保険の加入期間)」によって決まります。同じ40歳でも、会社都合退職と自己都合退職では最大240日の差が出ます。
会社都合・特定理由離職者1の場合(コード:11, 12, 21, 22, 23, 31, 32)
年齢と被保険者期間に応じて、手厚い日数が設定されています。
| 被保険者期間 | 30歳未満 | 30〜35歳未満 | 35〜45歳未満 | 45〜60歳未満 | 60〜65歳未満 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年未満 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 |
| 1〜5年未満 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 | 150日 |
| 5〜10年未満 | 120日 | 180日 | 180日 | 240日 | 180日 |
| 10〜20年未満 | 180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
| 20年以上 | − | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
自己都合退職・契約期間満了・定年等の場合(コード:24, 25, 33, 34, 40, 50)
年齢に関係なく、被保険者期間のみで日数が決まります。
※コード45・55(短期雇用特例被保険者)は、この表の日数ではなく「特例一時金(通常30日分)」の支給となります。
| 被保険者期間 | 全年齢共通 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10〜20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
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離職理由コードが間違っていた場合の対処手順
離職票は会社が作成します。悪意がなくても、事務処理の都合で実態と異なるコードが記載されることがあります。「退職勧奨だったのに自己都合になっている」「パワハラが原因なのに一般退職になっている」といった場合、そのまま受け入れる必要はありません。
まずチェックするのは2か所
- 離職理由コード(1A〜5E) … 自分の退職の経緯に合っているか
- 離職理由の文章 … 事業主が記載した具体的な退職理由の内容が事実と合っているか
文章が事実と異なっていれば、コードも間違っている可能性が高いです。
修正の流れ
ステップ1:まず会社に訂正を依頼する
離職票の訂正は、会社からの申請で可能です。電話やメールで「離職理由が実態と異なる」と伝えましょう。多くの場合はこの段階で修正されます。
ステップ2:会社が応じない場合 → ハローワークで「異議あり」
離職票の本人判断欄に「異議有り」と記載し、正しいと思う離職理由を説明します。ハローワークが会社側にも事情を確認し、最終的な判断を行います。
用意すると有利な証拠:
- 就業規則
- 退職時のやりとり(メール・LINE)
- 医師の診断書
- タイムカードのコピー、給与明細
- メモや録音
ポイント:証拠がある場合とない場合では、ハローワークの判断が変わります。退職前から意識して残しておくことが重要です。
教育訓練等で給付制限が解除される制度
令和7年4月から、自己都合退職であっても一定の教育訓練等を受講している(または受講していた)場合、給付制限が解除される扱いになる制度が始まりました。つまり、自己都合退職でも待期7日後すぐに失業保険を受け取れる可能性があります。
対象となる教育訓練等(例)
- 教育訓練給付金の対象となる教育訓練(一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練など)
- 公共職業訓練等
- 短期訓練受講費の対象となる教育訓練
- 上記に準ずるもの(職業安定局長が定める訓練)
条件
- 離職日前1年以内または離職後に受講開始したもの
- 令和7年4月1日以降に受講開始したもの
※給付制限の解除には、受講開始日の証明など所定の手続きが必要です。詳しくはハローワークで確認してください。
給付制限解除の流れ(目安)
- 教育訓練等を選ぶ
対象となる講座・訓練の可否は、ハローワーク等で確認します。
- 受講を開始する
離職日前1年以内または離職後に受講開始(令和7年4月1日以降の受講開始が条件)
- ハローワークで手続き
失業保険の申請時に、教育訓練等の受講について申告し、必要書類を提出します。
- 待期期間後、受給開始
給付制限が解除される場合、原則として給付制限期間の適用がありません。
教育訓練給付金との併用も可能
給付制限の解除とは別に、教育訓練給付金(受講費用の一部補助)を受け取れる可能性もあります。対象や要件は講座・受講状況によって異なるため、ハローワークで確認してください。
→ 教育訓練給付の対象講座は厚生労働省の検索サイトで確認できます
国民健康保険と国民年金の軽減について
会社を退職すると、社会保険(健康保険・厚生年金)から外れるため、自ら国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
特に国民健康保険は前年度の所得をもとに計算されるため、退職直後に高額な保険料を請求されることがあります。しかし、離職理由によっては大幅な軽減を受けられます。
国民健康保険の軽減措置の対象となる離職理由コード
| 区分 | 対象コード |
|---|---|
| 特定受給資格者 | 1A (11), 1B (12), 2A (21), 2B (22), 3A (31), 3B (32) |
| 特定理由離職者 | 2C (23), 3C (33), 3D (34) |
対象者は、前年の給与所得を100分の30として保険料が再計算されるため、最大で約7割の軽減になります。お住まいの市区町村役場で手続きを行ってください。
国民年金の免除制度について
国民年金は、離職理由に関係なく、自己都合退職でも全額免除になる可能性があります。
2025年度の国民年金保険料:月額17,510円(2025年4月〜2026年3月)
2026年度の国民年金保険料:月額17,920円(2026年4月〜2027年3月)
収入がない時期に毎月約1万7,000円の負担は重いため、退職後すぐに免除申請をしておきましょう。
まとめ
離職理由コードは、たった2文字のアルファベットと数字の組み合わせですが、失業保険の受給額、受給開始日、給付日数のすべてを左右します。
令和7年4月からは自己都合退職の給付制限が原則1か月に短縮され、教育訓練の受講で給付制限が解除される制度も始まりました。制度を知っているかどうかで、受け取れる金額が数十万円変わることもあります。
離職票が届いたら、まずコードと離職理由の文章を確認してください。もし実態と違うと感じたら、会社への訂正依頼やハローワークでの異議申し立てをためらう必要はありません。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 離職理由コードはどこで確認できますか?
A. 会社から送られる「離職票-2」、またはハローワークで受け取る「雇用保険受給資格者証」で確認できます。離職票では○がついている箇所、受給資格者証では離職理由欄に2桁の数字で記載されています。
Q2. 令和7年4月から給付制限期間はどう変わりましたか?
A. 令和7年4月1日以降に離職した自己都合退職者は、給付制限期間が原則2か月から原則1か月に短縮されました。ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合は、給付制限が3か月となります。
Q3. 教育訓練等を受けると給付制限が解除されるのは本当ですか?
A. はい、令和7年4月からの制度です。教育訓練給付の対象講座や公共職業訓練等を離職日前1年以内または離職後に受講開始した場合、給付制限が解除される扱いになります。所定の手続き・証明が必要なため、詳細はハローワークで確認してください。
Q4. 特定受給資格者と一般受給資格者の違いは何ですか?
A. 特定受給資格者は倒産や解雇など会社都合の退職者で、給付制限なし・給付日数優遇ありです。一般受給資格者は正当な理由のない自己都合退職者で、原則1か月の給付制限があり、給付日数の優遇はありません。
Q5. 離職理由コードが間違っている場合はどうすればいいですか?
A. まず会社に訂正を依頼しましょう。会社が応じない場合は、ハローワークで失業保険の手続き時に「異議有り」と申し出ることで、ハローワークが調査・判断してくれます。タイムカードや退職時のメールなど、証拠があると有利です。
Q6. 自己都合退職でも国民健康保険料は軽減されますか?
A. 特定理由離職者(離職コード2C、3C、3D)に該当する正当な理由のある自己都合退職の場合は、国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性があります。お住まいの市区町村役場で確認してください。
Q7. 離職理由コードの40と45の違いは何ですか?
A. 40は「正当な理由のない自己都合退職」を指します。一方45(および55)は「短期雇用特例被保険者(季節労働者など)」に使われるコードです。受けられる給付は「基本手当(90日〜)」ではなく「特例一時金(通常30日分)」となり、給付内容が大きく異なる点に注意が必要です。

