会社を退職したとき、「失業保険」や「雇用保険」という言葉を聞いたことがあると思いますが、その違いや具体的な内容を正しく理解していますか?
実は、雇用保険の制度を知らないまま退職すると、数十万円から数百万円の給付を受け損なう可能性があります。しかも、これらの制度は「知らなかった」では済まされず、手続きをしなければ自動的にお金が振り込まれることはありません。
この記事では、雇用保険とは何か、失業保険との違い、受給できる給付の種類、そして知らないと損をするポイントについて、初心者にも分かりやすく解説します。
雇用保険の知識があるかないかで、退職後の生活が大きく変わります。ぜひ最後までお読みください。
■目次
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雇用保険とは?失業保険との違い
まず、「雇用保険」「失業保険」「失業給付」「基本手当」など、様々な言葉が出てきて混乱していませんか?
正式名称と通称の整理
実は、「失業保険」という制度名は正式には存在しません。一般に「失業保険」と呼ばれているのは、雇用保険の中の「基本手当」のことです。構造としては以下のようになります:
- 雇用保険:制度全体の名称
- └ 失業等給付:失業時などに支給される給付の総称
- └ 基本手当:いわゆる「失業保険」(1日ごとに支給されるお金)
昔は「失業保険法」という法律があり、その制度を「失業保険」と呼んでいました。しかし、1974年(昭和49年)に法律が全面改正され、「雇用保険法」として生まれ変わりました。
現在は正式には「雇用保険の失業等給付の基本手当」と言いますが、一般的には今でも「失業保険」という呼び方の方が通じやすいため、テレビやマスコミでも「失業保険」という言葉が使われています。
雇用保険には失業保険以外の給付もある
雇用保険は、失業時の基本手当だけではありません。以下のような様々な給付制度が含まれています:

- 失業等給付:基本手当、傷病手当、再就職手当など
- 教育訓練給付:資格取得費用の一部を支援
- 育児休業給付:育児休業中の生活を支援
- 介護休業給付:介護休業中の生活を支援
- 雇用保険二事業:企業への助成金など
このように、雇用保険は失業時だけでなく、育児、介護、スキルアップなど、働く人の様々な場面で活用できる幅広い制度です。
雇用保険に加入しているか確認する方法
失業保険を受給するには、退職前に雇用保険に加入している必要があります。
雇用保険の加入条件
以下の2つの条件を満たす労働者は、雇用保険に加入する義務があります:
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがあること
この条件を満たせば、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も雇用保険に加入できます(加入義務があります)。
加入しているか確認する方法
まずは給与明細を見て、「雇用保険料」が控除されていれば加入している可能性が高いです。あわせて、次の書類でも確認できます:
- 雇用保険被保険者証(入社時や離職時に渡されることが多い)
- 会社から交付される「雇用保険資格取得等確認通知書」など
給与明細で控除がなく、かつ条件を満たしているのに加入していない場合は、以下の可能性があります:
- 労働時間が週20時間未満
- 会社が違法に加入させていない(手続き漏れを含む)
もし条件を満たしているのに加入していない疑いがある場合は、ハローワークに相談してください。事実関係によっては、さかのぼって加入扱いにできる場合があります(ケース判断になります)。
雇用保険料はいくら?
雇用保険料は、給料に一定の料率をかけて計算されます。2025年度(2026年3月まで)の料率は以下の通りです:
| 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 0.55% | 0.90% | 1.45% |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 0.65% | 1.00% | 1.65% |
| 建設の事業 | 0.65% | 1.10% | 1.75% |
例えば、月給30万円の人(一般の事業)の場合、雇用保険料は月1,650円(30万円×0.55%)です。年金や健康保険に比べると、かなり安い保険料です。
※雇用保険料率は年度で改定されるため、最新の料率は厚生労働省資料でも確認できます(外部リンク):雇用保険料率(厚生労働省)
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失業保険(基本手当)はいくら、いつまでもらえるのか
退職後、雇用保険から受給できる「基本手当」(いわゆる失業保険)について説明します。
受給要件
基本手当を受給するには、以下の条件を満たす必要があります:
- 自己都合退職の場合:離職前2年間に、通算12ヶ月以上の雇用保険加入期間
- 会社都合退職の場合:離職前1年間に、通算6ヶ月以上の雇用保険加入期間
- 働く意思と能力があること(求職活動ができる状態)
給付額:前職の給料の50〜80%
基本手当の日額は、離職前6ヶ月間の平均賃金の約50〜80%です(賃金が低いほど給付率が高い)。ただし、上限額があり、年齢によって異なります。
詳しい計算方法は、雇用保険(失業給付)はいくらもらえるの?をご覧ください。
給付日数:90日〜330日
給付日数は、退職理由、年齢、雇用保険の加入期間によって90日〜330日の範囲で決まります。会社都合退職の方が、自己都合退職よりも給付日数が多くなります。
詳しくは、雇用保険(失業給付)はいつまでもらえるの?をご覧ください。
自動計算ツール
自分の基本手当日額と総受給額を計算したい場合は、失業保険の金額を計算(自動計算ツール)をご利用ください。
失業保険の受給手続き
失業保険は、退職したら自動的に振り込まれるわけではありません。ハローワークで手続きが必要です。
手続きの流れ
- 退職後、離職票が会社から郵送される(通常10日〜2週間。会社の手続き状況で前後します)
- 住所地を管轄するハローワークで求職申込と受給資格決定の手続き
- 待期期間7日間(失業状態であることを確認)
- 雇用保険受給説明会に参加
- 自己都合退職の場合、給付制限期間は原則1ヶ月(5年間に3回以上の場合は3ヶ月)
- 失業認定を受ける(約4週間ごと)
- 基本手当の受給開始
詳しい手続きの流れは、雇用保険(失業給付)の手続きはいつまでに行えばよいのかをご覧ください。
受給期限は1年間(重要)
失業保険の受給期限は、離職日の翌日から1年間です。基本はこの1年のあいだに手続きをして、給付日数を受け終える必要があります。

1年を過ぎると、残日数があっても受給権が消滅します(所定給付日数が330日・360日の場合は、それぞれ受給期間が1年+30日、1年+60日に延長されます)。
※妊娠・出産・病気・けがなどで「すぐ求職活動ができない」場合は、別途「受給期間の延長」制度が使えることがあります。離職後に放置せず、早めにハローワークで相談してください。
※2025年4月より、自己都合退職の給付制限期間は原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。
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早期就職で再就職手当がもらえる
失業保険を受給中に早期に再就職が決まった場合、再就職手当という一時金を受け取れます。
再就職手当の額は、残りの給付日数の最大70%です。例えば、給付日数90日のうち60日残して再就職した場合、60日分の70%に相当する42日分の基本手当を一括で受け取れます。
「失業保険を最後まで受け取らないともったいない」と思われがちですが、再就職手当があるため、早期に就職しても損にはなりません。
詳しくは、再就職手当とは【支給条件から支給額・手続きまで図で解説】をご覧ください。
職業訓練を無料で受けられる
失業中にスキルアップしたい、資格を取りたい場合、職業訓練を無料で受けられます。
職業訓練のメリット
- 受講料が無料(テキスト代は自己負担の場合あり)
- 訓練期間中、失業保険が延長して受給できる
- 交通費や受講手当(月額上限2万円)が支給される場合がある
職業訓練のコース例
パソコン、簿記、介護、医療事務、WEB、プログラミング、CAD、保育、フード、ネイリスト、インテリアデザインなど、様々なコースがあります。
訓練期間は3ヶ月〜6ヶ月が一般的ですが、2年間の長期コースもあります。
詳しいコース一覧は、職業訓練校のコース一覧をご覧ください。
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雇用保険のその他の給付制度
雇用保険には、失業保険以外にも様々な給付制度があります。
教育訓練給付金
資格取得やスキルアップのために教育訓練を受けた場合、受講費用の20〜80%を支援する制度です。在職中でも利用できます。
ユーキャンなどの通信教育や英会話スクール、専門学校など、指定された教育訓練講座が対象です。
専門実践教育訓練の場合、受講費用の最大80%が支給され、年間最大64万円(3年間で最大192万円)の支援を受けられます(2025年4月入学以降の適用)。さらに、45歳未満であれば失業保険の80%相当の給付を受けながら通学できます。
詳しくは、教育訓練給付制度(専門実践教育訓練)を利用してかしこく学ぼうおよび専門実践教育訓練についてをご覧ください。
育児休業給付
育児休業中の生活を支援する制度です。子が1歳(最長2歳)になるまで、休業開始前の賃金の67%(育休開始から6ヶ月間)が支給されます(7ヶ月目以降は50%)。
また、2025年4月より「出生後休業支援給付金」が新設されました。両親ともに14日以上の育休を取得する場合など一定の要件を満たすと、最大28日間、給付率が80%(手取り10割相当)に引き上げられます。
詳しくは、育休手当の振込は4ヶ月後?「いつ入るか」を知らないと生活費が詰む3つの給付金をご覧ください。
介護休業給付
2週間以上常時介護が必要な家族を介護するため休業した場合、最大93日分、休業開始前の賃金の67%が支給されます。
詳しくは、介護休業給付をご覧ください。
その他の給付については、雇用保険の各種給付についてをご覧ください。
社会保険給付金との違い
検索クエリに「社会保険給付金 失業保険 違い」がありましたので、この点を補足します。
「社会保険給付金」という言葉が使われることがありますが、正式な制度名ではありません。民間サイトや広告で、複数制度をまとめて説明するために使われることもあります。
一般的には、以下のような給付の総称として使われています:
- 健康保険の傷病手当金
- 雇用保険の失業保険(基本手当)
- 年金保険の障害年金
つまり、失業保険(雇用保険の基本手当)は、広い意味での「社会保険給付金」の一部と言えます。ただし、「社会保険給付金」という用語自体は法律用語ではないため、正式には各制度の正式名称(傷病手当金、基本手当など)を使うのが正確です。
まとめ:雇用保険の知識は必須
雇用保険制度について、重要なポイントをまとめます。
- 「失業保険」は通称で、正式には「雇用保険の失業等給付の基本手当」
- 雇用保険には、失業保険以外にも教育訓練給付、育児休業給付、介護休業給付などがある
- 週20時間以上、31日以上の雇用見込みがあれば、パート・アルバイトでも加入義務がある
- 基本手当は前職の給料の約50〜80%、給付日数は90〜330日
- 受給期限は離職日の翌日から1年間(給付日数によっては延長あり)
- 早期就職で再就職手当(残日数の最大70%)がもらえる
- 職業訓練を無料で受けられ、訓練期間中は失業保険が延長される
国の制度は、誰かが親切に教えてくれるものではありません。知っている人だけが得をするのが雇用保険の制度です。
退職前に雇用保険の知識があるかないかで、受け取れる金額が数十万円〜数百万円変わる可能性があります。この記事で基礎知識を身につけ、いざというときに損をしないようにしてください。
よくある質問
雇用保険と失業保険は違うのですか?
「失業保険」は通称で、正式には「雇用保険の失業等給付の基本手当」と言います。雇用保険は制度全体の名称で、その中に失業保険(基本手当)が含まれています。また、雇用保険には失業保険以外にも、教育訓練給付、育児休業給付、介護休業給付などの様々な給付制度があります。
パートやアルバイトでも失業保険はもらえますか?
はい、もらえます。週20時間以上働いており、31日以上の雇用見込みがあれば、雇用保険に加入できます。そして、自己都合退職の場合は離職前2年間に12ヶ月以上、会社都合退職の場合は離職前1年間に6ヶ月以上の加入期間があれば、失業保険を受給できます。
失業保険の手続きをしないとどうなりますか?
手続きをしないと、一切受給できません。失業保険は自動的に振り込まれるものではなく、ハローワークで手続きが必要です。また、受給期限は離職日の翌日から1年間なので、1年を過ぎると受給権が消滅します。必ず期限内に手続きをしてください。
失業保険を受給中に再就職したら損ですか?
いいえ、損ではありません。早期に再就職が決まった場合、「再就職手当」として残りの給付日数の最大70%を一括で受け取れます。例えば、60日分残して再就職した場合、42日分(60日×70%)の基本手当を一括でもらえます。
職業訓練は本当に無料ですか?
はい、ハローワークが案内する多くの職業訓練は受講料が無料です。ただし、テキスト代などは自己負担の場合があります(受講手当として月額最大2万円が支給される場合もあります)。また、訓練期間中は失業保険が延長して受給でき、交通費も支給される場合があります。
育児休業給付は雇用保険からもらえるのですか?
はい、育児休業給付は雇用保険の給付制度の一つです。失業保険と同じく、雇用保険に加入していた期間が一定以上あれば受給できます。休業開始前の賃金の67%(6ヶ月間)、その後は50%が支給されます。また、2025年4月からは一定の条件で給付率が80%になる新制度も始まっています。
社会保険給付金と失業保険は同じですか?
「社会保険給付金」は正式な制度名ではなく、健康保険の傷病手当金、雇用保険の失業保険、年金保険の障害年金などの総称として使われることがあります。失業保険(雇用保険の基本手当)は、広い意味での社会保険給付金の一部と言えますが、正式には「雇用保険の基本手当」という名称を使うのが正確です。